神山 直樹

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神山 直樹

日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。幅広い資産クラスの市場分析・予測を行い、投資情報や運用戦略などを発信しています。「神山直樹が語るマーケットと投資」は http://www.nikkoam.com/products/column でご覧いただけます。

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  • 投資ってなんだ!?

    投資の目的を「引退後の潤いのある生活」としましょう。マーケットの知識や相場観などは不要です。潤いのある生活のために、毎年3%、20年で60%の資産増を目指すのです。最初から「まとまった資金」はなくてよく、毎年の積み重ねであとから「まとまった資金にしていく」のです。これが、現役・退職世代の投資未経験者に本当に知ってほしいことです

  • 初めての投資Q&A

    これから投資を始めようと考えている資産形成世代のみなさまのお悩みや投資のギモンについて、日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト神山直樹がお答えしていきます。

最近の記事

長期金利の上昇は日本株・経済にとって良くないのか

長期金利が上昇しています。が、日本経済が立ち上がれない、歩き出せない原因になるとは思えません。 コロナ禍前からの約5年の間、株価と金利はどちらも上昇しています。長期金利がマイナスから1パーセント程度まで上昇する間に、日経平均株価は2万円程度から4万円程度に上昇したのです。このことだけでも金利上昇が株価の上昇に悪影響を与えたとは言えません。 金利上昇に伴う株価の下落は、「金利が上がると不安になりやすい、下がると安心しやすい」という市場心理に関係していて、短期的には起こり得ま

    • 新NISAがはじまってもうすぐ半年、いつまで続けるもの?

      つみたて投資枠と成長投資枠、どう使い分けるといい? NISA制度が新しくなり、以前以上に投資に興味を持ってくださる人が増えて良いことだなと思っています。しかし、真面目な日本人がしばしば陥りやすい罠は、何か間違わないか、うまくやらないといけないのではないか、完璧な使い方(使い分け)、これを知らないと損する、のような情報を集めがちということではないでしょうか。 正直なところ、NISAの本質は、枠内の投資の儲け(売却益、配当・分配金)に税金がかからない、という点のみです。それ以上

      • 株式を資産に組み入れることの意味

        株を持つことはギャンブルなの? 株の歴史から解説 新NISAなどで投資に理解を持つ人が増えている反面、払い込んだお金が戻ってくるとは限らないという意味で、投資はギャンブルのようなもので、手を出して損してはいけないという考えも根強いと感じています。 株式投資(株式の投資信託やETFも含みます)は元本を保全することを目的とした投資ではないので、その意味で絶対に損しない、儲かるということはありません。ただし、ギャンブルとは違います。株式投資とギャンブルの違いを知って、そのうえで

        • NYダウ4万ドル:金利より成長期待へ

          5月17日に米ダウ工業株30種平均(NYダウ)が史上初めて4万ドルに達しました。 インフレに関する指標がおだやかになり、金利低下が期待されはじめたことが材料とされました。短期的にはこのような市場の動きになるかもしれませんが、長期的には金利と株価の関係をさほど気にする必要はありません。 これまでのおよそ10年のNYダウとアメリカの長期金利の推移を見ると、長期金利が2%の時よりも4%を超える現在のほうがNYダウが高いので、金利が高いほど株価指数が低下すると見る必要はないことが

        長期金利の上昇は日本株・経済にとって良くないのか

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        記事

          円安に対する海外投資家の反応はさまざま

          海外投資家について、「円安で上がりやすい日本株を買うだろう」という考え方と、「円安ではドル建ての利益が低くなるので日本株を買わないだろう」という考え方があります。実は、海外投資家にはいろいろなタイプの投資家がいて、どちらかひとつにまとめるのは困難です。 例えば、先物市場で短期的なトレーディングを行う海外投資家は、2022年夏や、23年の春から夏頃まで大幅に日本株を買い越しました。ドル高円安が進み、日経平均株価が比較的大きく上昇した時期でした。 短期的な売買を好む海外投資家

          円安に対する海外投資家の反応はさまざま

          FOMCと米雇用統計後のドル円相場

          大型連休を挟んでドル円相場の動きが急でした。 5月初めの米連邦公開市場委員会(FOMC)、米雇用統計の発表を過ぎ、日本政府・日銀の為替介入の観測もあって、一方的なドル高が一段落し、一時151円台の円高となりました。 今後、アメリカの利下げと日本の利上げはたいへん緩やかに進むとみており、市場参加者のドル高心理が低下していくと考えます。 ドル高修正理由は3つあります。まず、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長がさらなる政策金利の引き上げの可能性が低いと発言したことで、ドル

          FOMCと米雇用統計後のドル円相場

          為替市場には不思議な円安あり

          4月10日に1ドル=151円台だったドル円が、4月29日には海外市場で一時160円をつけるドル高円安になり、その後156円程度に戻るなど大きく動きました。日本政府・日銀が円買い介入した可能性も取りざたされています。 いまのところ市場参加者は円安の圧力が高いと感じていますが、4月中旬以来、経済統計については円安になる理由は少ないです。アメリカではインフレ率の低下が思ったより緩やかとはいえ3%を割れており、5%以上の金利を長く続ける理由に乏しいでしょう。米連邦準備理事会(FRB

          為替市場には不思議な円安あり

          日経平均の調整は半導体が要因

          日経平均株価が1カ月程度調整しています。これは、主に半導体関連の株価調整が原因とみています。 地政学リスクによる心理的な影響も多少はあると思いますが、4月に入ってから原油価格は下落しており、中東の地政学リスクが原油価格を上昇させアメリカの景気を悪化させるようにはみえません。 一方で、昨年末以来の日経平均の上下動は、アメリカの半導体関連銘柄の指数であるSOX指数と似た動きをしています。特に4月に入っての調整はタイミングが似ています。 昨年末から、日経平均は原油価格上昇を気

          日経平均の調整は半導体が要因

          地政学リスクと株価の先行き

          イスラエルとハマスの紛争がイランのイスラエル攻撃に繋がり、中東の地政学リスクは明らかに高くなっています。原油価格は、中国の需要停滞などからそれほど上昇してきませんでしたが、紛争拡大懸念から一時的な原油高も起こる可能性があります。また、輸出企業の販売数量が減る恐れもあるでしょう。 ただし、メインシナリオは変わらないと見ています。 まず、日本の輸出企業の輸出数量は揺れるとしても、イスラエルとイランの現時点の紛争のみであれば大きなリスクとは言えません。日本への最大のリスクはイラ

          地政学リスクと株価の先行き

          アメリカの金利と日米グロース株

          4月5日に発表された3月の米雇用統計は、雇用者数増加は予想より多かったのですが、前年同月比の賃金上昇率は低下しました。 つまり、働く人が増えたことで、求人は満たされて雇用者数が増えたのですが、賃金を上げる必要はなくなりつつあるのだと見ることができます。これはインフレ率の落ち着きを示唆するものと考えます。 結果として、米連邦準備理事会(FRB)が早めに利下げを始めなければならないほど弱い経済ではないこともわかりました。アメリカの長期金利は上昇、ドル円相場もドル高方向に動きま

          アメリカの金利と日米グロース株

          強い米ドル

          米ドルが強いまま、しばらく150円台を維持しそうです。アメリカ経済が予想以上に強く、インフレ率が低下しても急いで政策金利を引き下げる必要はなさそうだからです。6月ごろに利下げが予想されますが、信用不安も小さく、雇用も順調なので、その後の利下げは当面必要ないかもしれません。 一方、日銀は予想通り政策金利をマイナスからゼロに引き上げました。しかし、まだゼロですからアメリカから日本に資金を移しても預金での金利収入はほとんどないでしょう。金利差で円を買う理由に乏しい状態が続きます。

          強い米ドル

          立ち上がるクララ(日本経済)

          いまクララが車いすから立ち上がる時が来ています。「アルプスの少女ハイジ」の友達であるクララは、長らく病気だったがすでに立ち上がる程度に回復している日本経済のたとえです。クララはペーターに車いすを壊されたことをきっかけに立ち上がることができました。 日本は労働市場が不況でも調整できない体質なので、一度経済が悪化すると長い間ヒト・モノ・カネの余剰が続いてしまいます。しかし、輸出の好調やコロナ禍からの回復で病気が癒えてきています。 そして、いま、待ち望んでいた設備投資が大きく増

          立ち上がるクララ(日本経済)

          米ドル円と日経平均はブレが大きい局面に

          当面、米ドル円相場と日経平均株価がぶれやすい状況だとみています。 まず、報道などから日銀が3月19日にもマイナス金利をゼロ金利に変更するとの期待が高まりました。理由の一つが、まもなくまとまる春闘のベースアップ率が高くなりそうとの予想です。 大企業正規社員の給与上昇の背景には、経営者のこれからの事業拡大への自信があるはずです。日銀は、それゆえ給与上昇が持続的であると判断して、マイナス金利をまずゼロ金利にする可能性が高まっています。3月19日でないとしても、4月26日までには

          米ドル円と日経平均はブレが大きい局面に

          日経平均4万円到達

          日経平均株価が3月4日終値で4万円を超える水準に到達しました。この水準だけでなく、到達する速さに驚いています。 このところの上昇の理由は、米国の半導体関連などテクノロジー関連企業の好業績があり、その好影響を受けると期待される日本企業の株式が買われています。 また、4日公表の法人企業統計で2023年10-12月期の設備投資が想定以上に強かったことも良い驚きでした。企業の設備投資の積極化は、賃金上昇の持続に重要です。これまで投資意欲が弱くて残念だったのですが、強さが見えてきま

          日経平均4万円到達

          臆病なFRBと日銀だが円高方向

          2月中旬からドル円相場が150円程度で推移しています。 理由のひとつが米連邦準備理事会(FRB)の利下げが遠のいたことです。1月の賃金上昇率が高まったことや高官発言などから、利下げは6月開始、3カ月に1度0.25%ずつというゆっくりしたペースを予想します。 アメリカのインフレ率は3%台前半まで低下しており、5.5%の金利はかなり高いと感じます。FRBはインフレ再燃となることを大変恐れており、現状に合わせて金利を早々に引き下げることに臆病になっているようです。高金利でも経済

          臆病なFRBと日銀だが円高方向

          日経平均は4万円に迫るが…

          日経平均株価が急上昇し、バブル期の1989年につけた最高値を抜く勢いです。日本経済が「余剰から不足へ」大きな転換点となる可能性がある、との私の考えに変わりはありませんが、このところの市場で上昇の理由とされるものはこの転換とは関係が薄いので、今後ブレが大きくなりやすいと予想します。 上昇の理由を4つ挙げて考えます。 アメリカの物価上昇率が高止まりし金利高が続くと、バリュー株優位で日本株が好まれるとされます。しかし、インフレ率はすでに3%台前半で、5%以上ある政策金利が引き下

          日経平均は4万円に迫るが…