見出し画像

家と休む

 パコ・ロカといえば、認知症の老人をテーマとした「皺」があげられるだろう。特に「皺」はアニメーション化され、日本でも三鷹の森ジブリ美術館が配給元になり日本でも近年上映された。そんなパコ・ロカの本作品は、父親が残した家に集まった子供達が、残された家を通して亡き父親の喪失感を乗り越えていく話だ。

 本作品には巻末にパコ・ロカへのインタビューが掲載されている。それによれば、本作品は、パコ・ロカの父親が他界したことを契機に描かれるようになったこと、父親の喪失感が本作品執筆の原動力となったことが言及されている。これはとても興味深い。表現というのは、突き詰めると全て、表現者自身の自己治癒表現なのだろうが、海外漫画の作者はかなり自覚的に自己治癒表現として漫画を描いている気がする。パコ・ロカの上記コメントもまさに父の死によって傷ついた心を自己治癒するために本作品が描かれたと言えるのではないか。他方で、日本ではあまり自己治癒的に漫画を描く人の話を聞いたことがない(逆に、漫画を描くことで自傷しているような話はたまに聞く)。海外漫画の特徴としてそういうセラピー表現としての特徴もあるのではないだろうか。

画像1

 パコ・ロカの絵は優しい。陽の光を感じる木の木陰が涼しげだ。

画像2

 人物は日本でも人気の線画っぽい雰囲気でとても親しみやすい。

画像3

皺でもよくでてくる、テラコッタカラーがよい。上記では夕日が差し込む様子がテラコッタカラーで表現されている。陽の光の気持ちよさを感じる。夕日のテラコッタカラーはすごい懐かしい気持ちにさせられる。

 冒頭でも紹介した通り、本作品は家族物の物語だ。あまり、正面から家族について漫画で取り上げることは少ないように思われる。是非、何か映画を見るような心持ちで本作品を読んでもらいたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?