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【アントラーズ定点観測】#8 得点なくして勝つことなし。

今は我慢の時期なのだろう。間違いなくチームとして前には進んでいるように感じることはできた。しかし残念ながら結果にはうまく結びつかない。勝利したジュビロ磐田戦でもPKでの1得点。流れから得点が取れない苦しい現実が、鹿島アントラーズを苦しめている。

試合結果

FC東京 2 - 0 鹿島アントラーズ

【得点】
〈FC東京〉
55' 仲川(←松木)、45'+7 原川(←松木)
〈鹿島〉
なし

【警告】
〈福岡〉
小泉、白井
〈鹿島〉
なし

スタメン

ホームのFC東京は、鹿島からレンタル移籍中の荒木遼太郎を契約規定でこの試合で起用することができない。彼に代わるトップ(偽9番)は仲川輝人が起用された。右サイドバックには白井康介が今季初めて先発に抜擢されている。
アウェイの鹿島アントラーズは好調だった名古新太郎を負傷でこの試合は欠くことになった。仲間隼斗と樋口雄太が、第3節町田ゼルビア戦以来スタメンに復帰している。

個で攻め込むFC東京、組織で崩す鹿島

ここ数試合は存在感を発揮できていないチャヴリッチ。彼にゴールが生まれればチームは勢いに乗ってくること間違いなし。

鹿島は決して悪い前半ではなかった。ニアゾーンのポケットに濃野や知念が侵入してチャンスとなる場面もあり、チームとしての進歩を感じ取れる内容だった。また佐野が前に出て、相手が後ろにボールを下げようとしたところからボールを奪ってチャンスになりかけた場面もあったように、守備も前向きにできている分カウンターも打ちやすくなっていた。前半終了後のデータでも、鹿島はミドルゾーンでボールを奪えていたことが分かる。
逆にFC東京は、左サイドの俵積田やバングーナガンデの個で勝負してフィニッシュに持ち込む形が目立っていた。4-2-1-3のシステムの構造上、チーム全体の重心がどうしても後ろになってしまう。仲川がトップの位置から下りてボールを受けようとするものの、それが効果的なアクションに繋がることはほとんどなかった。今季不調ではあるものの、ディエゴ・オリヴェイラという前線の大黒柱の不在の影響を感じた。

大きく響いたミスの代償

しかし後半に試合を動かしたのはホームチームだった。

FC東京は樋口から濃野への横パスを俵積田がカットすると、得意のドリブルで中央突破。2人交わしたところで佐野に一度奪われるも、最終ラインからもう一度繋ぎ直すことに。トレヴィザンが左足でボールを持った時点で、左サイドバックのバングーナガンデはワイドの高いポジションで構えており、ここにあっさりとボールが入った。鹿島側から見ると、チャヴリッチが明らかに切替の局面でサボっている。バングーナガンデのところには濃野が捕まえに行ったものの、空けたスペースには松木が侵入。ワンタッチで通されると松木はチラッと中央を確認。植田-関川の間を切り裂くように走り飛び込んできた仲川へ、松木は知念が寄せ切る前に左足でクロスを上げると、GK早川が飛び出そうとするその前で仲川はヘディングを決めてみせた。

恐るべし21歳、松木玖生

先制したFC東京は鋭いカウンターで鹿島を脅かすのだが、必ずそこには松木が絡んでいた。67分、ヘディングのこぼれ球を回収すると、植田を剥がし知念に腕を掴まれながらも倒れずにドリブルで前進して、左の遠藤渓太へパスを出す。その遠藤が縦にドリブルで持っていきクロスをあげると、再び仲川が詰めるもシュートはクロスバーを直撃してしまい、点差を広げられない。83分にも、安西のミスからジャジャ・シルバがボールを奪う。一度松木に預けてからもう一度松木からプレゼントパスを受けて流し込もうとするが、ボールは無情にも枠から左へ転がっていった。

そして試合の最後、待望の追加点はやはり松木からだった。後半最後、彼は足を攣って横になるシーンもあったがそれでも前へプレスに行く。そこで一度ボールは外に出て鹿島のスローインで再開するが、ミロサヴェリヴィッチの中途半端な浮き球を原川が回収し、松木へヘディングへパス。出した勢いでそのまま走り込む原川を鹿島は誰もついていけなかった。松木はフリーの原川へリターンすると、そのまま左足で放ったシュートはニア上を一閃。勝負をつけた。

松木は2アシスト。20歳ながらゲーム主将も務めているが、その意味がよく分かる試合だった。技術は当然ながら、戦う姿勢、広い視野と冷静な判断を兼ね備える彼は、この後パリ五輪出場を目指してU-23アジア杯へと向かう。松木、そして今日の試合は出られなかった荒木の2人を欠く影響がどれほどあるか、FC東京にとっては正念場となる1カ月になるかもしれない。

我慢の時。ブレずに繰り返すのみ

新戦力、ミロサヴェリヴィッチがデビュー。しかし、後半最後の失点に絡んでしまうほろ苦い試合になってしまった。

話を鹿島アントラーズへ戻そう。
サッカーはミスがつきものだ。ミスを犯してしまうと失点する。その分、相手からより多くゴールを奪うことができれば、勝つことができる。
この試合、明らかに組織的に連動してチャンスを作っていたのは鹿島だった。福岡戦と比べても試合の内容は格段に良かった。安西、濃野の両サイドバックは攻撃時に高い位置まで上がって、ポケットやその手前まで顔を出す場面も多くなっている。知念は中盤の選手らしくなってきており、ボランチの位置から飛び出してゴール前に飛び込んだりすることも見られた。
結果に結びつかなかったのは残念だが、長いシーズンで見た時にはこのような日もある。今は我慢の時だ。アウェイ連戦の連敗は痛かったが、得意の県立カシマサッカースタジアムに戻って連敗ストップを目指す。

text by 亀石 弥都
photo by 鹿島アントラーズ公式X、FC東京公式X

ハイライト

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