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これだけはマストバイ!ホルンに必要なお手入れ用品たち(前編)

新生活・新学期が始まって少し経ちましたが、新しい環境に少しずつ慣れ始めているところでしょうか。
特に学生さんは部活体験などもこれからだと思います。ぜひ吹奏楽部やオーケストラに、ホルンパートに入ってくださいね!ホルンは楽しいぞ!

さて、今回は新入生向け…というには少し気が早いかもしれませんが、ホルンという楽器のコンディションを維持していくために必要なお手入れ用品について書いていこうと思います!noteに移転する前のホームページでも記事にしていましたが、せっかくなので今回は再度note用に書いていこうと思います。

ホルンに限らず、楽器のお手入れはとても大事です。いい音色はいい楽器の状態から、といっても過言ではないくらい大事。新入生に限らず、これまでお手入れについてあまりよく知らなかった先輩たちもぜひ参考にして、後輩が入ってきたときにドヤ顔で教えてあげられるようになってください!

※長くなると思うので、前後編に分けます!


そもそもホルンのお手入れには何が必要?

ホルンをはじめとする金管楽器は、おおまかに分けるとこんな感じでお手入れ用品が必要になります。

・オイル
・スライドグリス(+オイルグリスクリーナー)
・スワブ
・クロス
・ブラシ

オイルはロータリーバルブ、スライドグリスは抜差管の金属どうしが擦れあっているのでその保護と潤滑の役割を果たします。グリスの横に書いているオイルグリスクリーナーについてはグリスの項目で触れます。

スワブは抜差管やマウスパイプの中の水分や汚れをとるためのアイテム。管内に水分が残ったままだと緑青(ろくしょう)、いわゆる青サビが発生したり、管体を痛めたりする原因になります。また、食べかすをはじめとした汚れも、蓄積するとヘドロというものになって溜まってしまい、吹きごごちに悪影響を及ぼすうえにニオイも出て衛生上よろしくないので、取れるものはスワブで取ってしまいます。

クロスは楽器表面の汚れを取ったり、艶だしでピカピカにしたりするのに使う布です。布であれば何でもいいわけではなく、柔らかく、細かい繊維のものを使うべきです。手汗などが楽器についたままだと乾燥して汚れとして付いちゃうし、さらに放置していると管を痛める原因になります。最悪の場合管に穴を開けてしまうことも…(ここまでなることは滅多にありませんが、学校楽器など古い楽器の場合は可能性が高くなります)

ブラシは楽器本体や抜差管を洗う用と、マウスピースを洗う用の2種類存在します。スワブだけでは取り切れなかった汚れをかきだし、しっかり取り除くことで、スムーズに息が通る楽器になります。


この5点については最低限そろえていきたいところです。ここから、それぞれのお手入れ用品にについて詳しく見ていきましょう。
「迷ったらとりあえずこれを買っとけ枠」としてヤマハで発売されている商品名と定価を、ブラシ類以外については僕のおススメも紹介していきます!


◆オイル

ホルンは他の金管楽器と比べて、オイルを差す場所がわりかし多い楽器です。えぇ面倒…と思うかもしれませんが、ホルンを操作するうえで大事な部分に差すので、めんどくさがらずに差していきましょう!
差すオイルの種類もいくつかあって、中にはひとつのオイルですべての場所に差せるオイルもありますが、差す場所によって求められる粘度(サラッとしてるかトロッとしてるか)が違ってくるので、できるだけ使い分けましょう。メーカー最大手のヤマハも、ロータリー楽器用に3種類のオイルが販売されています。

一般的によく使われるメーカーは、

・ヤマハ
・ヘットマン
・JMルブリカント
・ホルトン
・バック

あたりになると思います。(個人の考えです。すでにお使いのメーカーがこの中に入ってなかったらごめんなさい!)


ロータリーオイル

ホルンの心臓部であるロータリーバルブに差すオイルです。抜差管を抜いて、バルブから伸びている管(外管)からバルブ内部に向けて注油します。

バルブのスムーズな動きと保護のためにとても重要なオイルですが、注意しないといけないのはトランペットやユーフォニアムのように毎日差すものではないということ。
あまり頻繁に差すと、抜差管に塗ってあるグリスが少しずつ溶けてバルブの方へ流れ込み、ロータリーの隙間に詰まってしまい、動きが悪くなったり最悪動かなくなる可能性も…

どちらかというと後に書くロータリーバルブの軸の方をこまめに差すことが大事で、このロータリーバルブ内部については1〜2週間に1回や、楽器を洗った後、長期間吹かなくなる前や1ヶ月単位で久しぶりに吹く時に差すのが良いです。


ヤマハでは緑のラベル「ローターオイル」が定価1210円で販売されています。

僕が愛用しているおススメのロータリーオイルは、「アイルリッヒ」のロータリー&ピストンオイルです!

このオイルには洗浄効果があり、ゴミやホコリなどを洗い流してくれるスグレモノです。こういった微細なゴミでも塵も積もれば何とやら…なので、ありがたい機能です!
ただ、石油系のオイルなので、特有の独特なニオイが若干あり、これは好みが分かれるところです…


ベアリングオイル

ロータリーのキャップを開けた時にお目見えする軸の部分や、軸裏の隙間に差すオイルです。レバーのアクションがヒモ式ではなくメカニカル式の場合、レバーとロータリーをつなぐボールジョイントにも使います。


写真の緑と黄色の矢印のところに差します

ほぼ毎日レベルで頻繁に吹く場合は、まずここのオイルを定期的に差すことを心がけましょう。2〜3日に1回、長くとも1週間に1回の間隔で差してください。
差した直後と数日経ってオイルが少し揮発した後で吹奏感が割と変わるので、こまめに差すことで吹奏感を維持することができます。

先ほど説明したレバーアクションがメカニカル式の場合、ボールジョイントに適度なオイルが無いとカチャカチャ音が鳴ってくることがあるので、それを防ぐ意味でも差してください!


ヤマハではグレーのラベル「ロータースピンドルオイル」という名前で、定価1045円で販売されています。

僕のおススメは、ヘットマンの「ベアリング&リンケージ13(または13.5)」、JMルブリカントの「ベアリング&リンケージオイル13(または13.5)」です!

ヘットマンは最近まで市場に出ている分で終わり(生産終了)という噂が出回っていましたがまったくのデマで、安定供給ができないため超品薄状態になっているそうです。なので、ネットで在庫があれば注文できますし、楽器屋さんで頼めば取り寄せてくれます。

ただ、なかなか見つからないのは事実で、13番の「ライトベアリング&リンケージ」は特に店頭在庫を見つけることが難しく、今年の1月に尼崎の福永管楽器さんでようやく購入することができたくらいです。


ただ、オイルとしては持ちもよく、音も他のオイルと比べて響くようになるのでオススメです!


JMルブリカントは日本で見られるようになってまだ日はそんなに長くないですが、こちらもオイル持ちが良いです。音はヘットマンより少ししっとりするかなあといった印象です。よくヘットマンからの乗り換え候補に挙げられることが多いです。


レバーオイル

読んで字のごとく、各レバーのバネに差すオイルです。ここに差すオイルが1番粘度の高いオイルになります。粘度が高いことでバネを保護してくれます。

ここに差すオイルは基本的に1個前に紹介した「ベアリングオイル」と併用可能です。こまめに差しすぎると動きがもさっとしてしまうので、2,3週間くらいに1回くらいの頻度でいいと思います。もし軽めのオイルを使う場合はその分揮発も早いのでもう少し間隔を短めにするといいでしょう。


ヤマハでは紫のラベル「レバーオイル」が定価1045円で販売されています。

僕のおすすめはベアリングオイルの部分でも紹介した、JMルブリカントの「ベアリング&リンケージオイル13.5番」です。



◆スライドグリス

抜差管に塗る潤滑剤です。金属どうしの摩耗を防いだり、音の振動の伝達にも影響するアイテムです。様々な種類が発売されており、オイル以上に音色や吹奏感が変化するのもおもしろいポイントで、研究しがいあります(笑)

グリスには大きく分けて「容器から指ですくって塗るタイプ」と「スティックやノズル付などで手を汚さずに塗れるタイプ」があります。テクスチャーは前者についてはクリーム状、後者はジェル状のものが多いです。また、化学合成で作られたグリスは季節や気温の変化に強く、塗り替えの頻度が少なく済むメリットがあります。


そしてこれがグリスを塗る上で1番大事なことなんですが、「グリスを塗る前に抜差管に付いている前のグリスをしっかり拭き取る」ようにする。

重ね付けをすればするほど古いグリスが固着していき、管の抜き差しがしにくくなります。必ず拭き取ってから新しいグリスを塗るようにしてください。

さらに、拭き取る時もただ単に拭き取るのではなく、「オイルグリスクリーナー」と呼ばれる液体を使いましょう。

ヤマハから販売されている「オイルグリスクリーナー」(定価1430円)

これをグリスを塗る面に垂らすことで、抜差管に付いた古いグリスやホコリ・ゴミなどを取りやすくしてくれます。

そうしていわばすっぴんになった抜差管に、新しいグリスを塗ってあげるワケです。

グリスをどれくらい塗るかについてですが、正直なところ好みの部分もあるんですが、僕が楽器を調整してもらった時に教えてもらったのは、「抜差管を動かした時にわずかに金属どうしの擦れる音が聞こえるぐらい」の量。"わずかに"というところがポイントです。

これが結構聞こえる状態だとスカスカで、逆にあまり聞こえずヌル〜っと動くような状態は塗りすぎなんだそう。
塗る頻度はその人の演奏頻度で変わってきますが、大体1ヶ月に1回や上記のように擦れる音が大きくなってきた時に塗り替えるのが良いかなと思います。また、オイルによってグリスが溶けて緩くなることもあるのでそういった時も塗り替えてください。

あと、野外で演奏した後も抜差管の汚れを拭き取ってグリスを塗り替えましょう。特に風の強いところで演奏した後は、砂やホコリが付着していて、抜差管を動かすとシャリシャリと音がします。それをそのままにしておくと抜差管に細かい傷が増えていき、管が緩くなる原因になったり、抜き差ししているうちにゴミがロータリーの中に入って動きが悪くなったりする可能性があるので放っておかないようにしましょう。

何十年も前の楽器で管が緩すぎて、普通のグリスでは抜差管がとどまらずに動く・落ちてしまう場合はハードタイプと呼ばれる、まるで接着剤かのような粘度の激重グリスを使ってみると改善されることがあります。その分抵抗が増えてしまいますが、機能性維持のためにはやむ得ないです…(もしくはリペアに出して管の膨らましをしてもらえれば普通のグリスでも大丈夫になる可能性があります)

ヤマハからは指で塗る通常タイプ(定価660円)、スティックタイプ(定価660円)、ジェルタイプ(定価770円)、通常タイプのウルトラハード版(定価660円)が販売されています。

僕のおススメはバックのチューニングスライドグリス。赤色のジェルタイプのグリスで、その見た目から通称「いちごジャム」と呼ばれています。

本当のいちごジャムじゃないよ!

適度な粘度で管をホールドしてくれます。

さらに僕はこれにヘットマンの「スライドジェルプラス7.5」を少量混ぜて使っています↓

注射器に入っています

バック単体だと少しふわっとしすぎる、かといってスライドジェルプラス単体は粘度が高く抵抗マシマシになってかえって吹きづらくなってしまう…そんな時に思いついたのがグリスのブレンドです。

バックにちょっとだけヘットマンを足すことで、音に適度な締まりが出て吹きやすくなりました。

まあでもこれはマニア(?)な方法なので、迷ったらまずはヤマハのグリスを買って、1つのグリスを丁寧に使っていきましょう(笑)
あれこれ試すのそのあとからで全然大丈夫です。沼は深いので…







後編のご案内

さて、まだオイルとグリスの話しかしていないのに、すでに5000字近く書いてしまいました…ここまで読んでくださった方本当にありがとうございます。

後編は残り3項目についての解説と、マストではないけれどあると便利なお手入れ用品をご紹介していきます!



それでは!




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