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【学校】「部活の保護者会をなくしたい」と、1人で学校で提案してきた話

去年の6月。ある夜。
中2の長女が「ママに話がある。」と
神妙な面持ちで話しかけてきた。

「え、何、どしたの?」と聞くと、
「ごめんママ。私部長になっちゃった…。」
と。

それを聞いた私の第一声は、
「えええーーー!!!絶対やだーーーー!!」
だった。

わかってる。
今はとても反省してる。


長女は陸上部に所属している。

元々足が速い子ではないが、小学生の時、アニメ「ウマ娘。」で競走馬の名前のついた女の子たちが馬場を全力で走るシーンを見て「私もあんなふうに走りたい…!」と無駄に近所を走り回るようになり、中学校で念願の陸上部に入った。
人生、何がきっかけになるかわからないものである。

そんな彼女は、大会のタイムがとびきり早い訳でもないので、まさか自分が部長に選ばれるとは思ってなかったらしい。
しかし、真面目さや一生懸命さ、練習態度などが評価され、顧問の先生と上級生から部長に指名された。

すごいじゃないか!誇らしいではないか!!

そんな娘にかけた母の第一声が、
「えええーーー!!!絶対やだーーーー!!」
である。太宰治に母親失格と怒られても仕方ない。

その理由はたった一つ。

娘が部長になるという事。それはすなわち、
母が「陸上部保護者会代表」になるということ、イコールだからである。

私は今まで、PTAも念入りに避けて通ってきた。
娘の小学校のPTAは全員強制参加型ではない。自薦他薦を経て、承諾した人だけが委員として参加する。
なので、新学期に必ず配られるPTA選任プリントにも、自薦も他薦もせず、一貫して
「平日仕事をしており、もし選んで頂きましてもお手伝い出来ないと思います。申し訳ございません。」という一文を書き提出していた。

それが良いか悪いかでいえば、その分を他の保護者がPTA業務を担ってくれているので申し訳ないとは思ったが、正直、平日の終わらない仕事と家事を調整してまでPTA活動に参加する余裕がなかったのだ。
でも、そんなの言い訳で、他のお母さんだって忙しい。ただ私がやりたくなかっただけだ。

そのツケがまわってきたのだろう。
神様、ごめんなさい。

諦めて、前代表のお母さんから引継ぎをして、保護者会のグループLINEに新任の挨拶を一斉送信し、一年間頑張るぞと腹をくくった。

しかしいざ代表になってみると、いくつか疑問が湧いてきた。まず、うちの保護者会が行う役割についてまとめよう。

陸上部保護者会の現在の役割
■大会参加選手への差し入れの手配、集金
■卒業生への記念品の選定、手配、集金
■不定期で行われる食事会の企画・幹事等
■保護者間連絡ツールとしてのグループLINEの管理(新入生保護者のグループ加入のサポート)

正直大した業務では無いが、基本私1人で業務をこなすので地味に負担が大きいし、何よりとても面倒くさい。

役割を一つずつこなすたび、これは本当に必要な業務なんだろうか?と疑問を感じ始めた。無くしても誰も困らない事がほとんどではないか??
なんだかやり方が時代にそぐわないし、来年度以降も誰かが1人でこれをするのかと思ったら、私の代で終わらせてもいいのではないのかという想いがふつふつと湧いてきた。

これ、来年の保護者会で提案したらダメかな?
勇気を出して、問題提起してみようか。

そこで、こんなプリントを作ってみた。
「陸上部保護者会の今後の在り方についてのご提案」だ。

見えにくいので、引用しながら説明しよう。

現状と懸念事項
■上記の業務を、例年保護者会代表が一人で行っている
■保護者会代表は自動的に部長の保護者がなる
■以前は保護者会が企画運営していた三年生を送る会も、コロナ禍以降は学校にて生徒主導で行われるため、保護者会の出番が減った
■卒業生が多く在校生が少ない年は、卒業記念品の金額負担が大きくなる
■全員から毎回金額を集めるのが大変で、全員分集まらないこともある
■大会での集合時間や場所などの連絡事項は、生徒たちがクロムを中心に共有しており、緊急の場合も顧問の携帯より連絡が来るので、保護者が連絡を取り合う機会は少ない
■グループLINEは連絡先が共有されてしまい、個人情報の管理が難しい
■そもそもLINEを利用していない保護者さんもいるので、現時点でも全員参加している訳ではない
■他の部活の保護者にも聞いてみたが、保護者会の無い部活動も多い

その上で、どうしていくのが良いのかも書いた。

ご提案
① 卒業生への記念品は、現状在校生たちからも色紙やお手紙などを作成しているので、それで十分なのではないか。
② 不定期に開催される食事会は、開催したいと提案した人が幹事になれば良いのではないか
③ グループLINEへの新入生の保護者さんの加入は希望制にし、それ以降は不要であれば自由参加にしても良いのではないか

保護者が一同に集まる機会は、年に一度、4月の部活動保護者会だけ。その時にこれを配りたい。そして、なんなら保護者会を解散にもっていきたい…!

そう決心した私は、
まず顧問の先生に電話で相談した。緊張した。

でも相談した結果は、まさかの
「いや~、いいんじゃないですか~!」という後押しだった。
「僕もちょっとそう思ってましたよ。」との事。
学校と保護者会の直接関係性はない。なので、お任せしますと。

念のため配布予定のプリントを娘に持たせ、先生に問題がないか確認してもらい、問題なければ、4月の保護者会で最後に時間を貰うことを了承して頂き、電話を切った。

そして迎えた、決戦の保護者会。
30枚ほどのプリントのコピーを抱え、前日から緊張が止まらない。

良かれと思ってこれを作ったけど、これってこれからの陸上部にとって本当にプラスになるのかな?私のエゴなんじゃないかな?私は課外活動を楽しめないタイプの保護者だけど、こういう保護者会の存在を楽しみにしている保護者さんだっているはずだ。反対の意見が上がった時に、私はちゃんと答えられるだろうか。

でも、今日はあくまで「提案」する機会だ。
これをきっかけに皆さんに意見をもらうのだ。

大丈夫。大丈夫。

保護者会が始まった。


最初は例年通り顧問からの説明や注意点などが続く。そして最後に「保護者会からどうぞ」と促される。

1人緊張しながら前に出て挨拶をし、プリントを配布して説明を始める。

「こちらのプリントに目を通して頂きなんとなく察して頂いたかとは思いますが、本日はざっくり言うと『保護者会、もうなくしてもいいですか?』というご提案です。」

その上で、なぜこれを提案しようと思ったのかを説明する。

それは一番に、これから保護者会代表になるだろう、次の、そのまた次の、これからの部長の親御さん達の負担を考えての事だ。

次の部長の親御さんも、仕事が忙しいかもしれない。もしその子も「部長に選ばれたよ!」と親に報告した時、「えー、やだよー!」なんて言われたらかわいそうだ。私は言ってしまったから。

それに、次の代表は選ばれてすぐに
「これホントに必要ですか?」なんて言えないだろう。それなら私が言おうじゃないか。

ちなみに「私は、娘が引退する最後まで、責任を持って代表職を務めます。」と伝えた。
その代わり、次の人を自動的に決めるのはやめませんか。

解散なのか、辞めるなのか、無くすなのか。
自然消滅?フェードアウト?AKBで言うと卒業?でしょうか…。
なんという言葉が合うのかはわかりませんが、そうしていきたいと思ってます。と。

説明しながら、
参加している保護者さんたちの顔色を伺う。

すると、かなり多くの保護者さんが、私の言葉に頷いてくれていた。みんな優しい。よかった。ほっとした。

最後に、
「今日この保護者会が終わった後、私は最後までここに残るので、ご意見などありましたら、どうぞ遠慮なく教えてください。」そして、
「今年度からは、保護者会のグループLINEは希望制にしたいと思うので、私と連絡先を交換してもよいと言う保護者の方、グループLINEに招待して欲しいという保護者さんだけ、私に声をかけてください!」と伝え、保護者会を終了した。

席に戻ると、隣に座っていたお母さんが「1人で頑張ったね、お疲れ様!」と声をかけてくれた。
嬉しかった。泣きそうだった。

すぐに、新入生のお母さん2人が「LINEグループに招待してください!」と話しかけてくれた。

逆をいうと、新入生5人のうち、他の3人の保護者さんからは、招待して欲しいと言われなかった。

そうですよね。
やっぱり希望制にして良かった。みんな入りましょう!じゃなくて、これがいい気がする。

その後2年生のお母さん達も声をかけてくれた。
「いつも本当にありがとうございます!」
「これも1人で考えられて準備して下さって、本当にありがとうございます。」と。
わざわざ伝えにきてくれた。
嬉しかった。賛同が得られて、感謝までされて、勇気を出してよかった!と思った。

最後に「次、うちの娘が部長に選ばれたらどうしようとずっと心配だったんです…。なので、提案大賛成です!」と言ってくださった。あとで娘に聞けば、そのお母さんは次期部長候補のお母さんらしい。
やっぱりそうですよねー!!
みんな同じ事思ってたんだな。よかった。

そんなこんなで、保護者会は無事に終了した。

保護者会を欠席していた保護者さんにもグループLINEで「陸上部保護者会の今後の在り方についてのご提案」の詳細を補足説明付きで送る。その後、数名のお母さんから賛同します!という旨の個別LINEをもらった。

そうして、私の1人の戦いは初戦を無事終えた。

今後は、皆さんから集まった意見をまとめて、共有したいと思っている。そして、やっぱり出来れば保護者会を解散したいな、と。

私の考えは、もしかしたら、独りよがりだったのかもしれないと、まだちょっと思う。

時間やお金を無駄にするのが嫌いなために、合理的すぎて、何かを失っているのかもしれない。

でも正しいと思った事をやって、今、後悔はない。きっと良かったはず。

長女は6月に部活を引退する。
引退したら、部員さんや保護者さんを募って、去年の代表さんがしてくれたみたいに、焼肉屋さんでお疲れ様会を企画したいと思う。

最後まで保護者会代表を全うして、私も引退する!


お疲れ様、娘。
お疲れ様、私。


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