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【アントラーズ定点観測】#2 要塞崩す。新シーズンは幸先良い滑り出し


昨季ホーム負けなしの名古屋グランパス。豊田スタジアムに乗り込んだ鹿島アントラーズは、開幕戦にして要塞を難なく崩してみせた。その立役者はセルビアからやってきた新加入の7番だった。

試合結果

名古屋グランパス 0 - 3 鹿島アントラーズ

【得点】
〈名古屋〉
なし
〈鹿島〉
19' 仲間(←植田)
47' チャヴリッチ(←安西)
62' 仲間(←チャヴリッチ)

【警告】
なし

スタメン

名古屋は3-5-2、鹿島は4-2-3-1を基本布陣とした。

統一された守備に、冴えたポポヴィッチ采配

名古屋の左サイド、すなわち鹿島の右サイドの攻防が勝負を分けた。アグレッシブな守備と、アグレッシブな采配が鹿島に勝利をもたらした。

名古屋が最終ラインからビルドアップする時は3-2-5で、久保藤次郎と山中亮輔の両ウイングバックがサイドの高い位置で張り、インサイドハーフの和泉竜司が前に出て鹿島の4バックに対して5枚で数的有利な状況を作る。鹿島は、安西幸輝→久保、関川郁万→パトリック、植田直通→キャスパー・ユンカー、濃野公人→和泉というマークの付き方になり、名古屋の左WB山中が構造上フリーになる。また、名古屋の最終ライン3枚の繋ぎに対しても、アレクサンダル・チャヴリッチと土居聖真の2枚では数的不利だ。
そこで鹿島は前線から名古屋の最終ライン3枚へプレスをかける時に右サイドハーフの樋口雄太がジャンプ。樋口が出ていけば、左WB山中のところに濃野が和泉を捨てて斜めにスライド。和泉のところには知念慶が下がって埋める形をとった。植田、関川はそれぞれユンカーとパトリックにつかせてフィジカルバトルで自由を与えさせなかった。佐野海舟はさすがの守備範囲の広さで要所を抑え、仲間隼斗は相手がボールを下げれば献身的な2度追い3度追いのハードワーク。PSMから見られたが、後ろ向きの選手にはしっかり捕まえに行くというチーム全体の意識統一はされていた。

J1通算100試合出場に花を添える2得点の仲間。
先制ゴールは「(植田)直通が競り勝つと信じて走った」とコメントしていたが、これも彼のプレーインテリジェンスの高さを示しているといえるだろう。

山中が高い位置を取る、それはつまり山中の背後、センターバックの左脇にスペースがあることを意味する。ポポヴィッチ監督は後半開始から、土居を下げて藤井智也を投入。スピードのある選手を配置し、攻撃時に山中の背後のスペースを使った縦に速いカウンターを狙い、守備時でもサイドの高い位置を取る山中を押し下げようとした。1点リードであるからこそ、攻守における効果は絶大だった。2点目は藤井のスピードで相手を抜き切ってからのグラウンダークロスが起点となっただけでなく、山中が前半に比べても攻撃に絡む回数は減り、結果的に途中交代へ追いやることに成功した。

新加入選手の躍動

頼もしいストライカー、チャヴリッチ。
鈴木優磨とのコンビを組んだ時にどんな変化が生まれるか。

チャヴリッチは1ゴール1アシストと早速結果を残した。また先制点のきっかけとなったコーナーキックを獲得したその直前シーンを振り返ると、チャヴリッチの守備が起点となっている。植田からの縦パスを井上詩音にカットされた瞬間、すぐに守備へ切り替えてタッチライン際でボールを奪取。残したボールは樋口がうまく体を入れてマイボールにすると、再びチャヴリッチの元へボールがわたりクロスへ。これが相手に当たってコーナーキックとなったのだ。数字には残らないものの、チャヴリッチは全得点に関与したといえるだろう。

また、大卒ルーキーの濃野もデビュー戦は上々の出来だった。山中や和泉との対峙では、いくらか競り負けることがあっても持ち前のスピードで粘り強く対応。また攻撃では外で張りつつも、瞬間的に中へ入ってWBとCBの間をダイアゴナルに裏抜けするシーンもあり相手守備を撹乱させた。昨季から常本佳吾、広瀬陸斗と主力右SBがチームを離れてしまったが、今季は濃野が頼もしい存在となりそうだ。

開幕戦は3年連続勝利。まだまだ攻撃での連携面でチャヴリッチとの息が合わないところもあるが、それでもこのクオリティを見せた。セットプレーも多種多彩で非常にワクワクさせられる。
今後がますます楽しみとなる新体制の船出だ。

text by 亀石 弥都
photo by 鹿島アントラーズ公式X

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