古い本に聴く
資料室の書架整理をした。
古い本を閉架書庫へ移しながら、世代交代をした本の背表紙を追う。
穏やかな装丁、シンプルなフォント、少し黄みがかった小口、見てるだけでノスタルジックな気持ちになる。
気になった一冊を手にとりページをめくる。
控えめに届く古本の独特な匂いが、また懐かしさを誘った。
第一刷は一九八九年、「わたしが小学生の頃の本だ、母はこんな考えの時代に子育てをしていたのか」など遠い記憶に思いを馳せる。
いまはもう、人生を、日常を、昔話を気軽に話してくれる大人たちが近くにいない。その逆に聞かれることの方が多くなった。
なんだか最近思う。「そんなことしちゃだめだとか、どうした元気をだせとか、いいじゃないか」と叱ったり慰めたり、背中を押したりして欲しいと。
子どもの頃、聞いたけど忘れてしまったお小言や一緒に笑った話、小難しい話などを、もういちど聴きたいものだと。
現実には難しいが、それに近い時間に変えてくれるのが古い本だ。足りないものを届けてくれる。
著者の言葉が祖父になったり、母になったり、恩師になったり、姿をかえてやさしく寄り添ってくれるような気がする。
今朝は、ことわざの本、通勤電車で黄色いページをめくる。
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