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【アントラーズ定点観測】#11 増えた前向きなアクション。開幕戦以来のアウェイ勝利

アウェイゲーム4連敗で迎えたゴールデンウィーク3連戦の初戦。パナソニックスタジアム吹田に駆けつけたファン・サポーターと、2ヶ月ぶりにアウェイの地で喜びを共有することができた鹿島アントラーズ。この試合では攻守で前向きなアクションが多く見られ、最近欠けていたエネルギーがチーム全体から感じられた。

試合結果

ガンバ大阪 1 - 2 鹿島アントラーズ

【得点】
〈G大阪〉
39' 坂本(←ウェルトン)
〈鹿島〉
27' 仲間(←知念)、54' 濃野(←鈴木)

【警告】
〈G大阪〉
宇佐美
〈鹿島〉
早川、鈴木、濃野、知念

スタメン

4月に入ってから勝ち点を伸ばせずにいたチームに、ランコ・ポポヴィッチ監督はメンバーをテコ入れ。アレクサンダル・チャヴリッチをリーグ戦では初めてスタメンから外した。代わって仲間隼斗を第7節FC東京戦以来のスタメンに抜擢。これが結果的に功を奏した。

最近の鹿島になかった、仲間が見せる動き

開幕節以来のゴールを決めた仲間

仲間隼斗は開幕節の名古屋グランパス戦で2ゴールを挙げるものの、その後は鈴木優磨の復帰によりチャヴリッチが左サイドで起用され始めたことでベンチスタートが増えていた。しかしこのベテランがスタメンを外れて以降、鹿島のサッカーからエネルギーを感じることができなくなったように思える。仲間の魅力は豊富なスタミナを武器に、攻撃ではボールが出ようが出てこまいが最終ラインの背後へのアクションを繰り返し行えること。守備では前に捕まえに行ってから、プレスバックで2度追い3度追いできること。本当にチームのために走り続けられる選手だ。
先制点もサイドから横に走りながら、相手の右サイドバック岸本武流の背中を取って生まれた。もちろん出した知念慶の正確なパスは見事なのだが、ゴールへ向かうべく、オフ・ザ・ボールの時のアクションを地道に繰り返す姿勢がいかに大事かを改めて感じたゴールだった。

そしてまたキミがヒーローになった

濃野公人恐るべし。元フォワードとはいえ、右サイドバックが3戦連続でゴールを決めることはなかなかない。左サイドから斜めのクロスに対して、鈴木優磨のさらに奥へ走り込んでいたことで、鈴木が少し触ったボールを押し込むことができた。結果的にはこれが決勝点となり、またもチームを勝利に導いてみせた。

DFのルーキーでは初となる3戦連発となった濃野

彼が好きなプレーヤーであるジョアン・カンセロ(バルセロナ/ポルトガル代表)も超攻撃的なサイドバックではあるが、まさにカンセロを彷彿させる存在感だ。開幕戦から彼がなぜスタメンで起用され続けるのか、その理由は明白だ。ポポヴィッチ監督もスペースがあればどんどん走り込めと指示をしているようだが、サイドに張ってパスを受けて出した後には、中央、バイタルエリアにも顔を出してくる。この動きは相手からすればマークがしにくい。元々ある攻撃センスを活かして、サイドバックの位置からフィニッシャーとしての役割も担える濃野公人。大卒ルーキーは、これからもまだまだ魅せてくれるに違いない。

気になる主軸2人の状態

今日の試合の光が仲間と濃野であれば、影は鈴木と樋口だ。鈴木優磨はフル出場だったが、明らかにコンディションが悪く最後は必要なタイミングでゴール前にも顔を出せないほど疲労の色を隠せなかった。走れていない鈴木を見ると交代すべきだったという意見もネットでは上がっていたが、個人的には鈴木優磨という存在自体がピッチにいることが重要だと思っている。対戦する相手からすれば厄介な選手である以上、1点差という際どい状況であればなおさら交代は考えたくない。
そして樋口雄太も、昨季の良い時と比べるとコンディションが上がってきていないように見える。ただこれはもしかすると、彼が本来輝くポジションではないところでプレーしているのが影響している可能性もある。ポポヴィッチ監督は樋口を主にトップ下で継続的にスタメン起用しているが、彼はボランチの一角やインサイドハーフで力を発揮すると筆者は考える。トニ・クロース(レアル・マドリー/ドイツ代表)のように、後ろからのビルドアップに関わりながら味方にパスを散らしてリズムを作りつつ、時に一撃必殺のパスを繰り出す。現状ボランチは佐野海舟と知念が鉄板で機能している以上、そこを変える必要性もないため樋口は2列目のトップ下、右サイドの起用になっている。ポジション上どうしても狭いスペースで受けて前を向いたり、突破したりというところが求められるため樋口のストロングが活きないからこそ、良く見えないように見えてしまっているかもしれない。
ただいずれにせよ鈴木優磨と樋口雄太は、ポテンシャルを知っているからこそ優勝を争ううえで今日のような出来では困るのだ。

途中出場ではあるが出番が増加している師岡

これでリーグ戦は10試合を消化。5勝1分4敗の鹿島は5位。勝ち点16で首位とはまだ3ポイント差だ。今シーズンのJリーグは大混戦の様相を呈しており、首位セレッソ大阪(19pt.)から14位アルビレックス新潟(12pt.)までが僅か勝ち点7の差である。1つの勝利、1つの敗北で順位が大きく変動してしまう激戦の2024年シーズン。
アウェイで移動も多く、苦しかった4月。それでも大切なことをもう一度認識したガンバ大阪戦で得た勝利から、もう一度鹿島アントラーズが上昇気流に乗ることを期待したい。

text by 亀石 弥都
photo by 鹿島アントラーズ公式X

ハイライト

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