音楽の日2023に見出した希望
7月15日、TBS放送の「音楽の日」で日本の音楽史に刻まれる夢のコラボが実現した。
それは事務所の垣根を越えて違うグループがコラボするという異例のもの。Travis Japanの宮近海斗はこのことを「願っても叶わないこと」と表現した。当事者にそんな悲しい発言をさせるこれまでの環境は、はっきり言って異常だった。
その悪しき慣習を破った今回の企画。既に2か月半という長い時間経ってしまったが、どうしても記録に残しておきたかったので記事を書いた次第だ。
※なお、すべて語り尽くすと軽く一万字は超えそうなため、今回は推しのTravis Japanを中心に振り返る。その関係で三代目、GENERATIONS、JO1、&TEAMの分量が少なくなってしまったことを了承いただきたい。
7グループ合同のU.S.A.
オープニングはDA PUMPのU.S.A.から。聴くたびにワクワクする曲だが、この日の期待は格段に違った。
DA PUMPだけである程度踊った後、まずやって来たのはGENERATIONS。LDH特有のワイルドなダンスでかっこよかった。
続いて登場したのはINI。DA PUMPのKENZOとはデビュー前から縁がある。中でも西洸人はオーディション序盤、KENZOの前でU.S.A.を披露し絶賛された過去がある。そんな彼が後ろで踊っているのは感慨深かった。
そしていよいよTravis Japan。はち切れんばかりの笑顔で全力で楽しんでいた。出番終わりのピースも、共演した他のグループにはないあざとさがあり、らしさを発揮していた。
サビは前半をBE:FIRST、後半を&TEAMが務めた。その後JO1が登場。インベーダーではけていくのも様になっていた。
曲調が静かになって、DA PUMPだけが残る。盛り上がりと共に再び他の6組が出て来て圧巻のユニゾン。間もなく結成30年を迎えるベテランユニットのスマッシュヒットは、オープニングに相応しいコラボだった。
それにしても、曲の終盤でISSA一人だけが踊り他は全員静止している光景は実にシュールだった。
仮面舞踏会 / 宮近海斗×白濱亜嵐×後藤威尊
続いては少年隊の仮面舞踏会。事前情報でそれは知っていたが、面子は当日発表。私は現役ジャニーズのちゃか(宮近海斗)か如恵留をセンターに、サイド二人を他社で固めるものだと予想していた。
しかしそのフォーメーションは、画面左から宮近海斗、白濱亜嵐(GENERATIONS)、後藤威尊(INI)。
え?!まさかのセンター白濱亜嵐?!
威尊がヒガシポジション?!
ちゃか…がいるのは予想通りだけど、カッちゃんポジション?!
センターをジャニーズではなく他社所属の白濱亜嵐に譲ることで、この企画が如何に前例を破るものか見せつけてくれた。
衝撃もさることながら、ダンスも三者三様で良かった。
白濱亜嵐の甘いルックスはジャニーズ楽曲と親和性がありつつも、LDHらしいチョイ悪さがいいスパイスになっていたし、後藤威尊のストイックさはヒガシに通じるところもあり、デビュー以降の更なる成長を感じた。もちろん我らが宮近海斗も、継承してきたジャニズムを如何なく発揮していてこれぞ仮面舞踏会というパフォーマンスだった。
JUST DANCE! / Travis Japan×BE:FIRST
レジェンド的楽曲に続けとばかりに流れてくる、聞き慣れた推しのイントロ。うみんちゅ(中村海人)の「行くぞ!!」もいつになく気合が入っていた。
サビ前の如恵留のパートに入り、後方からひっそりとやって来るBE:FIRSTのメンバーたち。まつく(松倉海斗)の歌声きっかけに引きの映像に切り変わると、そこには夢のような世界が広がっていた。
こ、これは…
ジャニーズのグループが他社のグループと一緒に自分たちの曲を披露しているなんて…
私は夢でも見ているのか?!
何て思ってしまうほど、両グループのコラボは多幸感に溢れていた。
そもそもBE:FIRSTのプロデューサーSKY-HIは「もうダンス&ボーカルシーンに垣根も差別も必要ない」という信念のもと、D.U.N.Kというプロジェクトを手がけた人物だ。一方今回のコラボに選ばれた「JUST DANCE!」は「どこの誰とか関係ない」というメッセージが込められている。そんな二組の親和性はピッタリだった。
印象に残った箇所をピックアップすると、中村海人とSOTA(BE:FIRST)が一緒にアップで写る様は楽しそうだったし、最後ちゃかと一緒にセンターに立ったRYUHEI(BE:FIRST)は誇らしげで可愛かった。
Rocketeer / INI×Travis Japan
先に少し自分語りをすると、私はトラジャ担であると同時に国プでもあり、INIのメンバーのことはデビュー前から知っていた。が、日プS2の終了と同時にちょっとした日プロスに陥ってしまい、INIになってからの彼らは追っていなかった。
そんな中発表されたINIとTravis Japanのコラボは、個人的に最も楽しみにしている箇所だった。
「You can ask me now what's the next?」ひとつ前のJO1×&TEAMによる「SuperCali」の終わりの歌詞だ。それに応えるかのように踊り出すINIの11人。映し出された西洸人の目からは気迫が充分すぎるほど伝わってきた。
日プロスを経験した私にとって、よく知る彼らのデビュー曲を音楽番組で観るのはこの日が初めてだった。
当時の1pick、田島将吾のラップは相変わらずで安心した。曲調が一段と静かになり、アップで映し出された髙塚大夢のダイナミックな歌声が響き渡る。
画面が切り替わると、そこにはINIの11人に加わったTravis Japanの7人がいた。
この瞬間をどんなに待ち望んだことか。
私がデビュー前から応援してきたTravis Japanと、結成前から観てきたINIの共演。そのパフォーマンスはどんな言葉で形容しても足りないほど圧巻だった。
地球どころか宇宙まで支配してやるという気迫を感じるこの曲、前述の「JUST DANCE!」が「共に歩む」だったのに対し、こちらのコラボは「競い合って高みを目指す」といったところか。「共演」というより「競演」と書いた方がしっくり来る。
個人的にこのコラボのMVPをあげるなら宮近海斗(Travis Japan)。後ろにいる時はまだパフォーマーの一人で留まっていたのに、センターに立った途端、他の17人を飲み込む帝王オーラを発揮し目が離せなかった。
コラボ直後に見た奇跡の瞬間
曲終わりの余韻の中、「すごいものを見たなぁ…」とため息をついたその時だった。
田島将吾(INI)が松田元太(Travis Japan)に「やったな!」と声をかけたように見えた。
一方の元太もそれに応えるかのように笑顔で応えてる。
か…
壁越えたああああ!!!!!!!
今のジャニーズ事務所を巡る状況、たじと元太の関係性、それを思うだけでこの光景にどれほど大きな意味があるだろう。日プS2以前のたじをリアルタイムで知る人はきっと、私なんかよりも更に感動したはずだ。それだけに、このコラボが果たしたものは大きい。
あまりの衝撃に私は、その光景を見てしばらくの間は放心状態だった。直後の郷ひろみ登場のサプライズも「ワーゴウヒロミダー」くらいの反応しかできず、しめしず(七五三掛龍也と吉澤閑也)の登場でようやく正気を取り戻す有様だった。
※もちろん郷ひろみのパフォーマンスは共演者含め最高だったぞ!
Oh s**t!! feat. SKY-HI / s**t kingz×中務裕太×川尻蓮×木村柾哉×松田元太×SOTA
ダンサーのフラストレーションを題材にしたこの曲、各グループから選抜された5人のキャリアにもピッタリだった。川尻蓮(JO1)、木村柾哉(INI)、SOTA(BE:FIRST)の3人はデビュー前バックダンサーをしていたし、中務裕太(GENERATIONS)と松田元太(Travis Japan)は途中でグループに加入した苦労人だ。そんな彼等の過去がオーバーラップして、観ているこっちも熱くなった。
当然全員素晴らしかった。そんな中で一番を決めるのは野暮だと分かっているが、どうしても触れておきたいパフォーマーがいる。
それがSOTA(BE:FIRST)だ。
待機中から「早く踊らせろ」と言わんばかりにカクカク動いていたり、サビ前にセンターで大暴れしたり、Travis Japanのコラボと同一人物とは思えなかった。
放送当日は、運動会で我が子を見守る保護者の如く元太に集中していた私だが、少しでも気を抜いたらSOTAに目を奪われそうになったほどだ。今でもこのコラボを見返す度、気がついたらSOTAを追っている。推し補正の無い状態でここまで人を釘付けにするSOTA、只者じゃない。
R.Y.U.S.E.I. / 三代目 J SOUL BROTHERS×DA PUMP×全参加者
最後は2014年のレコ大受賞曲。ベテラン同士のコラボでビシッと引き締めつつ、クライマックスの8組合同ランニングマンへ。
途中合流の6組が加わる時、文字通り風になって遊ぶように出て来る松田元太と川尻蓮がかわいかった。さっきまでバチバチに踊っていたとは思えないこのギャップがたまらない。
しかもよく見たらしれっと郷ひろみが混ざっている。隣の松倉海斗も楽しそうだがそれに負けじと楽しんでる。こういうのは大好き。
そしてとうとう曲が終わり、夢のような時間も終わった。
夢のコラボを夢で終わらせないために
「テレビってすげーな!これできるんだよテレビで!」司会の中居正広の興奮はまるで私の気持ちを代弁しているようだった。話を振られた s**t kingzのメンバーはこう言った。「当たり前にしていきたい」
その通りだ。
これはただのコラボではない。
参加したアーティストの所属事務所は総勢7社(郷ひろみ含む)。そのうち一つは長年他社との共演を拒み、おまけに今渦中にあるジャニーズ事務所。それを敢えて起用したことは大きな意味があると思っている。
音楽の日の後の9月14日、NHK MUSIC EXPO 2023ではTravis Japanと&TEAMがコラボした。
業界を巡る課題は山積しているが、アーティスト同士の交流という点においてはいい流れがきていると思う。やがてコラボパフォーマンスを披露することがスタンダードになれたなら、音楽の日が果たした意義は大きい。
さて、4000字以上長々と語ってしまったが、恐ろしいことにこれでもまだ足りない。丁度いいタイミングがあれば、後日別記事を掲載する予定だ。
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