第32回 複利の効果は投資だけではない①(経済)

ここまで数回に渡って、複利の効果を説明してきました。
複利については、大分理解してもらえたのではないかと思います。
そして、ここからが重要です。
この複利の原理原則が世界を支配しているという現実も、また理解しなければならないということです。

去年、日本はドイツにGDPを抜かれて世界4位に落ちました。
そして中国に抜かれて世界3位になったのは、2011年と10年以上前です。
昭和時代の中国のイメージは、自動車は贅沢品で、国民は自転車を愛用していたというものです。
中国の道路に自動車は殆ど走っておらず、自転車が波のように道路を占拠していた感じです。
当時の中国人の月給は5,000円程度。
年収でも6万円程度でした。
一方の日本人は20万円程度でした。
それが今や、日本に観光に来て、爆買いをしていく訳です。
昭和時代では想像もできなかった未来が、現実になっているのです。

その原因は・・・・・、これもまた複利なのです。
中国は、1992年に、それまでの社会主義経済一辺倒から、資本主義経済を取り入れることにしました。
その前年、日本はバブル崩壊に遭っていますから、失われた30年の最初の年でもある訳です。
ここから日本は、成長しないデフレが始まったのです。
逆に中国は、高度経済成長が始まったのです。
中国は平均して、年間10%程度の成長率がありました。
これを国民所得に当て嵌めて、単純に複利計算すると、次のようになります。

1992年    5,000円  200,000円
1993年    5,500円  200,000円
1994年    6,050円  200,000円
1995年    6,655円  200,000円
1996年    7,321円  200,000円
1997年    8,053円  200,000円
1998年    8,858円  200,000円
1999年    9,744円  200,000円
2000年  10,718円  200,000円
2001年  11,790円  200,000円
2002年  12,969円  200,000円
2003年  14,266円  200,000円
2004年  15,693円  200,000円
2005年  17,262円  200,000円
2006年  18,988円  200,000円
2007年  20,887円  200,000円
2008年  22,976円  200,000円
2009年  25,274円  200,000円
2010年  27,801円  200,000円
2011年  30,581円  200,000円
2012年  33,639円  200,000円
2013年  37,003円  200,000円
2014年  40,703円  200,000円
2015年  44,773円  200,000円
2016年  49,250円  200,000円
2017年  54,175円  200,000円
2018年  59,593円  200,000円
2019年  65,552円  200,000円
2020年  72,107円  200,000円
2021年  79,318円  200,000円
2022年  87,250円  200,000円
2023年  95,975円  200,000円

30年経って、日本人の1/40の所得でしかなかったものが、約1/2まで来ているのです。
そしてこのまま日本人の所得が成長せず、中国が成長し続ければいつ追いつかれるか・・・・。

2024年  105,573円  200,000円
2025年  116,130円  200,000円
2026年  127,743円  200,000円
2027年  140,517円  200,000円
2028年  154,569円  200,000円
2029年  170,026円  200,000円
2030年  187,029円  200,000円
2031年  205,732円  200,000円

このように、8年後の2031年には、中国人の平均所得が同じになります。
それ以降は、離される日々が続きます。

2032年  226,305円  200,000円
2033年  248,936円  200,000円
2034年  273,830円  200,000円
2035年  301,213円  200,000円

4年後の2035年には、日本人の1.5倍の所得になります。

2036年  331,334円  200,000円
2037年  364,467円  200,000円
2038年  400,914円  200,000円

更に3年後の2038年には、2倍を超えてきます。
このように追いつかれるまでは時間がかかるのですが、追い抜かれると一気です。
これが複利の効果なんです。

それなら日本も、今から同じ率で成長すれば良いだけだと考える人は多いでしょう。
しかし、成長率「0%」の社会で慣れてきた日本人が、成長率10%なんかを簡単に実現できるでしょうか!?

それでも、物価高の影響で去年あたりから、主要企業の給与のベースアップが始まっています。
ところが、この効果が中小企業までどの程度波及しているかは、現在でも分かりません。
現実に、国民全体の所得が大きく上昇していれば、公務員の給与も大きく上昇します。
公務員の給与が大きく上昇すれば、年金額や生活保護額なども上昇します。
年金額や生活保護額なども上昇すれば、所得税の控除や社会保険料も改正されるはずです。

つまり、物価も給与も上昇しているなら、所得税などの控除額も上昇しなければおかしいのです。
なぜなら控除額は、人が生きていく為に必要な金額からは、税金を取らないという考えに基づくからです。
そういう話が聞こえてこない限り、所得の上昇は一部の企業に止まったままだと言えるのです。

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