第25回 銘柄を買う

さて、前回まで『risk management』の説明をしてきました。
そこで今回は、投資の『risk management』の活用について説明したいと思います。

何でも良いのですが、ある銘柄を買うとします。
何でも良いと言われたら、曖昧過ぎて困るという人もいるかと思います。
それでは、7203トヨタ自動車を買うとします。
結果が直ぐに分かった方が良いので、デイトレです。
朝一の寄りで買い、大引けで売るという投資法です。

そこで、騰がるか、下がるかの確率が五分五分、つまり50/50としましょう。
当然、動かなかった日は買値と売値が同じなのですから無視します。
売買手数料を「0」円としたら、確率的に資産は増えることも、減ることもありません。
売買回数が増えれば増えるほど、50/50の確率に収束して行くことは、数学的に決まっているからです。
つまり、売買手数料「0」円のSBI証券なら、株式投資による理論的な損失は生まれないはずです。(※SBI証券を勧めている訳ではありません)
この状況は、『no-risk』ですが、同時に『no-return』でもあります。

だから、『return』を得るためには、騰がるか、下がるかの確率を、少しでも自分に有利な方に傾けるだけで良いはずです。
50/50を60/40という感じに傾ければ良いのです。
60/40なら、10回中6回成功し、4回失敗するのです。
値幅がいつも同じなら、2回分勝ち越すので、その分資産が増えると言うことになります。

ところが、実際にデイトレを始めてみると、理論通りの結果にはなりません。
多くの場合は、理論倒れになっていることを、多くの投資家は経験しています。
私も投資を始めた初心者の頃に、嫌というほど経験しました。

それなら、理論が間違っているのか・・・・と聞かれても、この理論に間違いはありません。
ならば、どうして理論通りにならないのかということですが、それは理論通りに投資を行っていないからです。
つまり、投資家側の問題なのです。

そりゃぁ、値幅がいつも同じなんてあり得ないと言われそうですが、騰がるか、下がるかの確率同様、値幅の大きさも50/50のはずです。
また、自分が損をするときだけ値幅が大きいなんてことも無いでしょう。
なぜなら、値幅が大きくなるか、小さくなるかは、7203トヨタ自動車などの大型株では、自分の売買と関係ないところで決まるからです。
また、買いで取るのが難しければ、売りで取れば良いだけなのです。

さて、そんな状況で儲からない原因・・・・。

➀根本的に投資法が間違っている
確率を50/50から60/40に傾けるには、それなりの経験と努力が必要です。
知識や技量が身についてこそ、なせる技なのです。
この技が間違っているというのが、一番多いと思います。

つまり、50/50から60/40に傾けたつもりが、実は逆の40/60に傾けてしまっていたということです。
投資法というのは、儲けるために編み出されるのです。
ただ、100%成功する投資法はありません。
できるのは、限りなく100%に近づけるということだけです。

これが実は、近づいているのではなく、遠ざかっていたという笑い話にもならない事実が存在するのが、投資の世界です。
なぜなら、多くの投資家は、チャートを使います。
チャートの形を参考に投資を組み立てますが、経験が浅い投資家は、チャートをついつい絶対視したりします。

また、勝利回数に拘り過ぎて、値幅を無視してしまうこともあるいでしょう。
騰がる確率が8割、下がる確率が2割で、騰がった時の値幅が10円、下がった時の値幅は100円と想定すれば、期待値的には『high-risk』=『low- return』になります。
なぜなら、『0.8×10=8』に対して、『0.2×100=20』だからです。
ところが、勝ちだけに目を奪われると、『8』に対して『2』になります。
つまり、『low-risk』=『high-return』に錯覚してしまうからです。

➁試行回数が不足している
次に考えられる原因は、試行回数不足です。
確率というものは、回数を増やせば増やすほど、理論値に収束します。
ところが、予想外の損失を出してしまうと、直ぐにこの投資法は良くないと判断してしまい止めてしまいます。
つまり、理論値に収束するほど試行していないのに途中で止めてしまうということです。

かくを言う私も、コロナショックの後に、自分の投資法を捨てようと考えました。
なぜなら、まだ底打ちしていない局面で、総資産の8割が吹き飛んでいたからです。
明日下げれば、全財産が飛ぶというギリギリの状況まで追い込まれたのですが、そこで何とか反転してくれたので、今の私がある訳です。
含み損を見て「吐き気」がしてからが投資などとバカなことを言っていたのですが、それを止めるべきだと自覚しました。

実際、コロナでの暴落は、数億年に1度という確率でした。
これは、『risk management』的に言えば、『hedge』する対象ではなく、『allow』する対象です。
なぜなら、この確率の問題まで『hedge』していては、『return』がはるかに小さくなり、『risk』を冒す意味が無くなってしまうからです。
このことを理解していても、心情的には理解できないというのが人だと思います。

ま、儲からない大きな理由は、この2つだと考えてください。

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