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No One Elseと休む

 最近誰かがおすすめをした本作品。No One Elseは、R. Kikuo Johnsonという作者の短(中)編の漫画だ。グラフィックノベル、という呼び方をする方が適切なのかもしれないが、漫画文法で育った私としては、バンドデシネを読んでも、グラフィックノベルを読んでも、その他海外漫画を読んでも、漫画文法のフィルターを通して読むわけで、漫画と呼ぶ方が適切であると思うのだ。

 そんな前置きはさておき、R. Kikuo Johnsonという作者について簡単に紹介したい。彼のホームページによると、1981年生まれ、ハワイのマウイ島出身の漫画家でイラストレーターということ。New Yorkerの表紙や、アニメ、広告など仕事は多岐にわたるようだ。

 さてそんな多彩な若手?漫画家であるR. Kikuo Johnsonの本作品「No One Else」は、「悲しみ」と「家族」を描いた作品だと感じた。

 まずは登場人物を紹介しよう。

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おかんこと、Charlene。シングルマザーと看護師と父親の介護という3足の草鞋を履く女性。あることをきっかけに、3足の草鞋全部脱ぎ捨ててしまう。本作品の土台となる登場人物だ。


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つづいてまだまだ子供のBrandon。全てを理解するにはまだまだ子供だ。しかし、自分の近しい存在にならば感じる「悲しみ」。感情の変化があまり見られないのだが、葛藤や「悲しみ」、母との関係性の機微が本作品の醍醐味の1つ。そんな本作品の中核を成すのがBrandonだ。

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 自称ミュージシャン、どう見てもフリーター。Charleneの弟。名前を探したのだが見つけられなかった。「He」とは「You」とかで名前を呼ばれていなかった(見落していたらごめんなさい)。彼の注目ポイントの1つは、Tシャツだ。なんとも謎なTシャツをたびたび披露してくれる。上記のコマのコアラのTシャツもなんか雰囲気が出ていてよい。

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 忘れてはいけないのが、猫のBatman。猫なのにBatman。Brandonと仲良しだがある日突然いなくなる。最後また戻ってくる。本作品の重要キャラクター。

 本作品の物語は、上記の個性派揃いのキャラクターによって進行する。家族の関係性を描きつつ、悲しみという感情的な題材を取り上げつつ、どこかリラックスした雰囲気が全体に漂うのは、絵柄もあるが、舞台設定であるハワイの穏やかな雰囲気によって醸成されているか。また、家族のそれぞれの思いが割と複雑に絡みあいながら、100ページに満たない分量でまとめられている構成力も素晴らしい。

 評判に違わぬ名作の印象だ。作者の他の作品ものぞいてみたい。

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