見出し画像

あなたの価値とわたしの価値 -1-

高3の冬、知人から借りた本の内容がいまだに忘れられない。

タイトルは忘れてしまったが、「自己肯定感の高め方」に関する本で、英語の原典を日本語に翻訳したものを読んだ。実際にどうすれば自己肯定感を高められるのか。本に書かれたワークに取り組むことで、実践的に自己肯定感を高められる設計になっていた。

実践に重きを置いた書籍ということもあり、教科書サイズの分厚い本の大半をワークが占めていた。僕の印象に残っているのはそのワークではなく、本の最初の方にあった「人の価値に関する話」である。そこには、

人の価値は、みな同じである。

という趣旨のことが書いてあった。AさんもBさんもCさんも同じ量の「価値」を持っていて、しかも、生まれてから死ぬまでその量は変わらないという。みな、同じ量の「価値」を保持し続けたまま人生を終えるというわけだ。

当時、この本を読んだ僕はかなり衝撃を受けた。というのも、なんとなく「人の価値は人によって違う」と思っていたからだ。だって、テレビに出るような有名人や教科書に出てくるような偉人と比べると、僕なんか何の功績も残していない"ただ生きているだけの人"なわけで。仮に、周囲によい影響を与えることを「価値」とすると、明らかに

(有名人や偉人の価値)>(僕の価値)

という不等式が成り立つわけで、「価値」が同等にはなりえない。

そんな、僕が元来持っていた価値観を、この本は揺さぶってきたわけだ。とはいえ、急に考えを変えることほど難しいことはない。本には、すべての人の価値が一定だと思うことが、自己肯定感を高める出発点になる、とも書いてあったので、一旦はこの考えを理解することにした。ただ、その時点では納得することはできなかった。

本を読んでから間もなく大学に進学をした。高校時代よりも多くの人と関わる中で、自然と「人の価値は変わらない」と考えるようになった。社会に何を残すか、他者をどれだけ幸せにできるか、お金をいくら稼げるか。そういう他者を介在することで生まれる価値には、一人ひとり違いはでるかもしれない。けれど、その人の「存在」そのものは誰一人として、誰かに取って代わることはできない。すべての人の「存在」はオンリーワンだという事象が、全員にあてはまる。そう考えると、本に書いてあった内容は真理なのかもしれないぞと、自分なりに解釈を加えて、自分の言葉に落とし込むことができたのだった。それだけでなく、「人の価値」についての自分なりの考えを手に入れることもできた。簡単にまとめると、

  1. 人の価値には2種類ある。1つは「その人自身の価値」で、もう1つは「その人が生み出したものの価値」である

  2. 「その人自身の価値」には、次のような特徴がある

    • 他の人と比べて"量"は変わらない

    • 生涯で変わることがない

    • 人によって"質"は違う

  3. 「その人が生み出したものの価値」には、次のような特徴がある

    • 他者から評価されることで価値が決まる

    • 常に変動する

    • 同時に複数の種類の価値をもつこともある

という感じだ。

「その人自身の価値」は、さっき話した通り、常に一定の量を持っている。ただ、それがどのような価値なのかは個々人で異なる。例えるなら、一人ひとり同じ大きさで質量のボールを抱えているが、その色は違っているということだ。そこには決して優劣はない。あるのは、同じ重さの色の違うボールが存在するという事実だけだ。

【次回に続く】




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?