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あの人の記憶

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昔のあなたが好きだった。

子どもの頃はあどけなかった君が、気がついたらどんどん骨っぽくなって、彫りまで深くなっていたのはなぜだろう。
昔から背は高かったけど、高校生の頃には180センチを超えていて、びっくりするほど大きかった。
私はまるでリカちゃん人形のようにお姫さま抱っこをされた。その感覚はいまだに覚えている。

あなたがもう少しあの時のままなら、と思う。小学生の頃、転んだ私を介抱してくれたあなた。棘を抜いてくれたあなた

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ロマンティックエロス〜あなたのそばの木村〜

ロマンティックエロス〜あなたのそばの木村〜

さわやかな風を感じる午後12時ごろ。
隣のうちから盗んだ、20代オーエルの下着を嗜んでいると、実はそれはその娘の母親の下着で、えっ、これを40代が!?と驚きながら、リボンブラ(カラーはブルー)をひと口含んで吐き出した。

世の中かわったなぁ、と思うのである。
岡崎体育はおっさんになっていて、おっさんである自分を受け入れていたし、ゲスすぎる泣ける不倫をされた側芸人のアンタッチャブルな方は、すっかりお

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そこを開いて覗いたら

そこを開いて覗いたら

美織は見てしまったと思った
いま自分の隣の男が
寝息をたているのを良いことに
彼のスケッチブックを
覗いてしまったのだった

美織はがパラパラと
ページを捲ると
屹立したペニスが書かれていて
そこには夢の詳細が
書かれている

美織はそっと閉じた
そして他のページをめくった
女の人の胸が描かれている
それは自分のよりも
いくばくか
豊かだった

彼は相変わらず
寝息をたてている。
美織は布団を被ろ

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愛とタバコをくゆらせて

愛とタバコをくゆらせて

愛がないと知ったのは
まさに行為の最中で
私は何も言えなかった

愛がないのはわかるのだけど
愛がある状態が分からないから
どこを指摘したらいいのかわからない

彼から出たものはとても少なくて
「こんなことにならないように、しておいたんだ」
と、タバコと一緒に彼がいう。

今なら
その惨めで品もないくせに
プライドに満ちた
いいわけの理由がよく分かる。

タバコは嫌いじゃなかった。
私も時々吸うと

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あなたの事が好きだから

あなたの事が好きだから

ずっとずっと好きだった。
もう君だけを思い続けてる。

ずっとずっと好きだった。
ずっとふわふわなその感覚
君だけにしかないから。

ずっとずっと好きだった。
ずっと変わらない優しさ
私のことを忘れないで。

ずっとずっと好きだった。
どんなに強くあなたを抱きしめても
あなたは決して
変わらない。

ずっとずっと好きだった。
ずっとあつい
この感覚
これこそ私が
求めていたすべてだった。

好きで

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あの人の記憶3

あの人の記憶3

ずっとずっと好きだった
何もかも忘れるくらい
すべてどうでもよくなるくらい

ずっとずっと好きだった
どうしても忘れられなくて
どうしようもなく
かなしくて

ずっとずっと好きだった
誘ったのは私だけど
そう仕組んだのは
彼だった

ずっとずっと好きだった
都合よく利用するのは
わかってた
もっともっと欲しかった
急に大人になるのは
無理だった

ずっとずっと好きだった
重ねられた
いいわけと怠惰

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ほんとうにあいしてる?

ほんとうにあいしてる?

「ほんとうにあいしてる?」
遠い昔のことで一体いつの話なのか全く記憶にないのだが、サザエさんかちびまる子ちゃんが放映される時間帯に、そんなことを呟くCMがあったのを覚えている方はいらっしゃるだろうか。

ほんとうにあいしてる?
一体彼女は何を疑問に思っていたというのだろう。
まだいたいけな少女のはずなのに、その言葉はその言葉だけの重さで、重くもなく軽すぎることもなく発音し、それは全国に放送された、

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あの人の記憶2

あの人はすごくいいかげんだから。

私よりかなり年上の、美しく色っぽい声の持ち主の女性に、恋愛を相談していて言われた言葉だ。
なんとなくそんな気はしていたのだけど、やはり2人には接点があったのだ。

私の恋の相手も、またかなり年上で、私はその人の両手の中でコロコロと転がされていた。
それでもその時は、軽くあしらわれたり、ぞんざいに扱われている気はしなかった。
あの人の私を見る目は強かったし、なによ

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あの人の記憶

あの人の記憶

あの人に最後にあったのはもう随分前で、あの人に別れを告げた時、私はもうほとんどその身一つだった。
キャリーバッグに衣装を詰めてアトリエを出ると、もうほとんど何ひとつ残ってないことに気がついて、からっぽになったこの身体をどう扱えば良いか、すっかり分からなくなっていた。

私は小さな踊り子で、アルバイトの絵画モデルだった。

ただ動かず、一点を見つめるだけでお金を貰えるその仕事は私にはとても便利で、食

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