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仕事は好き。これからも続けたい。だけど今日は、へとへとだ。働くことに疲れた心を休めたいあなたへ『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』

 ゴールデンウイークがあっという間に過ぎ、遊んだ人も、仕事だった人も、「五月病」の文字が心をよぎる頃ではないでしょうか。
 仕事にやる気が出ない、職場に行くのが辛い、でも、それをSNSや友達に愚痴るのもイヤだし……
 そんなふうに悩んでいるあなたにオススメの、韓国発のエッセイです。

『仕事帰りの心 私が私らしく働き続けるために』

 筆者のイ・ダヘ氏は、作家・記者・ラジオパーソナリティなどでパラレルキャリアを積む女性です。
 韓国では「この人が読んでいない本、観ていない映画はない」といわれるほどの、リアル〝働きマン〟。でも、「他人に対して一番羨ましく思うのは社交性かもしれない」と語る内向型タイプでもあります。

 そんな著者が綴ったこの本の一番のポイントは、押しつけがましくないところ
「仕事」とタイトルに入っていると、こういうときはこうしろ、ああいうときはああしろ、と耳に痛いアドバイスが満載なのではないかと身構えますよね。
 ところがこのエッセイは、そんな言葉がひとつもありません。
 多忙の筆者が働く中で、考えたこと、感じたことが淡々とつづられ、一応の結論はあるものの、それを読者もやるべきという雰囲気が全くないのです。

 それはまるで、仕事帰りに待ち合わせた友人が、「この間こんなことがあってね、こういうふうに思ったんだ」と語っているような穏やかさ。
 それに「そうなんだ」と共感するか、それとも「私はこう思うよ」と自分の意見を言うかは、読者の私たちに任されています

 つまりこのエッセイには、筆者の哲学が散りばめられた文章から、私たちがそれぞれ、拾いたい言葉を拾う自由があるんです。

 具体的にどんな感じなのか、文章に滲み出るイ・ダヘ氏の哲学について、3つにまとめてご紹介します。

 ひとつは、社会人として生きること
 働くことをキラキラと楽しむよりも、誠実にひとつひとつ仕事をこなしていくのが筆者の姿勢です。

「どうやったら疲れずに働き続けられますか?」
「ただやるんです。あまり考えすぎないように気を付けています」

(16ページ)

 ふたつめに、しっかり休むこと
 燃え尽き症候群という言葉が、本書の中には何度も出てきます。体を壊して入院をも経験した筆者が、フィジカル・メンタルの両方に気を遣っていることが文章からうかがわれます。

 ほかの人の目にさらされない自分だけの時間を持つ方法を見つけるようにしましょう。その活動あるいは関係は、他人から認めてもらったり評価されたりする必要がなければないほどいいでしょう。

(195ページ)

 みっつめは、成長を続けること
 20年以上のキャリアを持つ筆者ですが、周囲から学ぶマインドを持ち続けています。

 他人をありのまま認め、自分をありのまま受け入れ、嫉妬は傷つかない程度にし、自分自身も成長できる。嫉妬する心は(意識的であれ、無意識であれ)人と比べるときに起こるもので、比べなければ今日の自分は昨日の自分よりも成長できません。

(139ページ)

 このどれかが心の琴線に触れたら、ぜひ本書を手に取ってみてください。
 きっと、イ・ダヘ氏の言葉で引き出された自分自身との、穏やかな対話ができるはずです。

(文=安岐はづき)


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