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「学問のすすめ」のすすめ

第1 誰にこの文を読んでいただきたいか

 どうも先行きが明るく見えない会社に勤めるビジネスマンとか、一寸先は闇と見えるベンチャーの経営者とか、どことなく暗そうな今を打開したい人にこの文を読んでいただきたいと思います。

 それから、例えば不登校が長引いているものの、昼夜逆転が治まり外出がある程度できるようになった高校生にも読んでいただけたらと思います。

 「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」で有名な「学問のすすめ」は要するに学びの必要性を訴える文章です。令和日本では「学問のすすめ」の様々な主張が改めて必要ではないかと感じます。

 私が以下に綴る文は、「学問のすすめ」に立ち返った学びが個々の人の指針になるのではないかという話です。

第2 そもそも「学問のすすめ」には何が書いてあったのか

 すべての人が平等なはずなのに現実の世の中はそうではない、それは何故なのか、このような疑問から「学問のすすめ」は始まります。「学問のすすめ」におけるその疑問への答えは「就く仕事が異なるから」というものです。

 まず、「医者、学者、政府の役人、または大なる商売をする町人、あまたの奉公人を召し使う大百姓など」は自ずと富むと説かれています。次いで、そのような立場は学問の力によって実現されていると説きます。

 様々なご意見はお有りかと思いますが、「学問のすすめ」には「ただむずかしき字を知り、解げし難き古文を読み、和歌を楽しみ、詩を作るなど、世上に実のなき文学を言うにあらず。」が学問なのではないとあります。つまり、実のない学びはここで言う学問ではありません。ここで言う学問とは、実用的なものを言うのです。例えばレターの書き方、簿記会計、表計算ソフトや実務で用いる器具の取り扱い(原文では「手紙の文言、帳合いの仕方、算盤そろばんの稽古、天秤てんびんの取扱い等」)が学問です。

第3 専攻と収入

 「学問のすすめ」には学問の例として地理学と究理学(物理学のこと)と歴史と修身学(道徳のこと)とが挙げられています。地理学や物理学を大学で専攻された方も多いと思います。ところで、それらの学問はお仕事あるいは収入に役立っていますか?

 医学部のような例外を除けば、大学の専攻と職業との間にはあまり関係がないのが令和日本の実情ではないかと思います。法学部を出て営業職に就かれる方は珍しくありません。経済学部を出られた方が特にお金持ちという印象もありません。その是非はさておいて、こういう状況での大学の専攻を「学問のすすめ」に言う学問と呼んで良いものか甚だ疑問です。

 実際、「学問のすすめ」ではこういう認識に基づく学びが害悪たり得る旨述べられています。「学問のすすめ」には「これらの文学もおのずから人の心を悦よろこばしめずいぶん調法なるものなれども、古来、世間の儒者・和学者などの申すよう、さまであがめ貴とうとむべきものにあらず。古来、漢学者に世帯持ちの上手なる者も少なく、和歌をよくして商売に巧者なる町人もまれなり。これがため心ある町人・百姓は、その子の学問に出精するを見て、やがて身代を持ち崩すならんとて親心に心配する者あり。無理ならぬことなり。畢竟その学問の実に遠くして日用の間に合わぬ証拠なり。」とあるのです。

第4 令和日本の学問

 じゃあどうすれば「学問のすすめ」に言う学問になるのか?となると思います。その答えは「リスキリング」だろうと私は思っています。

 経済産業省はリスキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義しているそうです。

 リスキリングを「学問のすすめ」に即して実践するには、スキルの獲得に関する目的意識が大切と考えます。例えば、まず個々の人が「自分は個人企業の経営者」と認識するところから始めます。その個人企業は別の企業にサラリーマンとして労働力を売ることもあるし、株式会社と同じような活動をフリーランスとして実践することもあります。そんな個人企業が自社の発展のためにどのような事業を構築するのか熟慮して(その際、会社への貢献と会社からの見返りとを前提にするのではなく会社の実際の動きや社風を前提にすることをお勧めします)、その事業に必要なスキルを自分自身に一から身につけさせるのです。

 例えば、かの有名なウォーレン・バフェット氏よろしく自社(=自分)は投資活動を行うのだと決めたとします。その場合には、チャートの読み方を学び経済学を学んで値動きの原因結果を理論づけられるようにする、そうすることが令和日本における「学問のすすめ」のあり方ではないかと思います。

 「会社で役に立つと思うから」といったレベルではなく、もっと理屈の通った思考を前提にすることで、単なる自己研鑽を超えた成果が得られると思わずにはいられません。この一文がどなたかのお役に立てば幸いです。

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