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【アントラーズ定点観測】#9 得点への執着。勝利を呼ぶJ初ゴール

アタッカーの血が騒いだのだろうか。
スタジアムにのしかかる重たい空気をガラリと変えたのは大卒ルーキーの一撃だった。

試合結果

鹿島アントラーズ 1 - 0 京都サンガF.C.

【得点】
〈鹿島〉
85' 濃野(←関川)
〈京都〉
なし

【警告】
〈鹿島〉
なし
〈京都〉
なし

スタメン

鹿島は仲間隼斗に代わり藤井智也が3試合ぶりの先発復帰。
京都はU-23日本代表に招集された主将の川崎颯太の代役に指名されて谷内田哲平と、トップの山崎凌吾が今季初先発。またアピアタウィア久がメンバー外となり宮本優太が3試合ぶりに先発起用された。

スタイルの似た両者の睨み合い

実は筆者にとって京都サンガF.C.というクラブは非常に縁がある。大学生時代に京都のホームスタジアムである「サンガスタジアム by KYOCERA」が竣工。建設途中には工事現場を特別に見学させてもらったことがあった。さらに様々なご縁でスタジアム管理のアルバイトを紹介いただき、大学卒業の2022年2月まで働いていた。その当時は京都の試合を一番よく観ていたのだが、戦い方は曺貴裁監督のチームとして当時も今も不変である。

全員がハードワークをして泥臭く戦う。激しい強度でボールを奪ってから縦に速く攻める。この鹿島戦でも試合開始から、相手が下げたボールには必ず前からプレスをかけ、球際でも激しく寄せてボールを奪おうとする。相手をサイドに追い込みそこに人数をかけて奪い切ってから速く攻めていこうとする京都に対して、鹿島はプレス回避のロングボール、サイドチェンジを使いながら前進を試みる形となった。特に右サイドのアレクサンダル・チャヴリッチと濃野公人からチャンスとなるシーンが多かった。2人が内側と外側を使い分けながら、そこにボランチの知念慶、トップ下の樋口雄太が絡みながらポケットに侵入していく。もちろん鹿島も守備の際には激しく球際に寄せて簡単に自由を与えない。京都にとって前半最大の決定機となった豊川雄太のシュートは、植田直通が気迫のスライディングブロックで弾き返した。

鹿島は後半開始からチャヴリッチと藤井の両サイドの位置を入れ替える。利き足と同サイドに配置することでよりサイドの縦突破からのクロスを中央へ多く送り込むことを狙った。加えて手前から斜めの対角線上に鋭いボールを送り、58分から59分にかけて濃野が2度にわたる決定機を迎えた。この積極的にフィニッシュへ絡んでいく動きが今後の伏線となったことは言うまでもない。

ついに生まれたゴール

得点を奪えない状況が打破されたのは85分のことだった。途中出場で左サイドに入った師岡柊生があげたクロスはファーにいた関川へピタリ。ヘディングで折り返したところに濃野が飛び込み、ようやく鹿島が京都のゴールをこじ開けた。

この決勝ゴールだが、鹿島は京都のクリアミスに助けられたといえる。というのも、後半あれだけ京都は押し込まれていたが、宮本を中心に粘り強く守れていたため、最後までスコアレスになる可能性が高まっていた。だが、この決勝ゴールへと繋がったその前を遡ると、京都が最終ラインからクリアするため「前方に」蹴ったボールを回収されている。この「前方に」クリアという表現、ただ前方に蹴るだけではいけない。ピッチは横にも広がっている。つまり前方の真ん中に蹴るのか、サイドに蹴るのかというところでいうと、京都は前方の真ん中に蹴っている。これだとほぼ間違いなく相手に回収され、即座に二次攻撃へと移る。逆にサイドへ蹴るとスローインになったり、距離が遠くなるため時間をつくることができる。
もし京都がサイドにクリアしていれば、関川はそのまま前線にとどまってはいなかっただろう。関川というターゲットマンがいたことで師岡も狙いを持ってクロスを上げることができた。そして、濃野はクロスが上がった時にボックスへ侵入し、折り返しの落下点を予測した動き直しで飛び込んできている。大津高校時代に10番を背負い攻撃的な選手だっただけあって、攻撃センスとゴールへの嗅覚が冴え渡ったのだろう。ホームサポーターの目の前で、連敗ストップそして3試合ぶりの勝利を届けた値千金の決勝弾となった。

ハイライト

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