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『鼻』芥川龍之介 「読み物として面白いよ」と、高尚な読書家風に

○はじめに

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『鼻』芥川龍之介

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【芥川龍之介を語る上でのポイント】

①『芥川』と呼ぶ

②芥川賞と直木賞の違いを語る

③完璧な文章だと賞賛する

の3点です。

①に関して、通の人がモノの名称を省略するのはどの分野でも適用されます。文学でもしかり。「芥川」と呼び捨てで語ることで、文学青年感1割り増しです。

②に関しては、芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学に贈られる賞です。それ以上は僕もよくわかりません。調べてください。

③に関しては、芥川はその性格上完璧を求めるが故に、短文が多いです。僕個人短くて凝ってる文章が好きなので、まさに芥川の文章は僕の理想です。


○以下会話

■短くて完璧な文章

 「短い小説か〜。そうだな。芥川龍之介の『鼻』がオススメかな。結構有名な小説だから聞いたら分かるかもしれない。10ページくらいしかないから本当に一瞬で読めて為になる面白い小説だよ。

『鼻』はね、鼻が長いというコンプレックスを抱えているお坊さんの話なんだよ。そのお坊さんの鼻は15cmくらいでぷらーんって唇に被さるまで垂れているから、ご飯食べる時は弟子にしゃもじで鼻を持ち上げてもらって食べてるんだよ。そんな鼻が嫌で嫌でしょうがなかったんだ。いつも鏡の前で鼻が小さく見える角度を研究して、よその寺に訪問してお坊さん同士で挨拶する時も会話するフリしながら鼻ばっかり見て、自分より鼻がでかいやつはいないか、せめて自分と同じ大きさのやつはいないか、目を光らせてるんだよ。そのくらい気にしているけど、プライドが高いから他人には自分が鼻を気にしてることを知られたくなくて、何ともないフリをしているんだよ。だけど何気無い談笑で鼻というワードが出てくるだけで、自意識で赤面しちゃうくらいなんだ。お坊さんのくせに俗物っぽくて随分人間臭いよね。情けなくて笑っちゃうけど共感できるよね。

そんなある日、弟子が、有名なお医者さんから鼻を小さくする方法を教えてもらったって言ってきたんだよ。お坊さんは興味津々で飛びつきたいんだけど、周りには鼻なんて気にしてないって装ってるから「ふーん、そんなのあるの」って最初は関心を示さないんだよね。だけど、しょうがないからやってやるかと、弟子が聞いてきた方法を試してみるの。それが、鼻を熱湯に数分入れて、お湯から出して、鼻を思いっきり足で踏むっていう方法なんだよ。お湯に数分浸けて、足で踏んでもらうと、鼻の毛穴からぷっくりと黄金の油がうねうね出てくるの。それを毛抜きでとって、何回か繰り返したら、みるみる鼻が小さくなって、普通の人の大きさになったんだよ。

喜んだお坊さんは短くなった鼻を触りながらニコニコで外を歩くんだよ。だけど、どうも周りの反応が変なんだよね。鼻が大きい時もその鼻を見て笑われていたんだけど、短くなってからの方がより一層笑われるようになったんだよね。それも以前より嫌な笑い方なんだよ。弟子にも影で笑われる始末で、せっかく短くした鼻だったんだけど、昔の鼻に戻って欲しいと思うようになったんだよね。そしたらある日、また鼻が元どおりの大きさになってて、お坊さんは安心して長い鼻で生活したんだ。これで終わり。面白いよね。

■人間の嫉妬心

『鼻』のポイントは二つあって一つは人間の嫌な嫉妬心だね。弟子を含めたお坊さんの周りの人は、長い鼻に同情する心がありながらも、少し楽しんでいて、いざ短くなってお坊さんが幸せそうにしてるところを見ると、物足りなさ、幸せを妬む気持ちが出ちゃうんだよね。あまり好きな言葉じゃないけど、今の言葉で言うと「メシウマ」みたいな、人の不幸を楽しむところがあるよね。ちなみに夏目漱石が当時『鼻』を絶賛してて、特に褒めてた部分がこの醜いエゴの描写なんだよ。

■願いは叶うと色褪せる

もう一つのポイントは願いは叶うと色褪せるっていうところ。鼻を小さくしたいと願ってても、いざ実現すると思い描いていた世界との乖離で冷めてしまう。これは芥川が好きなテーマで、『芋粥』も似たテーマで書かれた話なんだ。長年描いていた夢も、実現してしまうと何だか物足りなく感じてしまうという感覚だよね。芥川はこういう甲羅の中の人にあまり見せたくない部分を書くことが得意なんだよ。教科書に載るのも納得だよね。

■芥川の嫌な所、説教くさい

ただ、どうしても芥川の小説は昔話感が強いなって思っちゃうんだよね。まず失敗談があってその後格言がある構成が、花咲か爺さんとか舌切り雀レベルのお伽話に読めてしまうんだよね。そこが良いのかもしれないけど、有名な文豪なのに、夏目漱石とか太宰治に比べてファンが少ないように感じるのは、このジジくさい説教じみた感じが先輩ヅラで鬱陶しいのかなって思うよね。教訓聞きたいんじゃなくて単純に笑える面白い小説が読みたいんだよってね。だけど文章は上手でその格言も的を得てるから、是非読んでみて。」



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