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寂れていく世のために出来ること


また大好きなお店がなくなるかもしれない。

この事態を目の当たりにするのは人生で二度目である。

一昨年、お世話になったお店がなくなった。

「助けてください」という店主のSNS投稿でお店の窮地を知り、激しく動揺した。大変にお世話になったお店だったものだから、私は居ても立っても居られなくなり、何かできないかと、自分の作品の中でお店を描くことに。少しでも宣伝になればとの想いだった。

当時制作中だった『スポットライトを浴びたくて……』という作品にちょうど同窓会のシーンがあったので、その会のお店ということにして描かせてもらったのだ。

が、作品の完結を待たずしてお店は潰れてしまった。



今度は昨夜である。

またお世話になったお店の経営危機がスマホ越しに飛び込んできた。もはや軽くトラウマである。

千葉の柏にある『おむすびCafeつむぎ』というお店。

”多文化多世代交流”を理念に掲げ、地域の人々を元氣づけようと運営されているお店である。

ご近所付き合いが寂しい現代に、元氣を吹き込もうと日々奮闘されている。

つむぎでは、子どもたちを囲ったイベントを定期的に開催している。SNSには子どもたちの笑顔が頻繁に投稿されており、私は写真を見るだけで思わず笑みが溢れてしまう。

運営されているお二人は、子どもたちが地域の人々を元氣にすると信じているようであるが、地域の人々どころではないだろう。

スマホ越しに元氣をもらっている32歳がここにいるのだから、その数は計り知れない。









つむぎには漫画の宣伝をしてもらった御恩がある。

前途した『スポットライトを浴びたくて……』の宣伝用チラシを、長らくお店に掲示してくださっていた。しかも別途、手書きのチラシも貼ってくださっていて、私は友人の投稿でその事実を知り、大変に心動かされたものである。

後日、宣伝のお礼にお店へ足を運んだ。

その際に運営のお二人から、つむぎに込められた想いをじっくりと伺ったのである。

つむぎを運営されているお二人、長田さんと佐々木さんは、もともと同じ介護施設で働いていたそう。

施設にはたくさんの高齢者さんが通われていたが、どこか元氣を感じられず、お二人はもどかしさを感じていたらしい。

高齢者さんを元氣づけたいという想いはあっても、施設は施設のカリキュラムに沿って運営しており、勝手な仕事は許されなかったようである。

けれど、そんな高齢者さんが笑顔を見せてくれる時間がわずかにあったようだ。

施設で時折開催される”子どもたちと交わるイベント”の際に。

「子どもたちと触れ合っている時間だけは、高齢者の方たちの笑顔を見ることができたんです」

と、佐々木さんはなんとも言えない表情で伝えてくださった。

世代を超えて交わることができればもっと笑顔が増えるのに。

「世代の垣根をなくしたい」

少子高齢化が進んでいる社会の中、夢と応援のあふれる世界を作るために。

そんな想いで、お二人は働いていた施設を辞め、つむぎを立ち上げたそうだ。






お二人の想いが今の日本に必要と感じるのは私だけだろうか。

こうしてつむぎの宣伝記事を書いているのは、漫画の宣伝をしてくれた御恩はもちろんであるが、何より、お二人の想いに激しく共感しているからである。

私も隣人に心を開くことは大切なことだと思う。

今の世のは少し、寂しいが過ぎる。

アパート共同のゴミ捨て場で、すれ違う隣人にご挨拶してもスルーされてしまう。わざわざ隣人に心を開かなくても生きていけるからであろう。

今は指を動かすだけで食料が自宅にやってくる時代。縄文人が現代にタイムスリップでもしてきたら歓喜であろう。けれど、荷物を自宅まで運んでくれた人に怒鳴り散らかす人も少なくないと聞く。〝お陰様〟という言葉を忘れてしまうほどに、今の世は便利なのである。

私はこの現象を、日本の危機だと感じている。

少し突拍子もないように感じるかもしれないが、

人と人との繋がりが薄れることが地域や国の分断に繋がり、果てには他国に侵略され、言語も文化も奪われてしまうと私は考えている。知れば知るほどに、今の日本は窮地である。

だからといって、私に出来ることはちっぽけなことなのだが、出来ることはやっている。

私は人見知りであるのだが、せめて、共同のゴミ捨て場で会った人くらいにはと、挨拶を心がけている。

スルーされることもしばしばだが、立ち話ができるほどに距離が縮まった隣人もいる。

ちっぽけなことしか出来ないが、出来ることは出来るのである。

我々は誰かのお陰様で生きている。

見える人見えない人様々だが、視点を拡大するとおそらく、関係ない人などいないのである。

誰かが誰かを支えていて、その恩恵が巡り巡って私のところまで届いていると、私は思っている。

であるから、人々の交流を大切に想うつむぎには、これからも在り続けてほしい。

今回も、私に出来ることをと筆を取った。私からの花束である。








つむぎさんのホームページです。

少しでも氣になったらば覗いてくださると嬉しいです。


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