見出し画像

【企業分析】丸紅

8002 (東証プライム)
時価総額:3.8兆円
株価:2,270円
売上高:8.5兆円
営業利益:2,840億円

事業内容: 総合商社としての各種物品の売買及び貿易業
設立年:1949年
本社: 🇯🇵東京都千代田区大手町一丁目4番2号
代表者: 柿木真澄(代表取締役社長)
従業員数: 連結:46,100人、単独:4,379人
主要株主: 明治安田生命保険 2.19%、みずほ銀行 1.74%、損害保険ジャパン 1.74%

概要

東京都千代田区大手町に本社を置く芙蓉グループの大手総合商社。日経平均株価およびTOPIX Large70の構成銘柄の一つ。

丸紅東京本社ビル

三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事と共に五大商社の一つ。1960年代から1970年代前半には三井物産・三菱商事と並んでスリーエムと称される総合商社トップ3の一角であったが、その後伊藤忠商事が安宅産業を合併して力を付けたことや、住友商事の台頭、さらにはロッキード事件の影響などによって業績が低迷した時期もあった。

プロダクト・ビジネスモデル

丸紅は多岐にわたる事業セグメントを展開しています。主要なセグメントには以下のようなものがあります。

1. 生活産業グループ: 主に消費財や食品、日用品、ファッションなど、生活に密接に関連した製品とサービスに焦点を当てた事業です。このグループは、個人や家庭の日常生活に関連するさまざまな商品やサービスを提供することを目的としています。

2. 素材産業グループ: 石油、ガス、鉱業、電力などの資源とエネルギーに関連する事業を含みます。

3. エナジー・インフラソリューショングループ: 化学製品、素材、医薬品など、化学関連の製品に関連する事業が含まれます。

4. 社会産業・金融グループ
資産リース、金融サービスなど、ファイナンシャルサービスに関連する事業が含まれます。

これらのセグメントにおいて、丸紅は国際的に多くのプロジェクトとパートナーシップを持ち、幅広い業界にサービスを提供しています。

ここで、各グループにおける価値創造への取り組みの一例についていくつか紹介する。

①生活産業グループ(食料・アグリ)

Creekstone Farm Premium Beef

確立されたプレミアムビーフブランドを有する米国の牛肉処理加工業者

・高品質牛肉の「Creekstone」ブランドとして高い認知度を獲得

・丸紅グループ内の対見・ノウハウを活かした優れた工場運営と、適切な設備投貸による品質改善、製造効率化

・拡張投資による処理頭数の増加並びに製造コストの低減

・プレミアムビーフ事業領域の拡大並びにマーケティングの深化

2017年 Creekstone社へ出資参画

Creekstone社は米国カンザス州の自社工場で肉牛の処理・加工を行い、その牛肉を全米の高級ステーキハウスや量販店に販売しています。同社が取り扱う牛肉は、穀物を主体とした飼料を用いて米国内で肥育した品質の高いブラックアンガスのみです。付加価値の高い商品の供給と、丸紅グループのノウハウを活用したビジネスモデルを構築しています。

Creekstone社では、丸紅グループが積み上げてきた畜産事業の知見を活用し、優れた工場運営が行われています。また、肉牛の生産段階では、豪州における肥育事業である
Rangers Valley社との間での社員の相互派遣や情報交換により更に付加価値を高める方
策を模索しています。

追加投資による戦略の推進

買収後も継続して拡張投資を行い、工場の加工ラインの増設や流通倉庫の新設などにより処理頭数を拡大しています。また、工場処理水の設備拡張などの環境対策や、作業エリアの空調設備アップグレード、従業員の子女を預かる保育施設の開設など、労働環境の改善や福利厚生に関わる設備投資も積極的に行っています。

牛肉以外の副産物や内臓品などに付加価値を付けて販売するなどの施策により収益性を更に改善していきたいと考えています。

②素材産業グループ(金属鉱山事業)

チリ銅鉱山事業、豪州ロイヒル鉄鉱山事業

需要が見込まれるベースメタルのポートフォリオ

金属事業のポートフォリオは銅・鉄鉱石・原料炭・アルミニウムで構成されており、優良案件を厳選し競争力のある資産を積み増し、バランスの取れた収益基盤を有しています。

銅・アルミニウムは脱炭素社会の実現に不可欠な金属であり、電化社会、再生可能エネルギーへのシフトにより需要が大きく伸びると見込まれています。

鉄鋼は今後も経済発展とともに需要が伸長する見通しです。同時にCO2の排出量削減に寄与する還元鉄の需要が高まる一方で、脱炭素化の実現に必要な電炉活用や水素還元法の実装には数多くのチャレンジが待ち受けています。このため脱炭素社会への転換期において鉄鉱石や高品位の原料炭は引き続き不可欠な原料となっています。

「経済発展に伴う金属需要増加」と「持続可能な社会の実現に向けた環境対応」の両方に対応し事業推進

丸紅が持つ既存資産の増強・拡張や新規案件の開発により、持分生産量を維持・拡大するとともにコスト競争力を強化する方針です。

金属安定供給と環境対応という2つの社会的要請に応え、今後一層高まっていくベースメタルの安定的な調達・供給を行っていきます。

中期経営戦略GC2024(2023年3月期-2025年3月期)一戦略実践の3年間一

中期経営戦略GC2024の進捗(2023年3月期実績)

稼ぐ力の継続強化
・2023年3月期の実態純利益※は5,260億円と史上最高益を達成しました。

・コロナ禍やロシア・ウクライナ情勢の影響によって、販売価格の上昇やトレーディングにおいて商社機能を発揮する機会が増えるなど、事業環境の追い風を受けた影響を除くと、純利益の実力値は4,000~4,500億円程度と考えています。

・今後も非資源分野を中心に、競争優位性を有する既存事業領域に重点的に資本配分を行い、GC2024の間に4,000億円レベルの収益基盤をしっかり固めたうえで、更に継続して収益力の強化を図っていきます。

資本配分

・2022年10月に、GC2024には織り込んでいなかったGavilon穀物事業の売却が完了し、約3,300億円を回収しました。加えて、基礎営業キャッシュ・フローもGC2024の当初目標(3ヵ年累計1.3兆円)から上振れ余地が大きく、フリーキャッシュの拡大により経営の自由度は更に向上しています。

・2023年2月には新たな株主還方針を公表しました。

・フリーキャッシュはGC2024期間を通じて、一定程度を債務返済に充当し、その他を成長投資、株主還元の強化に活用していきます。

GC2024 3カ年累計 資本配分(営業資金の増減等を除く)(億円)

市場動向

総合商社業界の動向と現状(2022-2023年)

総合商社とは、「トレーディング」や「事業投資」を主に行う会社です。総合商社の仕事内容は分かりにくいものですが、その変遷をたどっていくことできちんと理解できるようになります。

「トレーディング」とは、原産者とメーカーの結びつきを行う仕事です。トレーディングは従来からある商社の仕事で、原産者とメーカーの仲介のような役割を果たします。

メーカーは商品や製品を製造するのに様々な原料が必要になります。しかしながら、それを直接買い付けるネットワークやノウハウを持ち合わせていません。そこで膨大なネットワークを持った総合商社が中に入り、原産者とメーカーを結びつけます。

一方で、1990年代のインターネットの普及に伴い、メーカーが独自に生産者を探して買い付けるいわゆる「商社外し」が発生し、「商社不要論」が叫ばれるようになりました。これに危機感を持った総合商社は、原産者、メーカー、小売(いわゆる川上から川下まで)に直接出資をしてバリューチェーンそのものを押さえる動きが生まれました。これが、「事業投資」の始まりです。

2000年代に入ると総合商社は、従来の「トレーディング」から「事業投資」へと本格的にシフトし始めます。こうした変遷の結果、現在の総合商社は「事業投資」が収益の柱となっています。総合商社は、様々な分野で持分法適用会社や連結子会社を所有しており(例:三菱商事は約1,700社の連結会社)、「持分利益」や「配当」などの形で利益を得るモデルが定着しています

ちなみに、総合商社はセグメントの中で「資源」の影響を受けやすい点が特徴です。したがって、総合商社の業績は資源価格に左右される場合が多く、資源価格が下落しているときは業績が悪化し、資源価格が上昇しているときは業績が良い傾向にあります。

2022年は世界的な「資源高」が追い風 7社が過去最高益

下のグラフは、主な総合商社業界の過去10年間の純利益の推移を示したものです。

総合商社の純利益の推移(出所:各社決算資料、グラフは業界動向サーチが作成)

グラフによると、直近の2018年から2020年までは減少傾向にありましたが、2021年と2022年に大幅に増加しています。2022年の総合商社6社の純利益の合計は4.5兆円でした。20年比で約4倍の驚異的な増加を記録しています。

近年の総合商社業界は好調な業績を残しています。世界的な金融緩和や渡航制限による労働者不足、経済再開期待などを背景に資源価格が上昇しました。とくに、2021年後半から2022年にかけては原油をはじめ、銅やLNGなどの資源価格が高騰。世界的なサプライチェーンも回復傾向にあり、2023年決算の総合商社は7社が過去最高益を記録しています。

総合商社業界 売上トップ5(2022-2023年)

2022-2023年は5社が増収、4社が増益となりました。世界的な資源価格の高騰が業績を押し上げました。とくに、三井物産や三菱商事、丸紅など資源・エネルギー関連が強い商社が業績を伸ばしています。

業績

2022年度の純利益ですが、前年度対比1,187億円、率にして28%増益の5,430億円となりました。

また、純利益から一過性要因を控除した実態純利益は、前年度対比370億円増益の5,260億円となりました。内訳は、非資源分野が3,200億円、資源分野が1,990億円となりました。いずれも過去最高益となります。

基礎営業キャッシュ・フローは、前年度対比136億円増加の5,842億円のプラスとなりました。また営業資金の増減等を除く株主還元後フリーキャッシュ・フローは、5,728億円のプラスとなりました。

バランスシートについては、株主資本は利益剰余金の増加等により前年度末比約6,400億円増加の約2.9兆円。またネット有利子負債は、ビロン穀物事業の売却代金を債務返済に充当したことにより前年度比約3,800億円と大幅に減少し、ネットDEレシオは前年度末比0.31ポイント改善の0.52倍と、当社史上最も低い水準になりました。

資源セグメントですが、電力は、英国において電力卸売・小売事業を行うSmartestEnergy社の収益拡大等により、前年度対比+320億円増益の540億円となりました。

金融・リース・不動産では、米国の中古車販売金融事業Nowlake社の収益拡大、米国航空機
リース事業Aircastle社の業績改善により、+150億円増益の400億円となりました。

建機・産機・モビリティは、建設機械事業の増益により、+40億円増益の230億円となりました。

航空・船舶は、航空関連事業における需要回復に伴う増益により、+30億円増益の310億円となりました。

一方、アグリ事業は、旺盛な農業資材需要を背景に、上半期好調であったHelena社は増益となったものの、肥料価格の下落に伴うMacroSource社の減益により4270億円減益の390億円となりました。

また、食料第二は、米国肉牛処理・加工業クリークストーン社が、市況上昇の追い風を受けた昨年の反動により減益となったこと等から220億円減益の250億円となりました。

金属は、市況が高値で推移した豪州原料炭事業が大幅な増益となった他、鉄鋼製品事業が好調だったことにより、前年度対比+130億円増益の2,010億円となりました。

エネルギーは、石油・LNGを中心としたトレード収益の拡大により+50億円増益の460億円となりました。

基礎営業キャッシュ・フロー及び株主資本とネット有利子負債

2022年度の基礎営業キャッシュ・フローは5,842億円と過去最高

Gavion穀物事業の売却に伴う回収資金を債務返済に充てたことにより、2023年3月末のネットDEレシオは0.52倍に改善
今後も財務規律を重視した経営を継続する

資本配分

2022年度のフリーキャッシュは約5,800億円。基礎営業CFの上振れ、Gavilon穀物事業の売却により大幅増加。
このうちGavion穀物事業売却に伴う回収資金約3,300億円(*2)は債務返済に充当。残る約2,500億円のうち、300億円を追加の自己株式取得に配分することを決定(2023年5月8日)

2023年度は、2022年度に投資の厳選・ずれにより増加したフリーキャッシュ約1,000億円を考慮した上で、繰り越したフリーキャッシュを成長投資、株主還元の強化、内部留保に活用

経営者

創業者

創業者・初代伊藤忠兵衛

丸紅は1858年、琵琶湖湖東(現在の滋賀県豊郷町)出身の近江商人である伊藤忠兵衛が“持ち下り商い”を始めたことで創業している。

そのため、同業の伊藤忠商事とは同根。その後、いったん伊藤忠と分割されたものの、戦時中に再度合併(大建産業)、戦後の財閥解体措置により再度両社は分割され、1949年に現在と直接つながる丸紅株式会社が設立された。

社長

柿木真澄 代表取締役社長

代表取締役社長は柿木 真澄 (かきのき ますみ) 氏。1957年、鹿児島県生まれ。ラサール高校卒。80年東京大学法学部卒業、丸紅入社。主に電力事業を担当し、2014年に丸紅米国会社社長・CEO(最高経営責任者)。16年に電力・プラントグループCEOとなり、19年4月から現職。

柿木氏は、丸紅の収益柱の1つとなっている電力事業に携わり、2016年4月からは電力・プラントグループCEOとして電力事業を牽引してきた。

柿木氏は丸紅の抱える課題としてこれまでの商品を基軸にした縦割りの組織体制を超える必要性を「1番の問題」と分析。「社長のリーダーシップのもと打ち破る」と強調した。こうした組織改革の必要性に迫られているのはどの総合商社も共通だ。丸紅がどのような形で進化を図るのかにも注目が集まる。

株価推移

記事をお読みいただきありがとうございます!^ ^もしよろしければご支援いただけると幸いです✨いただいたサポートはクリエイターの活動費に使わせていただきます!🙇‍♂️