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「ブラックジャックによろしく」2巻には仕事に大事なことが全て詰まっている。

先日、ショッキングなニュースが流れてきました。「ドラゴンボール」作者の鳥山明さんが亡くなりました。手塚治虫、藤子不二雄、鳥山明が日本の三大漫画家だと僕は認識していますが、僕らの世代は圧倒的に鳥山明でした。
小学生時代に、少年ジャンプが発売される月曜日をどれだけ心待ちにしたか。

孫悟空がピッコロ戦を終えて、いきなり少年から青年になり、チチと結婚して悟飯が生まれたこともびっくりしたし、フリーザ編のスーパーサイヤ人の変身であまりのかっこよさに震えました。

漫画が与える影響はかなり大きいと言います。

「キャプテン翼」があったことにより、サッカー人気が高まりJリーグにつながったとされる説もあるし、昨今のバスケ人気も間違いなく「SlumDank」を読んでバスケを始めた世代の影響があるでしょう。

飲食でいったらなんかあるのかな、「ミスター味っ子」とか「将太の寿司」とかでしょうか。ちょっと弱いな。 「美味しんぼ」は飲食というよりはグルメ漫画ですしね。


僕がおすすめの漫画は「ブラックジャックによろしく」です。結構有名ですので知っている人も多いと思います。研修医が主人公の医療漫画です。

僕は全巻読んでいるわけでもなく、ただ繰り返し、この漫画の2巻目を何度も読み返しては、毎回号泣しています。

仕事で大事なプライドが全て詰まっています。


今日もこれ書く前に久しぶりに読み返したら、号泣してしまい、細い目が腫れています。花粉症ということで家族には説明しています。

簡単なあらすじを言うと、主人公の研修医の斉藤が初めて請け負った患者の宮村さんが心臓病と肝硬変を併発していることが発覚します。
今すぐにでも手術をうけなければいけない状態なのですが、斉藤が勤める名門の大学病院には、その手術を執り行えるほどの充分な技術をもった医者がいないことと、執り行うにも大学病院側の都合で、時間がかかってしまうのです。また患者さんにその状態をすぐに伝えなければいけないのですが、いたずらに不安をあおるのも良くないから隠しておくように上司から言われます。

そこで、研修医の斉藤はご法度とされる行為を行います。
大学病院以外の優秀な医者を探し始めたのです。
名門の大学病院ににらまれたくない他の医者は皆、断ります。

そんな中で、斉藤は北三郎先生という、演歌が趣味の(どこからどう見ても北島三郎の)先生に出会います。

北先生は、年間200件以上の手術を行ってきた名医です。大学病院は医者が10人いて合計で年間12件しか手術をしていません。大学病院は経験を積むには圧倒的に手術の数が足りていないんです。
そして、その患者に対する熱い責任感に斉藤先生はぜひ、北先生の執刀を行いたいと依頼します。

しかし、問題がありました。北先生は2週間前にメスを置いていた(手術をやめていた)のです。

何千という手術をやってきた中で、全ての患者を救えたわけではありません。しかし、北先生は仕事として手術に向き合ってきました。
2週間前に人工心肺の手術を行った2日後に、70歳のおじいちゃんが脳のに老廃物が詰まり亡くなりました。人口心肺という通常の天然のものではないポンプを使ったことにより、今まで蓄積された老廃物がぽろっと取れてしまったのです。

医者が非難されることではありません。北先生は、その日もスナックに行き、毎晩歌っている北島三郎の演歌を歌おうとしました。

しかし、声が出ずに、涙が流れ、止められませんでした。

それはおちょこにお酒をつぐようなものだと北先生は言います。手術した患者が亡くなる度にその一滴一滴とおちょこに酒がたまっていって、ついには溢れていってしまったのです。
北先生は手術から引退をしました。
しかし、自分が育ててもっとも信頼できる鳥一郎(どこからどう見ても鳥羽一郎)先生に執刀させると斉藤に約束しました。

斉藤も当初は感謝したのですが、病院に戻り患者の宮村さんとのやりとりを経て、最終的にはやはり、北先生に執刀して欲しいと懇願します。

北先生は怒ります。「それはお前のエゴだろう。優秀な鳥先生がいるのに、引退している自分に頼むのは。いくら患者の為とはいえ。」
と言ってから、自分の言葉に我に返ります。

この若い研修医は、患者の為に動いている。自分こそがエゴではないか、と。

鳥一郎先生も立ち合いの元、北三郎先生の患者の宮村さんの手術が決まります。

宮村さんは手術室に入る時に、斉藤に感謝の言葉をのべます。

「世の中の同じ病気で苦しんでいる人が何百万人もいる中で信頼できる医者に会える患者は何人いるんだろうな。俺は斉藤先生に会えて幸せだよ。たとえ手術が失敗して目が覚めることはなくても悔いはない。ありがとう。」

手術は順調にすすみます。北先生の圧倒的な手さばきにオペに立ち会った斉藤もびっくりします。鳥一郎先生も「さすがだ、まったく衰えていない。」と感嘆します。

そんな中、ごくまれに起こる心臓の突発的な暴走が始まります。

止まらない流血、荒れ狂う心臓。心臓マッサージを必死に行う北先生に、「もう無理だ。自分が無理やりお願いしたせいで宮村さんが亡くなってしまう」と斉藤は怖くなり、目を背けます。

「医者は患者から目を背けるな!」

そんな斉藤に鳥先生は怒ります。

そして、鳥先生は北先生にこう提言します。
「ここは安全策をとって、人工心肺にしましょう。そうしたところで誰が北先生を責められますか。」

肝硬変を併発している宮村さんにとって人工心肺は手術後すぐはよくてもその後のリスクが高い。

「俺が責める!俺は俺の決断を信じる!」

その気迫に、その責任感と自信に

「この人が本物の医者だ。自分は医者になってよかった。」

斉藤が心の中でそう叫んだシーンで終わり、
最後に北先生と斉藤と宮村さんの最高の笑顔のスリーショットでその巻は終わります。手術は成功したのです。

あれ、なんか熱くなって長文書いてしまいましたね。

北先生の

仕事に対する責任感。


斉藤の患者を思う気持ちと北先生を

動かした熱意。


そして一時は医者に対して不信感を持った宮村と斉藤の

信頼。


全てが詰まっているんです。この2巻には。ネタバレどころか全部書いてしまいましたが、皆さんぜひ、読んでください。

北先生が、当初、熱意だけで自分に頼みに来た斉藤にこう言います。

「金にならん事のために動ける若さは嫌いじゃない。だがな、五年後にも同じことをしていなかったら、アンタ……ニセモノだぜ。」


その言葉もたまらなくいいんですよね。

漫画は最高です。人生の心理が詰まっている漫画こそカチアリ!


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