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今晩の主菜はお母さんの形見分けのお皿なのだ。

家人のお母さんの遺品整理、なかなか大変なようだ。

お母さんと言う存在は、まず、物持ちが良い。

戦後の何もない時代を生きてきたひとたちには、デパートやスーパーの紙袋や、包装紙だって貴重品なのだ。

なかでも、家人とお姉ちゃんを悩ましているのが食器の数々。

「これも使ってないみたい」

そう、丁寧に梱包されたまま、一度も使われた形跡のない銘品が続々と出てくる。

捨てるに捨てられない。
姉妹が、まだお母さんの”娘”だった頃の食器。
娘たちが独立して家庭を持ってからの台所の道具。

捨てられないのだ。

ということで、先週末、わが家に引っ越して来た食器のなかから、このお皿を選んで主菜とした。

折敷も、お盆も無傷。

飲みながら、食べながら、折敷が空いたらお盆に手を伸ばす。

お母さんお気に入りの逸品。

あなたの娘たちは、もうばんばん使っちゃう、って。


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