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アメリカ:鉄のカーテンの向こうの芸術家たちの『創造的な闘い』に関する展覧会に時代を超えた意義

US: exhibition on "creative struggle" of artists behind the Iron Curtain has timeless significance

Installation view PHOTO: WALKER ART CENTER/ERIC MUELLER

ミネソタ州ミネアポリスの現代美術館ウォーカー・アート・センター(the Walker Art Center)で、1960年から1980年にかけてポーランド、東ドイツ、チェコスロバキア、ルーマニア、ユーゴスラビアの芸術家たちがそれぞれの国で制作した作品を集めた展覧会が開催されている。ニューヨーク・タイムズ紙のコメンテーター、ジェイソン・ファラゴ(Jason Farago)は1月17日付の紙面で、「全体主義体制に対する事実上の闘いであったこの芸術は、21世紀の人々、私たちが本当に考え、感じていることと調和して生きる方法を教えてくれるものでもあり、その価値はまったく失われていない」と書いている。

Zbigniew Rybczyński, Take Five, 1972. Courtesy the artist

著者はまず、一般的にフランス、ドイツ、イタリアと結びつけられている『ヨーロッパの芸術』という、いまだに狭すぎる概念に注目した。『共産主義の東』というステレオタイプはいまだに残っており、それはある種の偏狭さや曖昧さとみなされて使われている。同時に、『東』あるいは『東欧』という言葉そのものが不正確であることも指摘した。例えば、プラハはウィーンよりも西にあり、ワルシャワはアテネよりも西にあるからだ。

鉄のカーテンの向こうの芸術家たちは、NATO諸国の芸術家たちと同じ作品を制作した。特に絵画や彫刻の分野ではそうだった。だからこそ、芸術が最も発展したのは、体制が限界とみなした分野だったのだ。その中には、モノクロ写真やアマチュア・フィルム・カメラで記録された様々な芸術的パフォーマンスも含まれていた。

「たとえば、ワルシャワの『アカデミー・オブ・ムーブメント(Akademia Ruchu)』は、1977年にプロパガンダ・ポスターを掲げてパレードを行ったが、ニューヨーク・デイリー紙に掲載された不朽の写真にあるように、突然、目に見えない障害物につまずいた。同様に、ブダペスト出身の反体制派、ドーラ・マウラー(Dora Maurer)は1971年、メーデーのパレードに裸足で行くことを決め、足を赤く塗った。特に軍隊が通り過ぎるとき、彼女はずっとそこをグルグルと歩いていた」とファラゴは回想した。

『Multiple Realities: Experimental Art in the Eastern Bloc, 1960s-1980s』(複数の現実:東側諸国の実験的アート、1960年代から1980年代)と題されたこの展覧会では、ロシアとウクライナの戦争に反対する意思表示として、あえてロシア出身のアーティストを紹介しなかった。約100点の作品の中には、アリーナ・サポチニコフ、ヨゼフ・ロバコフスキ、エウゲニウシュ・ルドニク(Alina Szapocznikow, Jozef Robakowski, Eugeniusz Rudnik)など、ポーランドの作品も多い。

ニューヨーク・タイムズ紙のコメンテーターは、「一方では、トルコから中国、インド、ジンバブエに至るまで、さまざまな国でアーティストの努力に対する当局の干渉があり、そこではアーティストは、もっと悪いものでないにしても、裁判や投獄で脅かされている。他方で、例えばアメリカのような自由な国では、アーティストたちは『芸術の自由』が何を意味するのかを忘れてしまい、この分野での偽善や誤った情報の拡散につながっている」と指摘した。

さらに彼は、かつての旧東欧では、諜報機関や盗聴器などによってさまざまな形で社会が監視されていたとすれば、現在では、規模ははるかに小さいとはいえ、「私たちはさまざまな機関によってデジタル的に監視されている。自分の考えや感情に正直になるために、これとどう付き合っていくかという問題が残っている」と考察を締めくくった。

『ウォーカー・アート・センター』での展示は今年3月末まで。その後、アメリカのフェニックスとカナダのバンクーバーで開催される。

New York/ Fr.jj

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