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マンガ学と休む

 最近訪問した柳宗悦の没後60年を記念した展示「民藝の100年」では、民藝運動が、作品だけでなく雑誌「民藝」というメディアを使った批評文化を合わせもっていた事が民藝運動を深化させる契機であったという分析が示されていた。全ての芸術等の分野における、全ての批評はくだらないという言説にも理解がある。だが、ある表現が批評文化なしに深化することはないのではないかと思う。

 本作品は、スコット・マクラウドという漫画家であり批評家である作者による、漫画批評である。特徴的なのは、漫画を使って漫画表現を解説しているところだろう。その他本作品の基礎情報は巻頭の訳者の序文が参考になるので引用させていただく。

欧米のみならず世界中の大学の学部や大学院において教科書や読書課題の1冊として選ばれている。

なるほど、わりと学術的な分野でも使用されているとのこと。あまりに無意識に他方で、アメコミと日本の漫画とバンド・デシネと一見して異なる進化を遂げてきた漫画文化を整理・分類してくれるのはありがたいし、映画の世界と同じように漫画批評の中から新しい漫画表現が生まれることを期待したい。

また、本作品は、一度(一部?)翻訳がされていた長い間絶版になっていて、この度、再度新訳として出版(*2022年現在既に絶版?)されたものであるらしい。以下のコメントを引用しておく。

1998年に出た美術出版社による本書の最初の翻訳版『マンガ学』から22年の時を経て「新訳版」を出す理由には、・・・・古書店で高価格にて売買され入手が困難であること、・・・・マンガ研究を巡る言説が著しく変化したことが挙げられる。

海外漫画の邦訳がすぐに絶版、中古で高額取引というのは本当にあるあるで、後追いで海外漫画を掘ろうとするときに本当に苦労することだと思う。私もプレ値で買いまくり本当に苦労をした。

また、マンガ研究の言説が知らない間に進化していたのはよかったなと感じる。これだけ毎年たくさんの作品が生み出されるのだからもっと、漫画研究の成果が一般の人にわかりやすい形で発表されてもいいのかなとは思った。

 本作品は、漫画表現を色々な形で分析・紹介している。

例えば、以下のページで言えばコマとコマのつながりを6パターンにわけて紹介している。こういう分析的な視点で漫画をみたことがなかったので目から鱗だった。しかも、このあとのコマで日・米・欧の漫画家においてどのようなパターンでのコマ運びが多いか解説をしている。それぞれ特徴があってとても興味深い。

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その他にも、絵柄を三角形を使って分析している。下記のページの次のページに様々なキャラクターが分類される様は、まさに圧巻である。

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この他にも、時間軸の表現の仕方など漫画を読む上で意識をしていなかったが、脳が無意識に行なっていた、いわば漫画文法を優しく解き解してくれている。是非、洋の東西を問わず漫画を読む際の羅針盤になるし、1人漫画批評なんかもできちゃうかもしれない。そんな可能性を秘めた1冊である。

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