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連続事例検討会:第2回「終末期」

介護のオンラインコミュニティSPACE内で行われる「おとぎ塾」は、地域と職種を超えた連続事例検討会。支援困難な事例を、介護に関心ある様々な専門職や他業種が熱く緩やかに語り尽くす“サードプレイス”の一企画。第2回のテーマは「終末期」だ。

参考図書はこちら

通常の事例検討会は、同じ肩書きの専門職が4〜5人、かける熱量もまちまちといえる。
しかし、2回目を迎えたこの場に、自主的参加を果たした“途方に暮れない者たち”はトータル14名、情熱は果てしなくあると断言できる。

家庭の事情その他諸々で、顔出し・聞くだけ専門(聞き専)と参加の仕方も多様。そんな聞き専さんも、チャットで意見を打ちこんでいる。
様々な形で、つながる。そのうち、手話母語者や英語話者も参加してくれるんじゃないか?と勝手に妄想を膨らませながら、今回の記録をここに記す。

テーマは終末期

前回がボス戦なら、今回はいきなりのクライマックスだ。Nintendo Switchのゲームなら「チュートリアルを今すぐ出せ!」と激怒されても仕方ない構成である。

事例の詳細はこうだ。
73歳男性、肺がん末期(家族にだけ余命宣告あり)、1年前妻に先立たれ、娘夫婦との同居を開始。
思うように動けなくなり、別人のように感情を露わにするようになった。
同居の娘さんは「本人に告知はしません。倒れてでも私が看取りたい」との思いがある。しかし、娘の夫は入院をさせたい(親族の意見が定まっていない)。

担当する支援者の悩みは、主に2点、①サービスが定まらない。②問題は山積なのに時間ばかりが過ぎていく。

今回の参加者は、前回とやや編成が異なる。シンクタンク勤務で介護福祉を外部から支える会社員、福祉用具専門相談員、特養の施設長、訪問介護のサービス提供責任者などが加わった。

▶参加者一覧
社会福祉士(地域包括支援センター)/介護福祉士(訪問介護…サービス責任者、特別養護老人ホーム…施設長、通所介護事業所、緩和ケア病棟)/言語聴覚士/理学療法/看護師/認知症専門の医師/公認心理師/IT企業(ビジネスケアラーに関心)/シンクタンク 等

特に今回印象に残ったワードをいくつか取り上げる。

【本人の死の捉え方】事例に本人の視点が欠けているのが寂しい。
【家族の思い】親しい人の死は、自分一人の意見では如何ともしがたい。
・相談を専門とする者としては、フワフワした信頼感はあるけれど、本当に関係性が作れているのか?という思いが常にある。
・福祉用具専門相談員としての気づき:一歩引いて状況をみられるし、物が介在すると肚が決まる。
・自宅で看取ると決めたうえで、本人への告知がないと、末期でもできる治療の選択肢が狭められて厳しい。
・「告知していません」前提だとヘルパーとして身構えてしまうし、秘密を持ちながらのケアは緊張が走る。

事例“終末期”で出された発言集

最後に、参考図書「支援困難事例と向き合う」の著者・岩間先生のまとめ

岩間先生の言葉が主催者の口を借りてよみがえる。要約させていただく。
・本人の死に至る不安と揺れる思いを理解して支える。
・家族側の、死を支える不安(関係性の永久喪失と必ずやってくる後悔)への眼差しも必要。
・援助者には「何があっても貴方を支え続ける」という覚悟根拠に基づく援助の実践が求められる。

主催者である こじまさんの、不空羂索観音の如き“一切衆生を掬い取る”ファシリテーションにより、超過時間があったものの今回も無事に終了した。

現場ケア職である記録者としての所感
・「専門用具を介する関係性は、強固で客観性がある」この気づきから、“考える杖”という言葉を深掘りしていきたい。
・「関係性の構築について、キュアは先出し・ケアは後出し」という知見から、常に抱くべきは、別々にアプローチするのではなく補完的に動くということ。
・「死にゆく期間が定められた、或いは死にゆく事を自覚した時、社会から除外されたとする潜在的な意識」もバリアであろう。
・介護職は、正解のない問題と関わる最前線にいる。ゆえに、失敗し続ける職種である。だから、しくじりの中から成功の糸口をつかみ続けようとする人材でありたい。

死は、これまでも、おそらくこれからも人類が克服できない事象であろう。
それでも、考え続けていく事は決して無駄ではないと信じてやまない。

今後の予定

介護のオンラインコミュニティ「SPACE」について

「SPACE」は、“介護”に関心を持った仲間が集うオンラインコミュニティです。組織や地域を越え、前を向く活力が得られる仲間とのつながりや、 自分の視点をアップデートできる新たな情報や学びの機会を通じて、 一人ひとりの一歩を応援できるコミュニティを目指しています。入会できるタイミングは、毎月1日と15日の2回です。詳しくは以下をご覧ください。

書いた人
もっちぁん
現場で働きつづける介護福祉士。特別養護老人ホーム勤務(グループリーダー)、他に介護支援専門員と社会福祉士を名乗れる。

※おとぎ塾では、『支援困難事例と向き合う』(中央法規)に掲載された18事例を元に、オンラインコミュニティ“かいスペ”の有志メンバーが意見を出し合う検討会を開催。本記事はその様子をレポートしています。

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