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アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険と休む

 本作品は、原作アレハンドロ・ホドロフスキー、作画メビウスの作品であり、1992年に第1巻が、1993年に第2巻が、そしてしばらく間隔があいて1998年に第3巻が出版され、これらをまとめたものだ。第1巻から第3巻まで6年の歳月を要している。そのためか、第1巻のページ構成と第3巻のページ構成が大きく異なっている。

第1巻のページ構成

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第3巻のページ構成

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 上記のように第3巻では第1巻の時期と比べてコマ割りが相当に細かくなっている。第1巻のページでは2段構成だったのものが、第3巻では、なんと5段の構成となっている。このようにコマ割りが細かくなった理由について本作品の巻末の解説では、メビウスが日本の漫画の影響を受けて細かいコマ割りをするようになった、との記載があった。日本の漫画はコマ割りは細かく感じるのかと驚いた。

 それで、本作品のストリーについて。まずタイトルの「スキゾ」という言葉だが、スキゾフレニアのことで精神医学で分裂型の人格を表す言葉ということ。このスキゾの言葉に負けないように、大学教授であるアラン・マンジェル教授は、分裂型の逃避行生活を続け、最後は南米の秘術により若返りしてしまう。

 本作品の主人公であるアラン・マンジェルは、原作者であるホドロフスキー自身を表現したキャラクターであるという解説がされている。

 本作品で気になったのは、メビウスの顔の描きわけである。本作品の主人公のアラン・マンジェルは、TPOに合わせて色々な描かれ分けがされている。

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 上記は時系列順に並べたアラン・マンジェルのイラストだ。初期はわりと意識的にか劇画タッチが残っていてジャン・ジロー感がある。しかし、順に劇画感は薄れていき、第3巻の一番下のコマのアラン・マンジェルに至っては相当簡略化されて描かれており、インサイドメビウスなど後期のメビウス作品に通じ画風だ。ここが非常に興味深い。日本の漫画家でも次第に絵が変容していく例はあるのだが、いずれも時の経過とともに詳細になっていく、描き込まれていく印象が強い。他方でメビウスは初期の作品が劇画タッチで描き込みが多い印象だが、時の経過とともに少しずつ描き込みを減らし(厳密いえばメリハリをつけということか)簡略化していく印象がある。これも、複数年かけて描かれた本作品を楽しむ1つのポイントではないだろうか。

 SF感が他のメビウス作品よりは薄い作品なので、SFが苦手な方でメビウス作品を読みたい方(そんな人がいるかは知らないが)はまずはこの作品が読まれることをお勧めする。

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