映画『箱男』による欲望の眼差しと映画の存在理由
序 ゴダールが監督作『軽蔑』(1963)の冒頭で引用したアンドレ・バザンによる以上のテーゼを思い出したのは石井岳龍の『箱男』(2024)(以下、石井『箱男』)の終盤だった。とはいえ、筆者のこれまでのnoteを読んでいただければ、この呪文が常に筆者の念頭に置かれており、筆者が『軽蔑』の病に伏していることがバレるのは容易いことである。しかし、その呪文を、各ショットを観る上で念頭に置いていたにすぎない私に対して、『箱男』という映画は、まさにその呪文をこそその結論としていたことに驚い