[ 親愛なる片割れについて ] From 佳歩 to 千春

 千春。出会って15年目になる私の親愛なる片割れ。声が綺麗で、快活で面白くて、すごく優しくて暖かくて、その分繊細でもあり、努力家で自分の価値観を冷静に観察したり柔軟にアップデートしたりできる、そんな素敵な人。私たちが一緒に過ごした中学3年間、そこが『雨のちふたり』の原点。彼女をちーちゃんと呼ぶ私の人生は、気づけば彼女に出会う以前の年数の方が短くなった。日向のベンチに座り、たわいもない話をいつまでもしていたあの頃がふと懐かしくなったりもする。
 ほとんど1日中一緒にいた中学生の時の思い出はかぞえきれないほどあるのだけど、それはもう他己紹介の域を超えてくると思うので、また別の記事で語りたい。でも一つだけ、彼女がパーキンスを使って点字を打っている姿は、それは本当にほれぼれするほど美しくかっこよかった。あんなに早く軽やかにあのタイプライターを扱っている人を私は他に見たことがない。何というか、私のボキャブラリーでは到底足りないけれど、あれは一種の芸術だと思う。音に切れ目がない流れるようなあの動き、真面目にギネスものではないだろうか。
 中学を卒業した私たちは、他の多くの人たち同様にお互い別々の道を歩き始めた。ちーちゃんは、高校を卒業して、職業訓練校に行って、就職して、充電期間を経て、結婚して、さらにスキルアップして、転職して、今は都内でシステムエンジニアとして働いている。でもその一つ一つのライフステップには本当にたくさんのドラマがあって、いろいろなことが彼女の身に降りかかったりもして、いい時も悪い時もそれなりにあった。「今もまぁそうかもしれないけど、良くも悪くもやり過ごし方を覚えたんだよね」と2人で話すようになったのはここ2・3年のことだろうか…。
 中学生の時は、よく一緒にココアを飲んでいた。日当たりのよい寄宿舎の部屋で2人でほっこりしながらココアを入れる時間が私はとても好きだった。そんな彼女は、最近は紅茶に夢中だ。いつも本格的に、丁寧に、大事に紅茶を選んで入れる。ちーちゃんがクリスマスにプレゼントしてくれた紅茶は、どれもすごくおしゃれで香織が良くておいしかった。彼女は紅茶に合うお菓子もよく作っている。料理もとても上手。あとは、とりあえずチーズが嫌い。
 本を読むこと、エッセーや小説を書くこと、ショッピングをすること、囲碁を打つこと、アニメを見ること、ちーちゃんは多趣味で、興味を持ったことに対する好奇心がとても旺盛だ。どんなトピックかに関わらず、関心を持ったことをとにかく調べる性格は、二人とも昔から通じるところがあるかもしれない。
 ちーちゃんは想像力がとても豊かな人。それは奇想天外な部分もあって、「ぽっけという音の響きの魅力」とか「お風呂を洗う体制の意味」とか、私にはとても考えつかない切り口で物事をとらえて掘り下げる。ちーちゃんのノートやツイッターには、そんな想像力あふれる記事がたくさん上がっているので、ぜひチェックしてみてほしい。
 でも私が思う彼女の豊かな想像力の魅力は、もちろんユニークな発想という部分もあるのだけれど、それと同じぐらい、いつもこちらの状況を理解し、的確なフィードバックをくれる教官力の高さだとも思う。一緒に過ごした時間の長さとか、濃密さとか、すり合わせてきた価値観とかいろいろあるのかもしれないけれど、いつも私の突飛な話を聞き、こちらの目線に寄り添ったフィードバックをくれて、ほしい言葉をほしいタイミングで自然にかけてくれた彼女に、私はこれまでどれだけ救われてきたかわからない。
 私がカナダに行くまでは、よく一人暮らししていたアパートにちーちゃんが泊まりにきてくれて、そのたびに朝になるまで語り合っていた。今は、月に1・2度通話をして、そのたびに半日ぐらいしゃべって、これもまた、国を超えた感覚なんて感じないぐらい楽しい時を過ごしている。ちーちゃんと話す時間。たくさん笑って、真面目な話もして、元気が出て、ほっとして、リフレッシュしてまた頑張ろうって思う、私にとって本当に本当にかけがえのない時間。
 そんな私たちが、何か楽しいことをしたくて生み出した共同マガジン『雨のちふたり』。月に1度、テーマだけ同じに設定して、あとは2人それぞれが好きなように書いていく。たまにまた、お互いがこうやってお互いの話をすることもあるかもしれない。ちーちゃんのエッセーを読むのが、私自身今からとても楽しみだ。これから紡がれていく物語。誰かの役に立つとかそんなおこがましいことは考えていないけど、私たちの妄想や暴走に苦笑しながら、ちょっと立ち止まったり、振り返ったり、一息つけたりする場所になれたらとても嬉しい。
Okay everyone, let the show begin! It is our time to shine!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?