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会話の型

こんばんは。大阪人です。

僕が営業マンをやってよかったと思うことのひとつが、会話の型を身につけることができたことです。会話術(というほど大層なものではないですが)は、仕事意外でも有用なため、人生のどこかのタイミングで一度徹底的に学び、実践し、反復することで型を身につけると、その後の人生が少し明るくなります。

自分で言うのもなんですが、会話の型を身につけると、相手はコミュニケーションを取るのがすごく楽になります。そうです。自分ではなく、相手が楽になるのです。なぜなら、会話がとても自然に流れるからです。

会話の型がいい加減な人と話すと、コミュニケーションがぎこちない感じがします。なぜなら、会話が唐突だったり、不自然だったりするからです。

ときどき、個性を出すためにあえて型にはまらない会話をしようと頑張る人がいますが、相手はたまったものではありません。その会話はとても自己満足なものになるでしょう。

今日は、僕が営業時代に学んだ会話の型のうち、すぐに真似できるものを3つお伝えします。

1.能力は受け身に言い換える

これは質問の型です。いついかなるときでも、相手の能力を問う質問はしてはいけません。相手の能力を問う質問というと「あなたは石油の埋まっている場所がわかりますか?」みたいなことか?と思う人がいるかもしれませんが、そんな壮大な話ではありません。もっと些細なことでも、相手の能力を話題にしてしまっていることは多々あります。たとえば、「これ知ってる?」と聞くときです。これは、「知っているかどうか」つまり、「知識があるかどうか」という能力にフォーカスしてしまっています。知らない場合、相手はちょっと恥ずかしい思いをするかもしれません。小学校時代に心ない同級生から、「え~!そんなことも知らないの?!」とからかわれた記憶がフラッシュバックして悶え苦しむかもしれません。

じゃあ、相手に「知ってるかどうか」を質問したいときはどうするか。そんなときは、「聞いたことがありますか?」と質問します。もしくは「説明を受けたことがありますか?」と言い換えます。「聞いたことがある」も「説明を受けたことがある」も、本人の意思ではコントロールできない「受け身」の話です。つまり、「知らない」のは本人の責任ではなくなります。能力が低いから知らないのではなく、機会に恵まれなかったから知らないのです。次の質問を読んで、どの質問が一番答えやすいか感じてみてください。

■会社にて
・このプロジェクトの目的を理解していますか?
・このプロジェクトの目的を知っていますか?
・このプロジェクトの目的を聞いたことがありますか?
・このプロジェクトの目的について説明を受けたことがありますか?

どの質問も、聞きたいことは一緒です。要は知っているかどうか確認しているのです。1番目の質問だとどうでしょうか。言外に、「お前はバカなのか?」というニュアンスさえ含んでいそうです。めちゃくちゃ能力を低く見られている感じがしますよね。一方、4番目は質問された側だと、知らなくてもホッとしませんか?「いえ、説明はまだ受けていません。ぜひ聞かせてください。」と返せば悪い印象を与えるどころか、むしろちょっと積極的な感じさえします。このように、能力を問う質問を受け身に変えてあげるだけで、驚くほど相手は答えやすくなります。

ちなみに、彼女が彼氏に誕生日を覚えているか聞くときも

・私の誕生日覚えてる?
・私、誕生日教えたっけ?

だったら、後者のほうが彼氏はホッとします。彼氏が誕生日を覚えていないのは、自分の能力の問題ではなく、教えてもらう機会がなかった(ことにしてもらえている)からです。

これが、1つ目の会話の型です。質問するときのマナーみたいなものですね。

2.質問はmeceな2者択一から

これも質問の型です。しかし、これは毎回使わなければならないわけではありません。相手がこんなこと聞かれても唐突で答えにくいだろうな~と予想したときに使う型です。

典型的なダメな質問が「趣味は何ですか?」です。趣味というのは、具体的なようで意外に抽象的な概念です。たとえば、あなたが異性に「趣味は何ですか?」と聞くとき、何が知りたいんでしょう?「何が知りたいって、もちろん趣味だよ」と聞こえてきそうですが、本当にそうでしょうか?ぶっちゃけ、趣味ってなんなんでしょうか?

僕が相手の趣味について質問するときは、「定時後の過ごし方」や「土日の過ごし方」というように質問内容を変えます。なぜなら、「趣味」とは「余った時間の使い方=限りある時間を何に使っているか」に他ならないからです。

しかしそれをストレートに「趣味って何ですか?」と聞くと、相手によっては答えに困ってしまいます。「趣味か~。趣味ね~。。。趣味。ん~、、、なんだろう?映画とか?カラオケかな~。でも趣味ってほどでもないか。ん~……」みたいな感じです。

なので、趣味を聞く代わりにこんなふうに質問すると相手は答えやすいです。「土日はよくお出かけするんですか?それとも家で過ごすことが多いですか?」この質問は、2択なので答えやすいうえにmeceです。
2択でも、「土日は野球観戦をすることが多いですか?それとも喫茶店で小説を読むことが多いですか?」ではダメです。選択肢が絞られ過ぎて相手はキョトンとしてしまいます。まずはmeceな2択から始めましょう。

これは趣味以外でも使えますし、僕は日常生活でも仕事でもかなり多用します。

たとえば仕事のMTGで、来期の目標について質問するとします。このとき、「来期の目標は何でしょうか?」というオープンな聞き方は、あまり答えやすい質問とはいえません。こんなときは「現場の私たちとしては、売上UPとコスト削減だったら、どちらをより強く意識すべきでしょうか?」と質問します。こうすると、2択になるので上司は答えやすくなります。そしてこの質問はmeceではないように見えて実はかなりmeceです。会社の目標は利益の増大なので、分解すると売上アップとコスト削減以外には選択肢がないからです。でも念のため、上司が答え終わったら「ほかに意識することはありますか?」と、第三の案がないことを確認しておきましょう。

ちなみに、僕がこの型を一番多用する場所は、面接です。ただし、こちらが面接官という立場ですが。応募者の言葉を引き出すときには、このスキルがあるのとないのとでは、天地の差があります。いきなり「志望動機って何ですか?」と質問しても、普通は答えられません。(丸暗記してきている人は答えられますが、聞きたいのは用意した志望動機ではなく、本音です)

そんなときは、答えやすい質問から始めて、徐々に核心に迫っていきます。たとえば、

「●●さんが現在〇〇株式会社に在職中ということですが、転職について考え始めたのはつい最近ですか?それとも、結構前から考えていましたか?」と聞きます。それに対して「つい最近です。」と返ってきたら、「最近なんですね。何かきっかけがあったんですか?」と聞きます。
反対に、「結構前から考えていました」と返ってきたら、「具体的に、いつ頃から考えていましたか?1年前とか……もっと前ですか?」と、ここでもさりげなく2択を織り交ぜて質問します。そうすると「3年くらい前からだと思います。」と、具体的な時期が返ってくるので、そこで改めて「そのとき、何かきっかけがあったんですか?」と聞きます。「つい最近」の場合はすぐにきっかけを聞きますが、「結構前」の場合には、具体的にどれくらい前か?という質問を挟みます。これは、きっかけを思い出す時間を与えるためです。どれくらい前か?と質問された応募者は、頭の中で算数をしているわけではありません。キッカケを思い出しながら、それがどれくらい前の出来事なのか、いろんな出来事と紐づけながら時期を割り出しています。そうする時間を与えることで、きっかけについてより具体的に答えてくれるようになります。

きっかけについて話してくれたあとも、質問は続きます。「なるほど。そんなきっかけがあったから転職を考えたんですね。」なんて言って終わってはいけません。このあとは、「そのきっかけが起こった後、●●さんの転職に対する気持ちはどのように変わっていきましたか?バチンとスイッチが入って、転職に対する気持ちが一気に高まりましたか?それとも、ゆっくりと時間をかけて、転職してみたいという気持ちが徐々に膨らんでいきましたか?」と質問します。

こういう質問をすることで相手の核心に徐々に迫っていける一方で、相手の精神的な負担は大きくありません。meceな2択なので、答えやすいです。しかも、一歩一歩、細かいことを確認しながら会話を進めているので、ウソがつけません。このやり方で進めると、最終的には「志望動機は?」と言う質問はしなくなります。聞くまでもなく、会話の中でわかるからです。応募者も、用意した志望動機を語ることなく、自分の転職の背景にある物語を語ってしまいます。

と、コミュニケーションの型について話しているはずが、脱線して面接テクニックの話になってしまいました。本来言いたかったのは、応募者から本音を引き出す方法ではなく、meceな2者択一って答えやすいよ!という話なのでお間違えなく。

3.なぜ(Why)は何(What)かいつ(When)に置き換える

なぜ?は相手の本質に迫る質問であるがゆえに、会話で使うと一気に空気を重くしてしまいます。尋問のようになってしまうのです。

次の会話を見てください。

A:今回の私のミスの原因ですが、どうやら私はこの業務のやりかたを間違って覚えていたみたいです。
B:なぜ間違ったやり方を覚えてしまったんですか?

A:今回の私のミスの原因ですが、どうやら私はこの業務のやりかたを間違って覚えていたみたいです。
B:間違ったやり方を覚えてしまったきっかけに心当たりはありますか?

A:今回の私のミスの原因ですが、どうやら私はこの業務のやりかたを間違って覚えていたみたいです。
B:その間違ったやりかたをいつ頃身につけたか心当たりはありますか?

1番目はキツいですよね。聞かれた側も、内心「そんなんこっちが知りたいわ」と思っていることでしょう。
では、2番目、3番目はどうでしょうか?

なぜ?という原因追及ではないためとても答えやすい質問になっています。それでいて、どちらも最終的には原因にたどり着くことができる質問です。きっかけなんてほとんど原因みたいなものですし、いつ身につけたかがわかれば、そのとき何があったか聞くだけです。

まとめ

いかがでしたか?会話の型といいつつも、結局すべて質問の型でした。これには理由があります。会話は、質問する側が主導権を握るので、質問するときにこそ細心の注意が求められるからです。逆に、もし質問する側に悪意があれば、回答者にとって、その会話はかなり厄介な展開になります。2者択一も、使い方を間違えると、相手を破滅させてしまいます。

ちなみに僕は保険会社時代、支店長から「お前はやる気がないのか、才能がないのか、どっちだ?」という2者択一をくらったことがあります。冷静に考えると、「お前のパワハラマネジメントが悪い」が答えなのですが、やはり人間は2者択一で質問されると、どちらかを選ばなくてはならないと感じてしまうものです。僕なんてこのテクニックについて熟知していたにもかかわらず、その場の雰囲気と、支店長のヤクザみたいなプレッシャーに飲まれて、「やる気がないって答えたら殺されるから才能がないって言うしかない」ってなってましたからね。

会話において一番大切なのは、自分の心の在り方です。自分が聞きたいことを直球で聞くのではなく、どうすれば相手がこたえやすいか、どうすれば相手が気持ちよく前に進めるかを考えながら質問することが大切です。

知らんけど。

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