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ブルーベリーと休む

 フランス語圏を中心に展開される漫画、バンドデシネ。バンドデシネの巨匠を誰か1人選べと言われたら、メビウスをあげる人は少なくないはずだ。そして、メビウスは、ジャン=ジロー名義でも作品を出している。それが今回ご紹介するブルーベリーだ。ブルーベリーは、メビウスが本名であるジャン=ジロー名義で40年以上にわたって連載を継続していた西部劇だ。本作品は、40年以上にわたり全28巻刊行された作品のうち「彷徨えるドイツ人の金鉱」と「黄金の銃弾と亡霊」「アリゾナ・ラブ」の3作品を、海外漫画翻訳の巨匠である原正人さんが翻訳したものだ。

 この「彷徨えるドイツ人の金鉱」と「黄金の銃弾と亡霊」は、1972年の作品であり、「アリゾナ・ラブ」は1990年の作品である。しかし、絵柄が大きく違うかというとそれほど変わらない。これは少し不思議なのだが、日本の漫画だと、例えばスラムダンクをやジョジョの奇妙の冒険を見ても連載当初と、現在とで大きく絵柄が変わっているように感じる。他方で海外の漫画ではそれほど大きく絵柄の変化は感じられない。昔は、日本の漫画家は連載をしていく中で絵が上手くなっているのだと考えていたが、実はもう少し別の理由のがあるのかもしれない。誰かわかる方(もしくは、独自の考察をされている方)がいればコメント欄等で教えていただきたい。

 正直ストリーがものすごく面白いかというとそうではない。どちらかというとゴルゴ13とかそういうお決まりものを読む楽しみ方に近いのだろうか。

 1つ感じたところがある。それは1972年の方はそれほど色の調和がうまくいっていないように感じる。

1972年の方

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1990年の方

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1990年の方も色相の変化はあるのだが1ページ全体でものすごく色がうまく調和しているような感じを受ける。他方で1972年の方は、全体的に1ページの色使いが散漫に感じられる。もっとも、1972年の方も1990年の方もメビウスっぽい紫色や薄い水色の使いは変わらずといった印象だ。

 ちなみに、主人公ブルーベリーの顔は以下のような感じだ。

1972年の方

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1990年の方

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 上記の通り絵柄自体に大きな変化はない。初期の頃からメビウスの画力が安定していたということだろうか。若干全体の色彩が薄くなって1990年の方が明暗がはっきりいているようにもみえる。

 以上の通り、本作品は巨匠メビウスの大きな足跡を見られる作品だ。そして、SF作品を描く時は別のタッチで描かれているメビウスの画力を堪能できる。日本の谷口ジローもハードボイルド系の作品を描く時と、歩く人などのほのぼの系を描く時の線の使い方が違うように感じられる。そういう谷口ジローは、メビウス好きだったらしいので、かなり影響があるのではないか。谷口ジローのハードボイルド作品がお好きな方にもぜひ読んでもらいたい作品だ。

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