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【ネタバレあり】「ドライブ・マイ・カー」がひたすら良かったので感想備忘録

歴代マイベスト10に入るくらい超良かった…
3時間と長尺だったが、本当に一瞬だった。

妻を失って深い喪失感を抱いている演出家の主人公が再生に向かう希望の物語。

舞台俳優であり演出家の主人公は、脚本家の妻と幸せな日々を送っていたが、突然妻はある秘密を残して死んでしまう。
2年後、広島の演劇祭で演出を任されることになった主人公は、喪失感や後悔を抱いたまま暗い過去を持つ寡黙な専属ドライバーや、役者、現地スタッフとの関わりながら、自分の内面に向き合っていく。

妻が残した主人公のセリフの練習用に台本を読み上げるテープと主人公の対話や、舞台の物語が現実世界の物語とシンクロしており、重層的に物語が進んでいく様は、神がかり的な脚本力にただただ脱帽。

高槻(岡田将生)が人を実際に殺してしまって罪の報いを受けるという描写は、主人公とみさきが犯してしまった主観的には人を殺してしまった罪の意識との対比を鮮明にしている。
さらに、物語終盤になるまで2人は実際にその主観的な殺人による報いを受けることをどこかで期待していたように思える。
そうだからこそ、高槻が語った妻の物語の最後に女が罪の報いを得ようとしていたことに主人公はひどく動揺していたのだろう。


高槻の以下のセリフがとても刺さった。

「でもどれだけ理解し合っているはずの相手であれ、どれだけ愛し合っている相手であれ、他人の心をそっくり覗き込むなんて、それはできない相談です。そんなことを求めても自分がせつなくなるだけです。しかしそれが自分自身の心であれば、努力さえすれば、努力しただけしっかり覗き込むことができるはずです。ですから結局のところ僕らがやらなくちゃならないのは、自分の心と上手に正直に折り合いをつけていくことじゃないでしょうか。本当に他人を見たいと望むなら、自分自身をまっすぐ見つめるしかないんです。僕はそう思います。」


それにしても西島秀俊、三浦透子、岡田将生はじめ、役者陣は素晴らしい名演技だった。

主人公ほどの喪失は抱えていなくても人は誰しも何かしらの欠落と後悔を抱えながら生きているので、この映画はそういった自己の蓋をしていた暗部にしっかりと向き合う契機を鑑賞者に与えるとてもパワーをもった作品だと思った。

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