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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ⑲

(19)「峠のドネーション」

 9/2(金)第15日、晴れ、15℃
 朝、6:25に宿の扉を開錠して外に出たが、暗い田舎道は足元が見えず、さすがに様子がわからない道を歩くのは危険ですらあった。灯りは星明かりとヘッドランプのみで、他はずっと遠くの方に住宅の灯りがちらちらと見えるだけ。とうもろこし畑に落ちないように、道の真ん中をゆっくり注意して歩いた。

        「暗闇に 星が瞬き 糞を踏む」

 まだ眠りの中にある小さな村を通過した。その村を出て左折してナビの通りに国道沿いをしばらく歩いたが、見慣れた道標がない。そこで、引き返して戻り、道を直進した。少し行くと巡礼路らしき道に合流し、やがて帆立貝の標識が現れた。恐らく、この部分は新しく作られた道で、ナビは古い道を辿っていたと思われる。だから、こちらでも問題はなかったのかも?
 緩やかな丘を登り、そして下ると、次の村に入ったが、この村もまだ眠りの中にあった。右側の地平線から真っ赤な太陽が姿を見せ、自分の影が長く伸びる。こんな景色は日本では北海道だけで見られるのではないだろうか?

 そこからは人家がない畑の横を歩く緩やかなアップダウンが続いた。この日は、途中にレストランがなかったので、夜明けの寒さに加えて、空腹が辛かった。すると峠の上に、「峠の茶屋」のような格好の、タープを張った露店が見えて、数人の巡礼が立ち止まっている姿が見えた。「ああ、やっとここで食べ物にありつける」と、ホッとした。絶妙のタイミングであった。

店の風景
並べられた食べ物

 縁台の上には、パンやケーキ、ハムにチーズ、飲み物、フルーツなどが所狭しと並べられていた。ここは一人の男性が運営するドネーションの店であった。
 誰彼となく親しく声をかけ、私が日本人だとわかると、「ありがとう」、「心の道」などと覚えている限りの日本語で話しかけて来た。私はパン、コーヒー、ゆで卵、バナナを食べて、財布の中の小銭を全部出した。気温も上がってきて、腹ごしらえができて、やっと人心地がして落ち着いた。店の名前は、「神々の家 La Casa de los Dioses」であった。

この丘の下にアストルガの町

 アストルガAstorgaには10時頃に到着した。急坂の上に町が築かれ、ここも聖堂を中心に発展した大きな町である。途中に、巡礼の像があった。台座には「QUO VADIS、どこへ行かれるのですか?、歩く人 SEND2011」とあった。(訳は須藤伊知郎先生による)

巡礼像
銅板

広場にはたくさんの店があり、パンプローナで下ろした現金が減ってきたので、ATMで300€を下ろした。自分でも機械を操作したが、できなかったので、銀行の職員に手伝ってもらった。ここで昼食をとった。

ガリシアに
こういう風景にも慣れた

 SJPのオフィスでもらった行程表では、ここに宿泊するようになっているが、時間もまだ早かったので、もう一つ先の村まで行こうと思って行くと、前に会った二人組の韓国人学生(P・I君)がいた。彼らは、さらに進むというので、彼らの勢いに乗せられて、私も次の村まで行くことにした。

これがスペインの色

 途中の坂道は炎天下の暑さでこたえた。先に着いた私がレストランの椅子に座っていたら、彼らも追いついてきた。彼らはさらに先まで行ったが、もう3時だったので、私はここサンタ・カタリナ・デ・ソモサSanta Catalina de Somozaで泊まることにした。

「巡礼路 汗がザックに 染みる午後」

 ただし、ここの宿は私が利用した宿の中では最低の宿であった。料金は10€、狭いひと部屋の2段ベッドに大勢が詰め込まれた。そして、家族経営のようだが、皆むっつりしていて愛想が悪かった。村にアルベルゲは2軒しかないので、競争意識が働かないのであろう。
 晩ご飯は11€でスパゲティ・ナポリタン、ポーク、プリンで、味はよかった。昨日のことがあるので、3€の朝食を予約した。

 いよいよ緑豊かなガリシアGalicia州に入り、巡礼の旅も残すところ、あと10日余りになった。(26.5km、46,103歩)

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