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子育てに悩んだら知っておきたい〜なぜ、馬との関わりが、子どもを成長させるのか


子育てに悩んでいませんか?

子育ては、常に悩むことの連続だと思います。 子どもが生まれて可愛い、成長が嬉しいと思う気持ちの反面、子どもに対して、こんな悩みはないでしょうか。

「感情のコントロールが苦手で、対人関係のトラブルが多い。」
「自分に自信が持てず、ものごとに主体的に取り組むことが少ない。」 

まさに、うちの子だと思われた保護者の方もおられるのではないでしょうか。 文部科学省が行った調査によると、このようなデータが出ています。

令和2年度「家庭教育の総合的推進に関する調査研究
~家庭教育支援の充実に向けた保護者の意識に関する実態把握調査~」

このデータによると、男性61.8%、女性76.4%が、子育てについての悩みや不安を抱えていると分かります。やはり、多くの方が子育てに悩んでいる状態なのですね。では、過半数もの保護者が、抱えている悩みを解決するには、どのような方法があるのでしょうか。

馬が、子どもの心身の発達に効果有り!?

いきなり、結論です。
私は、馬が子育ての悩みを解決する1つの方法だと考えています。 

そう考える理由は、研修先である三陸駒舎で見た、子どもの姿にあります。三陸駒舎は、岩手県釜石市の沿岸部から西に20km進んだ自然豊かな土地で、馬を中心とした暮らしをしながら障がいを持つ子ども達の福祉的支援をしています。

ここからは、実際に見た子どもの姿から、馬がどのように子どもの抱える課題を解決する力になるのかについて、お伝えします。 

①エネルギッシュな子が馬と触れ合うと…

1人目にお伝えしたいのは、小学校Ⅰ年生の光騎(みつき)さんの変化です。
光騎さんは、とても活発で運動神経が良く、雪山に行くと軽快に斜面を駆け上り、鬼ごっこでは三陸駒舎の敷地を目いっぱい使って、走り回ります。 

ある日、雨が降っているから合羽を着ることを進めると、「それは嫌だ!」と言って、叫びました。 1度嫌になると、そこから気持ちを切り替えて行動することは、苦手です。結局、その日は合羽を着ずに、室内で過ごしました。 

数日後、光騎さんから「笑馬(三陸駒舎にいるポニー。名前はえま。)のブラッシングをしたい。」とスタッフに投げかけがありました。1人のスタッフが光騎さんと一緒に笑馬のブラッシングをした所、光騎さんはいつものエネルギッシュな様子とは雰囲気が変わり、穏やかな表情で、丁寧に笑馬の毛並みを整えていました。

笑馬との穏やかな時間

スタッフが、「光騎さんのお陰で、笑馬の毛がとても綺麗になったよ。ありがとう。」と伝えると、光騎さんは、とても嬉しそうな表情を浮かべていました。ブラッシングを終えた後、光騎さんが「外で鬼ごっこをしたい。」と言いました。しかし、その日は、生憎の雨でした。 
光騎さんがどう反応するかなと思いながら、私は、「雨が降っているから、合羽を着て、外に出ようか。」と提案しました。 すると、光騎さんは頷き、自分から合羽を着始めたのです。

その行動変化に、馬が、光騎さんに穏やかな心を持つ時間を与えてくれたのだと実感しました。 そして、外で目いっぱい身体を使って遊ぶ光騎さんの表情は、とてもイキイキとしていたのです。 

②子どもが、進んで馬のお世話をする理由は…

三陸駒舎には、馬のお世話をする時間があります。お世話の1つに、馬の餌となる牧草の計量があり、その仕事をいつも選んでしている高校生の男の子、馨亮(きょうすけ)さんがいます。 

牧草の計量器と牧草を入れるための籠

ふと、なぜ馨亮さんが、黙々とお世話をしているのか気になりました。
そこで、馨亮さんに「なぜ、いつも牧草の計量をするの。」と聞いてみました。 すると、返ってきた答えはこの通りでした。 

「ここでは、自分で自分の役割を見つけるんです。」 

この言葉を聞いた時、馨亮さんが馬のお世話をすることを通じて、確かにここにいる、かけがえのない自分という存在を認識していることを感じました。 
そして、その後も誰に言われた訳でも無く、熊手を使って、地面に落ちた牧草を集めていたのです。
 その姿は、自信に満ちて、自分から新たなものごとに取り組む主体性に溢れていました。

馬に牧草をあげる馨亮さん

馬が子どもに教えてくれることとは

馬との関わりによって、子ども達には、とてもよい影響が表れ、冒頭に示した保護者の方が抱える悩みの解決に繋がります。 

「感情のコントロールが苦手で、対人関係のトラブルが多い。」
→エネルギーの発散やコントロールの仕方を学んで、落ち着きを持つようになる。また、周囲の子ども達とともに馬のお世話をする共同作業によって、コミュニケーションの取り方を学ぶ。 

「自分に自信が持てず、ものごとに主体的に取り組むことが少ない。」
→馬のお世話を通じて自己有用感が高まることで、主体性を持った行動をするようになる。また、二次障害の中でも割合の高い情緒障害の特性を抑制することに繋がる。

発達障害のある児童生徒は,育ちの中で対人関係や学習場面で失敗経験が多くなりがちで(小林, 2019),適切な支援を受けられないまま育った場合 には自尊感情・自己肯定感が十分に育たず,二次障害を示すことが指摘されている(小林,2015).

秋田大学教育文化学部教育実践研究紀要 第45号 2023年

保護者の方や子どもが抱える悩みは、馬とともに乗り越えられる可能性を秘めています。 そして、馬は、子ども達が今後生きて行く上で欠かせない
「生きる力」を授けてくれる、かけがえのない存在なのです。

ごあいさつ

私の三陸駒舎での研修が終わるにあたり、本コラムも最後となりました。第1~2回で馬が人に自信を与えてくれる理由について。3回目となる今回で、馬が子育ての悩みを解決する力があることについて、お伝えしました。 
私自身、ホースセラピーに対して半信半疑で、知識も無い所から始まった55日間の研修でしたが、馬から数多くの大切なことを教わりました。
小学校教員として働いていた私ですが、今では、馬が私の先生です。

このコラムを通じて、皆さんに少しでも馬のよさが伝わっていれば幸いです。そして、実際に馬に会ってみたという方がいれば、これより嬉しいことは、ありません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

(JICAグローカルプログラム研修生 江原崇裕)


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