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鉄で造ったベルベットの手袋のようにと休む

 今回紹介するのは、米国の漫画家ダニエル・クロウズの作品である、「鉄で造ったベルベットの手袋のように」だ。ダニエル・クロウズの作品については、以前、ペイシェンスという作品を紹介した。

# 本作品は、ダニエル・クロウズの最初期の作品で、荒々しさと禍々しさが詰め込まれた作品だ。本作品のおおまかなストリーはこんな感じだ。成人向け映画館で映画を見ていると、上映されている成人向け映画に別れた妻が主演していることを発見する主人公のクレイ。車でその映画を撮影したプロダクションがある街に向かう途中に、突然アルコールを口移しされたり、妻に似た売春婦の幻覚を見たり、警察に拉致監禁されリンチをされ謎のマークを足に刻まれたりする。そのあと、カルト集団に救済されるが逃げ出し、ファーストフード店にいくと、顔が魚のようなジャガイモのような店員ティナと出会う。その後、紆余曲折あってビリングスという男及びその刺客に追われることになる。その間に毛だけの動物や四本足のおじさんなどに会ったり、ホテルに潜伏する。それから色々あり、不具になる主人公クレイ。この間に、元妻の映画の続きのようなコマが挿入される。

主人公のクレイ

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ティナ

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ビリングス

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 本作品は、ストーリーを読んで頂いたり、上の登場人物を見て頂ければ分かると思うが悪夢のような作品だ。では、全くナンセンスでわけがわからない作品かというとそうでもなく、2ページくらいはわりと筋が通っており理解ができるのだ。しかし、合間、合間のその筋を壊すかのような登場人物や出来事がおこる。そして、主人公であるクレイが相当に寛容なのだ。どんな状況になっても驚かない。奇形の店員がいても寛容。こんなクレイがなぜ元妻に逃げられたのか知りたくなるくらいの人物だ。なので、作品としては前衛っぽい匂いはするが、まとめるとこにまとめてきていてとてもバランスが良いと感じる。ダニエル・クロウズの作品はどれも読みやすいので、本作品はごき初期の作品ということもあり、少し習作的な要素もあったのだろうか。繰り返しになるが、絵もストーリーも締めるところは締めてる感じがあって、読後の感想もそんな嫌な気分にならない。

 ちなみに、本作品の題名の英語表記は、Like A Velvet Glove Cast In Ironだ。これは、あの名監督ラス・メイヤーの出世作、Faster Pussy Cat! Kill! Kill!のセリフで出くるものらしい。ラス・メイヤー好きと本作品が好きな層がどれくらい重なるかはわからないが、ラス・メイヤー好きにも見て頂きたい作品の1つだ。

 

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