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【アントラーズ定点観測】#7 激しく打ちつけた雨、直面した厳しい現実

鹿島は実質昨季から何も変わっていない。

アビスパ福岡を率いる長谷部茂利監督はおそらくそう感じていたのだろう。町田戦同様、鹿島は試合を通じて全く主導権を握ることができずに敗れることになった。

試合結果

アビスパ福岡 1 - 0 鹿島アントラーズ

【得点】
〈福岡〉
52' ザヘディ(←宮)
〈鹿島〉
なし

【警告】
〈福岡〉
松岡、グローリ、湯澤
〈鹿島〉
濃野

スタメン

ホームの福岡は、前節から4人スタメンを変更。ゴールキーパー村上昌謙、3バックの右ドウグラス・グローリ、2シャドーの一角北島祐二は今季初出場。ボランチ重見柾斗が2試合ぶりのスタメンとなった。
ディフェンスラインを支える主将、奈良竜樹は前節試合中の脳震盪の疑いがありメンバー外。またドリブルで攻撃を牽引する紺野和也はベンチから出番を待つことになった。

一方アウェイの鹿島は、佐野海舟がスタメンに復帰。土居聖真は本来の2列目トップ下での先発起用となり、名古新太郎が右サイドハーフを務める。前節前半45分で交代となった藤井智也はベンチからも外れることになった。

行き詰まった攻撃

持ち前の堅守が崩れ2試合連続複数失点で連敗中の福岡。対して連勝の鹿島。対照的な状況で迎えた両チームの対戦は、ホームの福岡が試合の主導権を握った。2シャドーの北島と岩崎悠人が激しく繰り返しプレスをかけることで、鹿島はボールを繋がせてもらえない。雨で滑りやすくなったピッチによりボールコントロールも決まらず、中盤の低い位置でボールロストしてカウンターを喰らう場面が散見。足下で繋ごうという意識が強すぎるのか、ミッドウィークの試合での疲労なのか、前線の選手たちも動きが重たく少ない。その結果、前半はペナルティエリアまでほとんど侵入することができないような状況に陥った。ファーストシュートは39分の関川郁万まで待たなくてはならず、これが唯一のシュートだった。60%近いボール保持率でシュート1本、コーナーキック0というスタッツが、明らかにボールを持たされてしまったことの証左だ。

失点に直結した前節からの課題と結実した福岡の狙い

そして後半、恐れていたことが現実となってしまったのは、52分のことだった。左サイドを攻めていた福岡。ゲーム主将の宮大樹が放った左足のクロスボールを、ジャハブ・ザヘディがドンピシャリ。
前節のジュビロ磐田戦でも、斜め前からのアーリークロスを入れられた時にことごとくジャーメイン良やマテウス・ペイショットに合わせられていたが、今回はGK早川友基もストップすることはできなかった。
ポポヴィッチ監督は試合前に「勝つためには一瞬の隙も見せないこと」とコメントしていたが、残念ながら一瞬の隙を突かれる格好となってしまった。イラン人ストライカーのセンターバックから一度距離を置いて瞬間的に前へ入る動き直しは見事だったが、現時点で関川と安西幸輝の間は鹿島の守備のウィークポイントになっている。

左シャドーの北島からの激しいプレスを受け、植田も前節まで見せていた鋭い縦パスは鳴りを潜めた。

そしてこの得点が生まれるまでを振り返ると、福岡の2シャドーの守備時のハイプレスが結実した場面でもあった。鹿島が最終ラインを横パスで繋ぎながら出しどころを探っていると、北島が植田直通にプレスをかけてGK早川まで下げさせる。北島はそのまま早川にもプレスをかけてボールを前線まで蹴らせると、グローリが競り勝ったこぼれ球を重見が回収することに成功。左ウイングバックの前嶋が左サイドをドリブルで押し込むと鹿島のラインは下がって手前が空くようになる。ここに3バックの左を務める宮が上がってサポート。ここに対して鹿島は誰も寄せられず、ノープレッシャーでクロスを上げさせてしまった。

傾きかけた流れ、それでも遠いゴール

失点後も鹿島は悪い流れを止められない。福岡の選手たちの球際の激しさや、得点への焦りもあるのか不用意なパスミスでボールを相手に渡してショートカウンターを受けるようになっていく。

64分の決定機は名古に合わず。

流れが傾いたのは64分、鈴木優磨が前線から降りて起点を作ると、土居に代わって途中から入った松村優太がサイドで受け、中の佐野海舟へ預け直すと、佐野は右サイドを駆け抜ける鈴木へロングボールを供給。福岡の3バックの両サイドは基本的に鹿島のサイドハーフをマンマークするため、松村が宮に食いついた背後のスペースを鈴木が使い、佐野はそこにボールを出したわけだ。鈴木は早いグラウンダーのクロスを入れるが、2枚いた鹿島の選手には合わなかった。
さらに69分には再び鈴木が今度は中央で相手を背負いながら起点を作る。知念慶を経由して安西にボールが渡ると中にドリブル。斜めにフワリと速いボールを送ると、松村がダイレクトで最終ラインの背後へ折り返し。そこに樋口雄太が走り込んでシュートを放つも村上がビッグセーブで凌いだ。
松村、樋口、ギリェルメ、パレジと途中交代の選手が入り流れを引き寄せた鹿島。一方で、後ろに重たくなったことで福岡もウェリントン、紺野を投入し再度前線からの守備を活性化させた。

鹿島には1点が遠かった。
福岡は昨季見せた堅守を取り戻し、今後の自信に繋がる勝利を手に入れた。

今日の試合でも感じたが、ワンタッチで相手を崩しながら突破しようとすることにこだわりすぎるあまり、全員が足下で受けようとする意識が強くなってしまっている。福岡はヒト基準でタイトにマークしてきた以上、背後のスペースをもっと活用してもよかったのではないか。まさに64分のチャンスシーンを意識的に多く作れるようにしたかったところ。

次は中3日で国立競技場でのFC東京戦。
移動距離もあるため疲労が懸念されるが、連敗は避けたい。

text by 亀石 弥都
photo by 鹿島アントラーズ公式X

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