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高すぎるバリュエーションで資金調達するのは危険である!!

スタートアップが高いバリュエーションで資金調達することには分かりやすいメリットがあります。より多くの金額を調達しつつも、株式の希薄化を抑えることができるので、自社の所有株式を多く保つことができます。
一方、できるだけ高いバリュエーションでの調達を目指すことにはデメリットもあります。

高すぎるバリュエーションで調達することのデメリットとは!?

VC側から見ると、バリュエーションが低いほうが望ましいです。
そしてシード投資家の方々は最も早いラウンドで投資し、その後いくつものラウンドを見届けることになり、株主として、会社がより高いバリュエーションで調達できるように支援するというバイアスが働きます。
一方で経営者側から見ると、高い方が良い場合があります。バリエーションが高いと、少ない株数で多くの資金を調達できますし、上場する際にも成長可能性をアピールすることができます。
そこでバリエーションが高い場合のデメリットを見ていきます。

次のラウンドの調達が難しくなるかもしれない

スタートアップの理想は、業績や社内アウトプット等が右肩上がりに成長していくことです。顧客の数や採用が増えれば、調達額も増えていきますが、しかしこれはきれいごとであり、常に右肩上がりになることは稀です。
スタートアップ界における「ハード・シングス」はどの会社にも起こり得るものであります。

スタートアップのバリュエーションは、その会社が到達し、超えていくであろうベンチマークを表しています。
高いバリュエーションで調達すると、次のラウンドの投資家には、会社の成長を保つため、さらに高い評価額で投資することが求められます。もし全てが上手くいき、次のラウンドの投資家が以前のバリュエーションを基に設定したマイルストーンを達成するか、上回ることができれば、何も心配することはないです。
しかし、どうしようもない事態が起きる可能性もあることを忘れてはいけません。投資家の期待をすべて大幅に上回ったとしても、市場全体が不況に転じ、資金が引き上げられてしまうかもしれません。

経営をしてても物事はなかなか思い通りに進みません。これこそが、高すぎるバリュエーションにおけるリスクになるのです。
新しい投資家が、前回と同じ評価額で投資するか、それとも、さらに低い評価額で投資することもかなりの確率であり得ます。
一部のケースでは、フラットラウンドやダウンラウンドを要求しにくいため、投資すること自体を避けてしまうこともありますが、多くの投資家は、より高いバリュエーションで調達できないことが、マイナスのシグナリング効果を生むリスクを理解しています。

期待値を過度に高めてしまうかもしれない

スタートアップの成功は、その会社が人々からどう見られるかに大きく左右されます。勢いがありそうに見えるスタートアップには、人々が入社したり、投資したり、協業したいと思います。
勢いがありそうに見えれば、顧客も、採用候補者も、投資家も集まります。それによってさらに勢いがつき、より多くの顧客、採用候補者、投資家が集まる。というサイクルが回っていきます。
勢いをものにすることができれば、成功が成功を呼ぶようになります。この勢いの指標のひとつとなるのがバリュエーションになります。
その為、フラットラウンドやダウンラウンドになる可能性が出てくると、周囲からの評判も失墜してしまいます。
顧客は、会社が大丈夫かどうか心配になりますし、社員の信頼も失い、投資家から向けられる目も変わってきてしまいます。

ここでWeWorkの事例を紹介します。
人々がWeWorkに感じていた勢いは、バリュエーションとともに急上昇していました。しかし、WeWorkは過度にアグレッシブな経営を行い、やがて厳しい現実に直面しました。
似たような事業を手掛けるTKPとRegusの時価総額が両方とも数千億円程度であることを考えると、WeWorkにもその程度の価値があるかもしれない、と考えても大げさではありません。
しかしソフトバンクのビジョンファンドから投資を受けたWeWorkには、5兆円ほどのバリュエーションが付いたのです。その後WeWorkが厳しい現実に直面した際、ネガティブな報道がさらにネガティブな報道を呼び、負のスパイラルを巻き起こしました。
WeWorkは、数千億円の評価額で上場することもできたでしょうし、そうであれば成功例として称賛されていたかもしれません。
しかしWeWorkは、ギリシャ神話のイカロスのように、太陽の近くを飛びすぎたせいで、羽をとめた蝋を熱に溶かされてしまいました。

会社を売却するのが難しくなるかもしれない

あなたの会社に投資をした投資家はもちろん、その投資が将来何倍にもなることを期待しています。
つまり、あなたが決めたバリュエーションは投資家にとって、どの価格で売却すべきかのベンチマークにもなってきます。
例えば、100億円のバリュエーションで調達したのち、同程度の額の買収オファーを受けた場合、投資家が売却を拒否するということもあり得ます。ファウンダーは売却したいのに、投資家が首を縦に振らない場合、関係者全員にとって不幸な状況になっていきます。

バリュエーションを決めるにあたって大事なのは、株式の希薄化を避けつつ、将来の調達における選択肢を残す、という2つのバランスをうまく取ることが大切になってきます。
バリュエーションを高くするということは、今後もこのような良い好況が続くことに賭けるということになります。
一方で低いバリュエーションのほうが、さまざまな状況に対応しやすくなります。
また、資金だけでなく、残余財産優先分配権や参加型・非参加型など、投資契約のほかの条項も重要ですし、会社に価値をもたらしてくれる投資家を迎え入れることはとても大切になります。
バリュエーションは結局のところ、この先どんな投資家と歩んでいくかを決める材料のひとつでしかないのです。
その為、バリエーションが高いといいこともありますが、デメリットもある為、今後の3ヵ年程度の経営成績をしっかり鑑みて慎重になることが重要です。
バリエーションを評価する際に、皆さんのビジネスの手助けになれば幸いです!!!

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