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「判断速すぎ」2022 rd.6 スペインGP F1問わず語り #6(無料)

 フライアウェイが一段落し、めでたくヨーロッパラウンドの開幕と相成った。プレシーズンテストでおなじみのバルセロナ・カタルーニャサーキット。1キロ超のロングストレートも今やそれほど珍しくはなくなったが、ヨーロッパラウンド開幕戦にふさわしい教科書サーキットでのグランプリだ。

 スペインの日射しがサーキットに降り注いでいた。筆者はスペインに行ったことがないばかりか、海外に出たこともないのだが、テレビ画面に映るコントラストの非常に高い日なたと影の対照は、いかにもスペインのそれである。専門用語でいうピーカンというやつ。35度以上の猛烈な暑さに襲われていた。

 F1はファンあってのもの。スタンドを埋める、テンションが高くリズムが聞こえれば身体を動かさずにはいられない人々を見ているとその感は強まる。昨シーズンは無観客で行われたものの、異例のチャンピオン争いの白熱により無観客の寂しさは、テレビ越しにはそれほど感じなかった。しかし、全力でグランプリをエンジョイする人々を見るにつけ、やはりファンを含めてF1だと痛感する。日本GPのすばらしさはそこにもあるのだろう。

  前段はこのあたりにして、スペインGPを振り返ってみよう。

予選

・静かなQ1、Q2

 Q1、Q2までは静かな進行となった。注目すべきは蒼きマタドールことアロンソのQ1ノックアウトか。中団勢は非常にシビアな争いとなっているため、何か歯車が合わなければすぐにでも置いて行かれてしまう。
 ユウキツノダは13番手。苦戦が予想されたが、終始ガスリーを上回るパフォーマンスを見せた。段々と角ちゃんへの期待が確信に変わりつつある。

・動きのあるQ3

 最初のアタックでフェルスタッペンが驚きのラップタイムをたたき出す。この人はやはり特別だ。対するルクレールはセクター2で圧倒的なセクタータイムを記録するが、セクター3でスピン。

 このスピンが無ければマックスを上回っただろうか。勝負は最後のアタックに持ち越される。
 白熱のアタック合戦となったラストアタック。唯一1分20秒を切ったのは、ルクレールだった。圧倒的なタイムでテーブルの一番上に陣取った。あとからアタックするのはマックス。しかし、そのアタック中パワーロスに見舞われる。このパターン、少し前にも見たような。

 マシントラブル抜きにしたふたりのガチ対決が実現してほしいものだ。

決勝

・早くも諦めムード

 オープニングラップ。ルイス・ハミルトンが、余りにもアグレッシブすぎるラインをとったマグヌッセンと接触し、19位までポジションを落としてしまう。ここで、このF1界で最も悲観的な男が、皆を奮い立たせる気の利いたコメントをするはずがない。諦めムードを漂わせ、走っても無駄くらいのことを口走る。しかし、チームはどうだったか。巻き返しを「信じる」というよりは、論理的かつ数学的に可能性をはじき出し、計算づくでポイント獲得のチャンスを伝える。計算早すぎ。
 そして、結果は?ハミルトンは見事なペースを見せ、7位入賞。忘れかけていたが、彼は最も悲観的な男であると同時に、最も裏腹な男でもあったのだ。

・風が吹くターン4

 風はあるかと問われれば、麻雀ロボこと小林剛なら「空気の流れは、あるでしょうね」と答えるだろう。しかし、午後の強い日差しの降り注ぐカタルーニャサーキットのターン4で、どんな風が吹いていたかはわからない。ただ、トップチームの名手二人が同じようにしてコースオフを喫したシーンを見る限り、その可能性は極めて高いだろう。
 7周目でサインツが、9周目でフェルスタッペンがターン4で大きなタイムロスをする。その後、ポジションを落としたフェルスタッペンは、DRS作動ボタン連打も実らず、いやその連打が災いして、ラッセルに引っ掛かり、トップとの差を広げられてしまう。小林剛なら言うだろう。「でも、思うように動かなくて連打してしまう気持ちわかるよね」。

 ラッセルのディフェンスも見事。

 これで、ポールポジションからスタートを決めたルクレールは非常に楽な展開になったのだった。だった。

・レースが大きく動く

 フリーピットストップも決め、これ以上ないほど盤石の態勢を作り上げたポールシッター、ルクレールのマシンが突然パワーを失う。信頼性問題に各チームが苦しむこの感じ、どこか懐かしい。
 これでレースが大きく動いた。

・判断速すぎ

 ラッセルに引っ掛かっていたフェルスタッペンが動く。

 トラック上でのオーバーテイクを諦め、3ピットストップに戦略を変更し、ソフトタイヤで戻る。まだ、レースディスタンスの半分もいかない段階での見事な判断だった。驚異的なレースペースで追い上げに成功し、遂にラップリーダーに立つ。そして、チェッカー。

 計算早すぎ。F1の速さはマシンの速さだけではないのだ。

・不満の残るチェコ

 ファステストラップを獲得し、素晴らしいレースを見せたペレス。ストラテジーの違うマックスにポジションを譲り、1‐2フィニッシュに大きく貢献した。しかし、チェコは不満をあらわにする。それもそのはず、フェルスタッペンがラッセルの後ろで苦しむ間、よりペースのあったチェコは、ポジションを入れ替えてもらえず、ただマックスの後ろで待っているしかなかった。しかし、レース終盤、後ろに迫るフェルスタッペンにポジションを譲るよう彼に指示が下ったのだ。チェコは理解があるゆえに不満を口にした。
 ペレスは好きなドライバーだ。だが、あえて厳しいことを言えば、「悔しかったら、予選で前に出ろ」。それだけだ。

・仕事をした角田

 決して競争力に富んだマシンを与えられていたわけではない、このグランプリの角田。しかし、着実なペースで集会を重ね10位でポイントをゲット。ガスリーに予選、レースペース、リザルトで完勝した。この仕事が出来れば、F1に将来を見いだせるだろう。数年で消えるドライバーではないことを証明しつつある。

 ポイントランキングでは、現在ガスリーを抑え12位。ちなみにガスリーは13位。

 さて、次はモナコGP。そう、最高につまらなくて、最高に楽しいグランプリの週末だ。モンテカルロで会おう。

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