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【本のあるところajiro】『エドワード・サイード ある批評家の残響』刊行記念 中井亜佐子×柿木伸之「声を聴く批評の残響に耳を澄ます──今、サイードの批評が問いかけるもの──」(5/30)
『エドワード・サイード ある批評家の残響』刊行記念対談 中井亜佐子×柿木伸之「声を聴く批評の残響に耳を澄ます──今、サイードの批評が問いかけるもの──」 ★お申し込みはこちら ①会場参加チケット ※学割対象はこちらから ②配信視聴チケット 中井亜佐子さんの『エドワード・サイード ある批評家の残響』(書肆侃侃房)は、今年1月、イスラエルによるパレスチナのガザ地区への軍事攻撃が続くさなかに世に送られました。サイードが読解の対象としたジョセフ・コンラッドの作品などを研究してきた
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韻踏み夫×大谷能生『20世紀ジャズ名盤100』出版記念『日本語ラップ名盤100』vs『20世紀ジャズ名盤100』(5/13)
韻踏み夫×大谷能生 『20世紀ジャズ名盤100』出版記念 『日本語ラップ名盤100』vs『20世紀ジャズ名盤100』 ★お申し込みはこちら ①会場参加チケット ②配信視聴チケット 大谷能生さんの『20世紀ジャズ名盤100』(イーストプレス)の出版を記念して、著者の大谷能生さんと、同じく「100」シリーズから『日本語ラップ名盤100』を刊行した韻踏み夫さんをお招きしてトークイベントを行います。 大谷能生さんより イーストプレス社発行の好評「100」シリーズ、その『日本語ラ
【試し読み】『韓国映画から見る、激動の韓国近現代史』崔盛旭より(「『キングメーカー 大統領を作った男』選挙の負のレガシーを作った男たち 「カルラチギ」の起源をたどる)
『キングメーカー 大統領を作った男』 選挙の負のレガシーを作った男たち 「カルラチギ」の起源をたどる ◎物語 世の中を変えたい一心で選挙に挑み続けるも、落選続きでなかなか前に進めない政治家キム・ウンボム(ソル・ギョング)のもとに、彼と志を共にしようとする男、ソ・チャンデ(イ・ソンギュン)が現れる。選挙参謀になったチャンデは、正当な戦法を求めるキム・ウンボムの意に反して狡猾な戦略を編み出し、劣勢の状況にもかかわらず次々と当選させていく。 ついに、キム・ウンボムは党を代表し
【試し読み】ローラ・カプラン『ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織』(塚原久美訳)より(「プロローグ」)
プロローグ 一九七三年にアメリカの連邦最高裁判所は、ロー対ウェイド訴訟の判決によってアメリカ国内での中絶を合法化した。それまでの四年間に、一万人を超える女たちが〈ジェーン〉に電話をかけた。〈ジェーン〉とは、正式には「女性解放の中絶カウンセリング・サービス」として知られるシカゴ[イリノイ州]のグループが、連絡用に使ったコードネームである。毎週、毎週、あらゆる階級、あらゆる人種、あらゆる民族の女たちが、切羽詰まって〈ジェーン〉に電話をかけてきた。夫や恋人に避妊を禁じられていた
【お砂糖とスパイスと爆発的な何か】「ガウェインの結婚」を歴史の授業で使わないで!~中世の英文学と女性がもっとも望むこと(北村紗衣)
2年ほど前に「世界史講義録」というウェブサイトの「最初の授業」という記事がバズったことがありました。これは高校世界史の授業初回で、アーサー王伝説の「ガウェインの結婚」をとりあげ、歴史は面白い……というような話の枕にするというものです。 詳しくはリンク先の元記事を読んでいただきたいのですが、非常にざっくり説明すると、アーサー王が敵の騎士から「すべての女性がもっとも望むことは何か」という問いを出され、それの答えが「自分の意志を持つこと」だったという話をネタに、「700年か
【お砂糖とスパイスと爆発的な何か】外の世界とつながる外国語学習~内部告発者への尋問テープをもとにした映画『リアリティ』(北村紗衣)
ローリング・ストーンズの新アルバム『ハックニー・ダイアモンズ』の先行シングル「アングリー」のビデオを見た方はおられるでしょうか。ロサンゼルスの道路を走る赤い車にやたらゴージャスな髪の長い女性が乗っていて、ストーンズのロゴみたいに舌を出したり、エアギターを披露したりする内容です。道の脇には大きな看板が何枚もあり、車が通るといろいろな時代のストーンズが看板から飛び出すよう動き出して演奏をしてくれます。 今回の記事で紹介するのは、この女性を演じたシドニー・スウィーニー主演の新
【お砂糖とスパイスと爆発的な何か】歌って踊って窮地を脱するへんてこなヒロインのロードムービー~『ジャム DJAM』(北村紗衣)
トニー・ガトリフ監督の映画『ジャム DJAM』は、エーゲ海を舞台に若い女性2人が右往左往するロードムービーです。タイトルロールであるジャムを『ベネデッタ』ではバルトロメア役だったダフネ・パタキアが演じています。2017年に作られましたが、このたび9月29日に日本公開されることになりました。アルジェリア出身のロマ系の監督であるガトリフは音楽をふんだんに取り入れた映画作りで知られていますが、この作品ではギリシャの音楽であるレベティコがたくさん使われています。 ◆ミュージカルの
【お砂糖とスパイスと爆発的な何か】知られざるプレコード映画の世界(10):嘘っぽい芸術と真摯な芸術~『奇蹟の処女』(The Miracle Woman)(北村紗衣)
フランク・キャプラといえば、最後のプレコード映画のうちの1本であり、スクリューボールコメディが流行るきっかけとなった『或る夜の出来事』(It Happened One Night、1934)を撮った監督として有名です。今回の連載では、キャプラの非常にプレコード的な作品を紹介しようと思います。アメリカにおけるラジオ伝道とメガチャーチを批判したバーバラ・スタンウィック主演の『奇蹟の処女』(The Miracle Woman、1931)です。 ◆プレコード宗教映画 ヒロイン
【お砂糖とスパイスと爆発的な何か】知られざるプレコード映画の世界(9):メイ・ウェストが男たちを魅了する『わたしは別よ』(She Done HimWrong)(北村紗衣)
プレコード映画の時代の大スターとして忘れてはならないのがメイ・ウェストです。ウェストはもともとバーレスク業界出身の舞台のスターで、パフォーマーとして活動する一方、セクシュアリティを扱った戯曲を書く劇作家として物議を醸していました。ウェストの戯曲は1920年代末の基準では過激すぎたため、猥褻だとして逮捕もされています。 こんなスキャンダラスな才人だったメイ・ウェストがハリウッドで初めて主演したのが1933年の『わたしは別よ』(She Done Him Wrong)です。
【お砂糖とスパイスと爆発的な何か】知られざるプレコード映画の世界(8)番外編:航空アクション映画の祖『つばさ』(Wings)(北村紗衣)
今回の記事で紹介するウィリアム・A・ウェルマン監督『つばさ』(Wings、1927)は、厳密に言うとプレコード映画ではありません。プレコード映画というのはトーキーが始まってからヘイズ・コードが厳密に施行されるまでの映画を指す言葉です。サイレント映画である『つばさ』はこれに該当しません。 それなのにこの連載で『つばさ』をとりあげるのには、ふたつ理由があります。ひとつめとして、『つばさ』はプレコード映画に見られるような描写は既にサイレント映画にもあったのだ、ということを説