見出し画像

ほどほどに真面目な人にだけ効く、創造性を高める裏技

何かを先延ばしする代わりにほかの多くのことを成し遂げているなら、その先延ばしには意義がある。それに気づくと、自分に自信が持てるようになり、実際に物事をやり遂げる力も向上する。

スタンフォード教授の心が軽くなる先延ばし思考』ジョン・ペリー著(東洋経済新報社)

タイトルがわたしにぴったりと思って読んだ。2013年の本。Amazonでは新品価格が高騰しているが、定価は1200円。薄い本だ。スタンフォード教授って書いてあるけど、別に研究成果とかではなく、スタンフォードの教授でも締切守れず先延ばしするんだ~という意味では心が軽くなる本ではあった。

前からうすうす気が付いていた。最も億劫なやりたくないことがあると、2番目、3番目、4番目の優先順位の億劫なことがどんどん片付いていく。ブックライティングの原稿は軌道に乗るまでが大仕事なので気が重く、そのおかげで確定申告の準備がもう締切1か月前から片付いてしまっていた。

暇なときは何もしないが、締切に追われていると、noteをせっせと更新したり、HPやYouTubeを更新したりしていた。突然何か新しいことを始めたりするのも、たいてい億劫な大仕事に追われている時だ。

ただ問題は、この方法だといつまで経っても「一番億劫なこと」は終わらない。なので、あまり使える方法ではないし、こんなふうに逃避をしている自分を良くないなあって思っていた。だけど、この本を読み終えて悟ったのです。「一番億劫なこと」を終わらせるためには、「一番億劫だと思っていたことよりももっと億劫なこと」をやることリストに入れたらいい。ほかになければ数を集めて束になってかかってもいい。

わたしの場合は最大級に一番大変で億劫で、それでも人生の優先順位で一番上に君臨することは「小説を書く」ことだ。小説書くのが最も億劫って、小説家としてどうよって感じだけど、どんな仕事よりも難しいのだからしょうがない。「そんなに仕事したくないなら、構想している小説の一文目を書きだしたら?」と自分に言ってみると、それくらいなら仕事しようかなあといそいそとやる気が出てきたりする。そんなに嫌なんかーい!

うっかり、「目の前の仕事よりは小説書く方がいいや」って思ってしまったら、小説執筆が進むわけで、本当にやりたいことに取り組めるわけで、それはそれでよい。とてもよい。

ペリー教授の書いているとおり、先延ばししている自分はダメだ…と思うのじゃなくて、「ぐんぐん他のことが片付いていく!わたし、創造的!」と考えるようになると、ちょっと毎日が楽しくなった。ただし、この方法は、ほどほどに真面目な人にしか通用しない。

世の中には締切なんて破るためにある、とか、真の締切は違うからまだ大丈夫、とか、締切が来てからが本番、とか、そもそも締切なんて知らんとか。そんな猛者がいらっしゃる。この先延ばし術の創造パワーのエネルギー源は、「締切が近づいてきてプレッシャーを感じている気持ち」にあるので、プレッシャーを感じない人には使えないと思う。

そして、これは締切を破るための方法ではない。締切までまだ余裕があるけど今から取り組んだ方がのちのち楽になるのに、まだ余裕があるのでやる気が出ない、というときに有効なわけで、真に締切が迫って切羽詰まっていたら、こんなことをしなくても必死で取り組むのでこんな術は必要ない。

2つのエサ桶を動物から等距離の別の場所に置いたら、どちらを食べるか迷って食べられず飢えてしまう、みたいなたとえ話が合ったような気がする。これだ。ビュリタンのロバというらしい。

まだ余裕があるけれど、今から取り掛からねば間に合わない、という締切が複数あるとき、まさにわたしはビュリタンのロバになる。2週間後の同じ日に4つ締切があるのなら、2週間を3日ずつ割って、順番にやるべきだけど、単独で見るとまだ締切は先なのでやる気が出ない。

だけどリストアップすれば、億劫パワーで進めることができる。硬直状態になったら、他のことをリストに入れる。ジムに行くとか。筋トレするとか。英語の勉強するとか。重めの小説を読むとか。部屋を片付けるとか。やらなきゃいけないけれど、億劫で取り掛かれなかったことは山ほどある。それが仕事の億劫さよりはマシだと思えたら、長年、やらねばやらねばと思い続けてきたことがするっと終わったりすることがある。

えらい!すごい!(肯定する)

という感じで、今、逃避パワーで、note書いています。いや、がんばってるよ。確実に前に進んでいるよ。

ところでこの本の著者が、自分は複数の仕事を同時並行で進める人間なので、オフィスに直径5メートルほどの回転盆が載る円卓があればいいと書いてあったのにとても共感した。たくさんの仕事を出しっぱなしにして、回転盆を回して、いろいろ少しずつ進めるのである。

わたしもできれば、部屋のあちこちに複数のデスクとチェアのセットを置いて、それぞれに違う仕事を出しっぱなしにして進めたい。まあ、そんな広い部屋をオフィスにするような生活はかなわないので、ToDoリストがその代わりかな。複数の異なる仕事の作業を分解して1枚に書き出している。

最近は逃避パワーで仕事部屋の模様替えができ、部屋の片づけが進み、小説を読むことができ、冬服を片付け、ジムに行くことができた。いや、仕事も進んでるよ(何度も言う)。

今日はこれから大学の初年次教育の授業です。前期だけ、非常勤講師。こんなふうにnoteで書いている文章は、わたしのことを知って読んでくれたり、書くことに興味がある人がほとんどだから、ある程度想像をサボっても伝わるけれど、普段接することのない20歳前後の人たちがどんなふうに言葉を受け取ってどんなことを考えるのか、必死で想像しないとわからない。でも対面授業だから、ある程度フィードバックがある。ああ、上手く伝わらなかったなと思うたびに、自分が甘えたりサボったりしていることに気づいて、もっと精進せねばなあと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?