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備前地域の信仰まとめ2

岡山県は備前地域のおもに南側でよくみられる民間信仰についてまとめておく。
前回の続きになります。

⑦道切り

 道切りは各地で様々な形態が見られる。備前でもよく見られるが、その形態は祈祷札を竹に挟んで集落の境界に置くというものがスタンダードである。集落の境界は必ずしも大字界とは限らない。
 祈祷札の内容は村内安全や五穀豊穣を祈願したものが多く、近隣の神社によるものや、講が設置した四天王による守護札も存在する。
 札の交換のタイミングは地区によってさまざまだが、竹を刺す地点に制限のない場所では基本的に以前のものは回収せずに放置しておく。

「境内安全 諸災消除」と書かれた祈祷札
地区の北側に設置された毘沙門天の祈祷札

⑧塞の神

 全国的にみられる塞の神は岡山県でも見られる。備前でも双体道祖神は見られるが、最も多くみられるのは地蔵様である。他に地神様や牛神様を塞の神としているところもある。
 塞の神には○○の神様という信仰が多く、その信仰には伝承が付随している。例えば、「行き倒れになった旅人が『私を祀れば腰から上の病を治そう』と言ったので祀った」ものや、「塞の神様には片足だけ草鞋を供えるが、それは昔塞の神様と土公神様が喧嘩をしたときに片足を切り落とされてしまったからである」といったものなど様々ある。

地蔵菩薩と光明真言塔
塞の神を祀る塞神社(左側) 咳の神様として信仰されている
双体道祖神 かつては草鞋が大量に供えられていた

⑨牛神様

 吉備では特に農耕に使われる牛馬を大事にしていた。そのため牛馬の供養塔なども多いが、牛神はその中でも顕著なもののひとつである。
 牛神の場所は地神塔の傍など様々であるが、しっかりした祠が置かれていることは少ない。神社に合祀されたものを除けば、多くは牛神と彫られた石碑、瓦質祠と大きめの平らな石とその上に陶器の臥牛が置かれているだけである。かつては牛馬の安全を願って牛像を奉納していたが牛を農業に使わなくなった今日では忘れられつつある。
 牛神社の中でもっとも有名な吉永町の田倉牛神社ではもともとの牛馬の病気平癒の願いから飛躍して家内安全、五穀豊穣、商売繁盛などを祈願するようになっている。

牛神社と奉納された臥牛
瓦質祠の中に詰められた臥牛

⑩荒神

 ここで紹介する荒神は主にカブ荒神などと呼ばれるもので、各地区に一社小祠が設置されているものである。三宝荒神と呼ばれることも多い。ここに祀られているのは奥津彦命、奥津姫命、加具土命あるいは火産霊命である。
 竈の神として信仰されていることが多いが、その地区やカブの守護神として信仰されていることもある。年に二回ほど祭祀が行われる。
 寛文六年に池田光政により淫祠邪神として廃祀された場所も少なくない。

荒神社

⑪祖師堂(備前法華)

 備前法華の影響を受けている場所では髭文字で南無妙法蓮華経と彫られた題目石と、大覚大僧正と彫られた石碑のセットを見ることがある。題目石が日蓮宗の祖師日蓮上人を表徴する祖師堂の本尊であり、大覚大僧正とは西国へ日蓮宗を弘通した京都妙願寺の二世妙実上人のことである。

左から地神碑、題目石、大覚大僧正の碑

⑫番神堂(備前法華)

 日蓮宗の寺院や、寺院があった場所には番神堂が建てられている。番神堂には三十番神という毎日交代で国家や国民などを守護するとされる熱田神宮から吉備津神社までの三十柱の神が祀られている。法華経守護の諸天善神とも言われる。
 石に番神と彫った番神様と呼ばれるものも残っている。

三十番神堂(大林寺)