私のインプット棚卸2023 -読書編①-
昨日記事の続編です。
2023年は新旧問わず実に良い本と出会えました。他方、インプットはできたがアウトプットに欠けた、と反省しています。年末を機にそれらのアウトプットをしたく思います。読んだ本の棚卸から思考を整理し、定着させたいと思います。
今日取り上げる3冊は、私が現在働く外国、特に「中国」で役に立つものとなった、と思っています。宜しければどうぞお付き合いください。
1冊目「聞き書 緒方貞子回顧録」野林 健 (編集), 納家 政嗣 (編集)
キャリアの中でも国連難民高等弁務官として特に知られる緒方貞子さん。この世代の日本女性で海外でご活躍になった稀有な方です。
私は国連難民高等弁務官としての緒方女史しか知りませんでしたが、彼女のバックグラウンド、経験から中国で働く日本人として貴重な知見を得られました。実に勉強になる素晴らしい本でした。
その背景をいくつかご紹介します。
彼女の祖父、芳澤謙吉氏は大正から昭和にかけて、日本を代表する外交官です。清朝最後の皇帝として知られる宣統帝・愛新覚羅溥儀が紫禁城を追われた際、芳澤氏の元(日本大使公邸)へ逃げ込むというエピソードは初めて知りました。
緒方貞子女史も、1935年から中国福州に住まわれ、3年弱ほど中国にご縁があったようです。こうしたこともあり、満州事変を研究対象にされる、また中国と向き合うかについて確固としたご意見をお持ちです。
私は縁あって中国で働いていますが、日中の政治的リスクや、「注意すべき政治的日程」「過去の事件の日程」は商売上も嫌でも気にしなければいけません。それらを機械的に覚えるのではなく、こうしたエピソードや背景、証言を重層的に積み上げていくことで理解が大いに進みました。
上記以外において、私が特に響いた箇所をいくつかご紹介します。
これらから、緒方女史の透徹とした自己俯瞰(今っぽく言えばメタ思考)が浮き上がってくるように思います。多文化経験から身に着いた「多様な価値観」をリスペクトを込めて仕事で社会にお返しすること・・それが私のやるべきことかな、と思います。
2冊目「情報なき国家の悲劇 大本営参謀の情報戦記」堀栄三著
田端信太郎氏のTwitterで推薦されていたこともあり、手に取りました。同氏が最初に推薦されたのは2013年なのですね。それもそのはず、この本は1996年に発行されたもので、著者の堀栄三氏は旧日本軍の作戦参謀であり、自衛隊でのご勤務経験もある方なのです。
日本人の本質は容易に変わらず、日本の組織が根源的に抱える課題が指摘されている事項から透けて見えます。これは強烈なビジネス書です。全てのビジネスマンに推薦します。
実際に同書の冒頭に以下のような箇所があります。
また、以下の箇所の抜粋引用をご覧に入れます。これが本書の本質と思います。
現代のビジネスにおいて非常に応用できると思います。全体を通して、当事者が語る情報の重みが伝わってきます。
3冊目「安倍晋三回顧録」安倍晋三 (著), 橋本五郎 (著), 尾山宏 (著)
2022年7月8日。会議を終えた私に中国人の同僚が1本の動画を見せてきまし
た。安倍晋三元首相が、街頭演説中に襲撃された動画です。絶句しました。
彼の業績や人柄には、毀誉褒貶があるでしょう。
私個人としては海外で働く上で、その期間が長期にわたる安倍政権に長く重なっておりました。彼のプレゼンスの高さにより、ある一定の祖国に対する安心感があり非常に助かっておりました。
暴力により、彼がお亡くなりになってしまったことは非常に残念ですし悔やまれます。また私個人の上記の経験が同書を手に取るきっかけになりました。
近現代史、国際関係を学ぶ上で当事者である政治家の声・意見を聞くというのは非常に重要だと思います。本書は当然、安倍氏の見方が中心になります。前書きでも、政治家の回顧録は自己正当化が避けられないが、それを世の中に晒すことにより相対化を図ることが本書出版の趣旨の一つである、と書かれています。
安倍氏の中国観は、非常に芯を食ったものだと思います。繰り返しになりますが中国で働く私にとって、知見を重層的に積み上げることは理解を大いに助けました。
このご意見、まったく身もふたもないですが、事実だと思います。私はだからこそ、日本組織には強いリーダーが必要だと思うのですね。合議による現状変更はできても、修正は難しい。間違った路線を驀進してしまうのですね。半ば独裁的なリーダーがいる企業が成長しているのはこうしたところと思います。
今日もお付き合い頂き有難うございました!
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