📚️影絵草子の怪異大辞林🌳

怪談師、怪談作家です。 語り名:マシンガンジョー 恐い話を趣味と実益で日本各地で…

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怪談師、怪談作家です。 語り名:マシンガンジョー 恐い話を趣味と実益で日本各地で聞いて集めて書いて話してます/稲川淳二の怪談グランプリ2021/怪談最恐戦2021東京予選/怪談王2022、23関東予選大会/島田秀平のお怪談巡り/単著 茨城怪談、屋敷怪談

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最近の記事

「歩いていこう」

何かにつけて理由や意味をつけたがる欲しがりな 人類はみんな生き甲斐を探して 血眼で 生きている おまえの顔最近恐いぞ なんて言われることもままあって やれやれなんて言いながら 通り過ぎる季節も のらりくらり  主語のない会話の先に どんな明日が待っているかなんてそもそもな話、僕らは考えない 明日の飯さえまだ決めてない さあこれからどうしようか 選択肢ならいくらでもある 道は果てなくどこまでも続いている 歩いていこう 歩いていこう 諦めるのはいいけれど諦めるならば傷ついてからで

    • 「望遠鏡は押入の中」

      幼い頃に父親に 買ってもらった望遠鏡で 見上げた夜空を今でも 忘れずに 片時も離さないで 心に宝物みたいにしまっているよ 珈琲を片手に真冬の寒さに 負けないように 毛布を頭からかぶって待った ああ見せたいんだ この夜空を ふいに起こされた僕の 瞳に映った いくつもの星たちが 弧を描いて ところ狭しと 夜空をキャンバスにして 光のアートを施していくんだ  なぜか涙が止まらなくて泣いたのを 今でも語り草にされている 恥ずかしいな 懐かしいな もう

      • 「東京」

        ふいに三叉路に行き当たり 角の路地に迷い込み 野良猫に出会う 夏の青空に レンズを向けて 切り取る 思い出はセピア色 人々の暮らし 何千 何万 それ以上の 涙 笑顔 立ち止まる 道にも 歴史あり 目を閉じてしばし 昔に立ち返るとき 私の瞳には何が映るだろう 夕焼け空が 帰り道を急かしてる 電算が走る音 大切な場面 忘れがたい言葉 誰かの背中 いくつもの 足音の中に 人生あり 私は 人々のさざ波に 揺られて 今日も 帰ろう 草臥れた 体を無理やり湯船に沈める ささやかな幸せと安

        • ショートショート「主婦権」

          亭主関白の時代は過ぎ、昨今は女性優勢の世相。 団地に住む主婦の恵美子は ある日、新聞のチラシに「妻研修センター あなたも妻のアマから妻のプロになりましょう!」 という広告を見つける。 政府の要請で妻に権利を。という法案が可決され、新たな制度がもうけられたらしい。 早速センターに向かうと家族の中でどれだけの権利を自分は取得しているかがわかり、そのパーセンテージが数値化され自分は15%と著しく低かった。 プロになろうと恵美子はその日から権利獲得のために奮闘するが、倍率は高く試験で

          「あなたの思い出お預かりしています」

          思い出預かり所ではあなたの思い出おあずかりしております。 あの日なくしてしまった大切な物 初恋の人、家族、 そしてもう一度見たい、あの景色、あの場面…… ただけっして怨みを残した思い出だけはとりにきてはいけません。 やり方は簡単、センターのボタンを押して頭のなかに取り戻したい思い出を思い描くだけです。 それだけで五分間だけあなたのなくした思い出と出会えます。どんな思い出でも……。 #ショートショート

          「あなたの思い出お預かりしています」

          「残り香」

          壊れかけのオルゴールも ゼンマイを忙しく回して あなたの朝へと駆け出して 窓をいくつも開けて ここまで来たよと 太陽が言うから 僕はまた泣きたくなる ささやかな出来事の ほんの一瞬の刹那に 人はどうしてこんなに 心を残してしまうのだろう おしえてよ。

          「世界がひらく日」

          口を開いて…… 歯医者が言うので口をできるだけ大きく開いたら 顎が外れてしまったようで 戻さなきゃとすればするほど開いてしまい 気づくと世界中のドアや窓も開いて、 海も開いて 季節はあっという間に真夏に変わる。

          実話怪談短編・忌「人非人」「雨音」

           「人非人」 彼女と二人で水族館に来たはず。 けれど分厚い水槽の硝子の向こうに 泳いでいるのは魚ではない。 人間のようなもの。 ただ、手足や頭がない。 切断したのではなくどうやら元からないみたいだ。  説明欄のプレートには、学名らしきものと、 『人非人』の文字がある。 「雨音」 急に背にした窓から豪雨のような音が聴こえる。 しかし、その日は晴天。気のせいかと思っていると、 電話が鳴る。 単身赴任の夫から。 『ねえ、雨音すごいね、そっちは雨?』 自

          実話怪談短編・忌「人非人」「雨音」

          ショートショート「顔」

           昨日と今日の私は違う。お互い少しずつ顔が変わる  顔は変わっても中身は変わらないから同じだよとお互い言うが、今ではすっかりお互い他人の顔である。 見合った顔には鼻もなく目もない。  「俺たちってなんなんだろうな、 こうなるとお互いになんだか自分自身がわからないよな……」  明日には何をなくすのだろう。  記憶……もだいぶ薄れがちである。  もうお互いの名前ひとつ思い出せない。  「あれ、俺はだれだっけ…………」 窓の外には秋の夕映えが空を赤々と染め上げてい

          ショートショート「顔」

          「光芒」

          人を信じれば 裏切られて 優しさにふれて 嫌いになりかけていた 人を好きになる 何度も 何度でも  押し寄せては引いてく 波のように繰り返される 昨日 今日 明日 巡る季節は同じような 今日をまた 僕らに強いるだろう 金もない夢もない宛もない どうしようもない僕らに 残された希望があるならば 欲望が希望に変わるだろう とりあえずうまいもん食いたい 高級車が欲しい タワマンに住みたい 自分が寂しいときに 誰かを求めるのにあなたが寂しいときには

          実話怪談・祟「ナマクビコロコロさん」

           顔中に無数の穴が空いている。  五歳になる息子が、蓮根と名付けて犬猫みたいにその何か分からないものを転がして遊んでる。 髷を結った生首だけ。  「そんなものさわるんじゃありません」と五歳の子の手をひっつかんだ。  白い歯を見せて、笑う母の鋭い目線が突き刺さる。  「二人とも見えている」霊感をたずさえたK氏は、そう思い、  「あの、いつもいるんですか?」  「いつもじゃないわね、お盆とかになるとどこからか入ってきちゃうのよね」  蓮根と呼んでいた生首を遊び道具

          実話怪談・祟「ナマクビコロコロさん」

          実話怪談・皐月「ラジヲの木」

           都内世田谷区にある小船さんの家の庭にある木から歌が聞こえてくることがある。 耳を近づけてみるとラジオのような周波数の音に似ている。 あまり電波が良くないのか時折途切れて聞こえない。そのうちに一言だけしか聞き取れなくなる。  聞こえるだけの言葉をつなぎ合わせると、 (な に み て ん だ こ の や ろ)という言葉になる。  聞き取れたと同時に庭にはそんな木はないことに気付き恐くなり木から耳を離すと木は跡形もなく消え去っている。  かわりに地面に抉ったような深さ

          実話怪談・皐月「ラジヲの木」

          「流れ星」

          いつもなんとかなると 思ってはいても なんともならないことばかり ある世の中だな 周りが変わったんじゃなく 自分が変わったんだろう 良くも悪くも まっすぐに背筋を伸ばして 生きているようで いつの間にか自分より 弱い立場にある人を 見てあざ笑っていた気がする 背筋を伸ばして 見上げた空は夕焼け 真っ赤に燃えていた 何もかも失ったはずなのに まだ泣く余裕があったんだな 夜になって気づくと独り 自販機の影で 逃げ遅れたように群れからはぐれた星を

          「磁石」

          引き合う力がまだ 僕らにあるのなら 明日もまた笑って 昨日の失敗も なかったように 朝にはホットケーキ なんか二人で 食べてるはずだ 罪悪感を抱きつつ 二人で食べる 甘い甘い人生の 後味はたとえ苦くとも 愛だなんてごまかして 偽りの幸せの中で なあなあの日々を 私鉄に揺られながら 落ちる夕日を窓から 見ては泣きたくなる この気持ちを忘れなければ 明日もまたあなたに会える ただ優しい人でいられる それもいいな それがいいな だから 今

          真・実話怪談「コマーシャルソング」

           (この○なんの○……)という歌が流れ、木が画面の中央に映っているという有名なCM曲があるが、  とある企業のCMなのだが私が子供の頃にはよくやっていたが最近は見なくなった。  都内に住む村岡さんが子供の頃に居間でテレビを見ていると そのCM曲が隣室から流れてきた。隣室にもテレビがあるのでおばあちゃんかおじいちゃんがテレビを観ているのだろうと思った。  曲に合わせて家族の誰かが歌を歌っている。だが、音程がまるで合ってはいない。  外れた音程の歌声に下手くそだなあと思っ

          真・実話怪談「コマーシャルソング」

          「コンセント」

          優しくしてあげたいのは山々だけど あなたを見ていると なぜか細かいところが目がついて 神経質な私はついあなたに辛くあたってしまう 悪気はないのに 気づけばいつも 喧嘩ばかりしてる気がしているよ 愛なんて 言葉にするのも恥ずかしい 愛なんて 口にするのも烏滸がましい コンセントみたいに なにかでつながっていたかったから さよならは 言わないまま終わらせる恋だって間違いじゃないはずだよ。