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【F1】コラム:カオスを生み出すレース運営。F1よ、これでいいのか。〈2023年第3戦オーストラリアGP〉

オーストラリアGPは結果的に「クレイジーな」レースとなってしまった。2021年第6戦アゼルバイジャンGPでも今回と同様にレース残り3周での赤旗中断から再開。たった2周のスプリントレースが繰り広げられた。あの時はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がタイヤトラブルによりレースから消え、ルイス・ハミルトン(メルセデス)も再スタート後のターン1でコースアウト。その結果、セルジオ・ペレス(レッドブル)が移籍後初優勝を飾り、セバスチャン・ベッテル(当時アストンマーティン)とピエール・ガスリー(当時アルファタウリ)が表彰台に登った。

レース残り2周、スタンディングスタートでのレース再開。
この人為的にリザルトへ意外性をもたらすようなアイデアはもう懲り懲りだ。

スタートから赤旗中断等含む3時間を最大レース時間としているF1の現行ルール。そのなかで残りわずか2周であっても、現地に駆けつけたファンへできる限り長くF1マシンの走行する姿を見せたい、接近した状態でのバトルを見せたい、という運営側の思いもあるのだろう。

しかし…
それまで積み上げてきたレースを否定しかねない、「ガチャ」要素の強いスタンディングスタートでの再開はもうウンザリだ。

バトルらしいバトルはなかったが、ハミルトンとアロンソの2位争いはハイライトの一つだろう。2人の王者が見せたレースこそF1の本当のおもしろさとは何かを示すものだった。

カルロス・サインツ(フェラーリ)はフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)とのアンラッキーな接触で5秒のタイム加算ペナルティを受け、4位でチェッカーを受けながら12位に降格。
アルピーヌ勢は同士討ちで2台ともマシンを壊し、ローガン・サージェント(ウィリアムズ)も冷えたタイヤをロックさせてニック・デ・フリース(アルファタウリ)の後ろから追突してリタイア。

アロンソは最終的に表彰台を獲得したが、このカオスを生み出す必要は全くなかった。

それまでの55周は一体なんだったのか。

「サステナビリティ」を掲げ、厳しい予算制限を設けているにもかかわらず、ドライバーへの危険性を高め、マシンを壊す可能性までも高めるようなやり方は理解できない。

このカオスがおもしろいという意見があるとするならば、それには全く賛同できない。

なぜなら、結果だけがレースのおもしろさではないからだ。

もし今日のレースがおもしろいというのであれば、わざわざ305kmのレースをする必要もない。

スタートでフェルスタッペンの前に出たメルセデス勢。ラッセルは運に見放されたが、今後に期待を抱かせる週末だった。

では今後、今日のレースのような事態が起こった場合どうするべきなのか。

個人的には、赤旗中断としたのであれば55周終了でレースを終了させても良かったと思う。もし各所でバトルが行われている中で赤旗中断、そのまま終了となったら残念なことになるがそれは仕方ないだろう。予選でも明らかにアウトラップが間に合わない残り時間では再開させないし、予選終了間際のアタック中に誰かがクラッシュして赤旗中断、そのまま終了ということはこれまでもあるからだ。

ただ赤旗中断のままレースを終了してしまうと、赤旗中断時の周回数から2周遡って順位が決定する。先頭を走る車が赤旗の原因を作るようなインシデントを意図的に作り出す可能性も拭えない。予選でもそうだが、赤旗中断の原因を作り出したドライバーに関しては結果から除外するような措置があっても良いと思う。

それか故チャーリー・ホワイティングがレースディレクターを務めていた時代のころのように、赤旗中断にせずSC先導のままレースを終了させるほうがよっぽどマシだ。

最後の最後までギリギリのバトルが見られなくなるとしても、結果に納得感が伴ってくるのは明らかだろう。

リバティメディアがF1を買収して以降、F1はいろんな変化が加えられて人気は戻りつつあるのは間違いない。しかし、どことなく「モータースポーツ」としてのF1が失われてつつある気がしてならない。ショー的要素、エンタメ的な方向にシフトし、「盛り上がったらOK」という方針にもうつる。

F1よ、このままで本当にいいのか。

text by 亀石 弥都
photo by Formula 1 Official Twitter

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