その他の気になったこと、まとめ

話中のペットの違和感は最後まで変わりませんでした。
寝方は猫っぽいけど横から見たらやっぱり鼬です。
あと当時は純粋な和猫しかいないのでマンチカンのようなかわいい短足猫は存在しません。
それから肢の先も猫ではなく見えます。
何を参考に書かれたのか分かりませんが『前肢後肢ともに』兎の『前肢』に似てます。

猫の肢は爪が出し入れ自在なので通常は引っ込めています。
あのペットの爪は出しっ放しです。
肢先の形も違います。
やっぱり一番近いのは兎の前肢ですね。(ただ兎の爪はぱっと見で視認できる程ではないです)
兎や犬は地面を走る時のスパイクとして爪が常時出ています。
猫では地面に付く程爪が出ることはあり得ません。
関節にも違和感あります。

ペットについてまとめると、パーツごとの動物の種がバラバラに見えるのと、加えて耳とそれ以外のデフォルメも不統一ということになります。

次は人物についてですが、若様の帯が女帯なのはなぜでしょう。
これも伏線か何かなのでしょうか。

あとキャラのドアップが多すぎるではないかと。
前回までは主に若様について書きましたが男の子も同じです。
二人ともカメラワークの流れがわかりづらくストーリーが分断してます。
「顔漫画」回避のためロングと組み合わせてるのかもしれません。
が引きとズームが極端すぎて流れが寸断されてます。

ドアップの無駄な多用は読者の視線の流れをいちいち止めてしまうので読みづらいと思います。
なので、ストーリーより「この素敵な顔を見て見て、美形でしょ魅力的でしょ!」アピ優先に見えます。
気合い入れた顔ばかり(しかも他人の写真や絵の寄せ集めに見える)だと読者的には押し売り感と違和感で読むのがしんどくなります。
見せゴマ決めゴマは緩急の中でここぞという場面に絞って使えば効果的ですが、ずっと決めゴマが続くのは息苦しくて疲れますし流れも良くないです。

それと手を意識しすぎていると思われます。
手の頻出がちょっと異常というか。
のでストーリーより顔と手の方に意識が行きすぎているように思います。
その割に書き慣れていなく手の形や描線の統一感もないのでこれも「他人のつまみ食い」の寄せ集めかなぁと。

結局「他人のつまみ食い」の寄せ集めで盛るからか絵柄もバラツキがあります。
そっちばかり気を取られててキャラの内面や個性を作り込んでなくて空虚に見えます。

だからキャラが自律的に動かないのだと思います。
元々バラバラの寄せ集めで書いたキャラをぼやけたストーリーに無理矢理合わせて動かすだけなので棒演技なのだと思います。

形だけならロングで全身も書いているものの書き慣れてないことがわかります。

まず動きがぎこちないです。
人体デッサンも一見のぱっと見ほどには出来てないです。
奥行の表現も出来てないです。

そして躍動感がないと思います。
躍動感は「他人のつまみ食い」では表現出来ません。
他人の参考画は結局静止画でしかないので。

本当に動きがある絵は効果線がなくても躍動的です。
「効果線だけたくさん書いた静止画」は無理をした静止画であって躍動感のある絵ではないです。
もしも見て書けば簡単に書けるという考えならアクションを舐めてると思います。

こういったことを考えるとこの方が本当に書きたいのは「ストーリー漫画」ではなく「グラビア的なイラストレーション」なのでは。
イラストレーションと漫画は切っても切れない関係ではありますが同じものではありません。
イラストレーションの見せ方と漫画の読ませ方は違います。

致命的要改善点(抜粋) でも指摘したように

・ストーリー運びがまるで出来てない
・説明台詞が致命傷
・キャラ立てが出来ていない(内面や個性の描写がない)
・コマのアップとロングがアンバランス
・キャラをガワで盛る以外の労力が割かれていない
・無駄エピソードの省略、刈り込み、取捨選択が出来てないのでストーリーがぼやけて理解しづらい

と商業レベルの漫画に挑戦するには穴が多すぎるように感じます。

ですから総評としては少しお人形さん顔が書けるくらいの画力の人が、「他人のつまみ食い」でガワ(顔、ポーズ、手、動物など)を継ぎ接ぎしてお人形さんを作ったと。
更にそのお人形さんを無理矢理動かしてみて何とか形だけ漫画的体裁にした、という様に見えます。
ストーリーは思いつきをただ追うだけ、カメラワークはグラビア風アピールで流れも悪くストーリー上の必然がない。

全体的に漫画という媒体の各構成要素の理解と練度が足りないと思われます。

練度不足自体が悪いのではありません。
気になるのは「他人のつまみ食い」で上っ面だけ誤魔化して自分も読者も騙そうとしているように見えることです。

「上っ面を誤魔化すことだけ」を頑張っているように見えるのです。

その頑張りの労力の内のほんの少しだけでも考証やストーリーの展開の工夫や読者視点への気配りに回せばかなり違う出来になったと思います。
元々書けない人ではないのでしょうから。

それをBLだファンタジーだで調べることを一切否定してキャラのガワだけ(他人のつまみ食いで)頑張って中身はおざなりでそれを指摘されても開き直るとか果ては指摘した私を通報しましたとか。

昭和の素晴らしい漫画の良さを後世に伝えたい方のやり方とはとても思えないのです。

厳しい内容になりましたが、漫画と読者に対する認識と、ご自分の作品に対する責任感の両方に甘さがあるようです。

作品はただ何となく書けば人目に止まる性質のものではありません。
人気作にはある程度の方法論が確立しています。
漫画を構成する各要素(ストーリー、絵、キャラ立ちなど)はある程度確立した方法論に沿ったものになっています。
(意図せずとも気づいたら結果的に方法論に沿っていたものが一番人気が出やすいです)

勿論それらの各要素が全て100点でなくてはいけないわけではありません。
しかしどの要素も足りないのであれば、それは商業ベースに乗せるにはまだ早いと思います。

もう少しご自分の作品に対する客観性と他の人の作品への敬意と読者への責任感があった方が良いのではと思います。

たくさんのご経験を持つ年齢の方とのことですから、それを活かして書くことは可能だと思います。
しかし歳を重ねてるからといってまともに書いたこともないものまで書けるわけではありません。
それを他人のつまみ食いで補っても不自然になるのです。

仮に作品がつまみ食いだけで出来ているなら乙部のりえ未満になります。
乙部のりえは少なくともマヤの演技の結果だけは完璧にコピーしたのでつまみ食いではないです。
彼女はある意味その部分だけはまともに取り組んだと言えます。

好みのファッションと似合うファッションは別、とよく言われます。

書きたいものと書いて人気が出るものも同じではないと言えるでしょう。

これは鳥山明、桂正和両氏を世に送り出したことで有名な鳥嶋和彦氏が各メディアでのインタビューでたびたび指摘していることです。
漫画に対する考え方については氏の各インタビュー記事が一番参考になると思います。
「Dr.マシリト 最強漫画術」はそれを低年齢向けに最低限だけコンパクトにまとめたものなので少々物足りないと思います。

本当に書きたいものならつまみ食いではなくてきちんと向き合うことをおすすめします。

耳に痛いことばかり書きましたが今後の執筆活動でのご活躍をお祈りします。

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