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小詩集~錆びた藤棚の下で、枯れ葉のごとき人(再構成含む)

まだ寒い

弥生のそらにこぬか雨

街はいまだ

成熟の時代を知らず

人は老い衰える

春はただ

惰眠の予感

それもまた楽し

断酒会ではいつも

アルチュウで糖尿病と

自己紹介をする

大酒呑みで糖尿病で死んだ

父と兄の思いでを語る

脳梗塞から片足をえそで喪い

静かな五年の闘病で亡くなった父

いつもベッドに寄り添い

老いを迎えた三毛猫

生への疑念に沈んでいた

私は父のように酒呑みになって

はたちの命をなんとか保った

やがて兄が糖尿病の

あらゆる合併症を併発し

八年の混乱のすえ

死んでいった

幼い時にみたとさつ場の牛のように

兄が解体される夢におびえ

酒を断とうともがいていた

父さん兄さん

死の情動サナトスに

とりつかれた少年は

まだ生きています

南無観世音聖徳太子に

人生の最期をささげ

死骸として打ち捨てられた

歴史に確かな現実を求める

不確かな生活を楽しんでいます

虚構をはがすほどにゆらめく

現実の愉快な曖昧さ

しあわせです

錆びた藤棚の下で

タバコを吸う

幾山河超えさりゆかば

なお寂しさのわが故郷に回帰する

言葉まずしき国とて

言葉まずしき詩人の住みかなり

老いたる身を嘆くな

常に命はさだめなきもの

年月をへてなお愚昧なり

お日さまにうながされて

咲いてしまいました

どうしましょう

風がつめたいわ

まちがえたのかしら

いいえ

花咲くときは

花がえらぶがままに

                   マリーゴールド

枯れ葉に美あり

断酒して

老いを楽しむ

深酒に

捨てた命のはずだった

命以外の多くを捨てた

枯れ葉のごとき人となり

美あり

雀に心があるか

あるよ

だって僕に心があるから

雀に心があるか

ないよ

だって僕に心がないもの

僕は存在するの

存在するよ

雀に見つめられたもの

世界は存在するの

存在するよ

僕や雀が見つめるもの

寒くなったね

つぎの春まで世界は存在するの

それはわかんない

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