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第35回 複利で悪化したバブル崩壊後の日本

私も、学生時代は、バブル崩壊以前でした。
詳しく言えば、大学在学中にバブルが崩壊したのです。

ですから、当時の常識では、受験戦争を勝ち抜くことが必須でした。
最上は、旧帝国大学系国立大学、次いで早慶上智、国公立大学、GMARCH・・・・、みたいな感じでした。
より良い大学に入学することが、より良い企業に就職し、円満な社会人生活を送ることができると考えられていた時代です。
このため、殆どの学生は、大学受験の為だけに勉強していました。
入学後は、サークルやバイトに明け暮れ、卒業できるだけの単位を卒なく取るだけの学生生活を満喫していたものでした。

就職も、一流企業に入れれば勝ち組です。
後は、年功序列で出世し、給与も自動的に上がるからです。
必要なのは一にも二にも人間関係、能力などは二の次という時代でした。
つまり日本人は、大学受験まで勉強するが、大学生になるやいなや、勉強することを止めていたのです。

バブル時代以前は、これでも問題はありませんでした。
日本は発展途上国であり、欧米諸国に追いつけ、追い越せと、社会全体が学ぶこと、技術を身に着けることに積極的だったからです。
ところがバブル崩壊以降は、話が変わります。

当時の日本は、米国に次いでGDP世界2位の先進国にまで成長していたのです。
日本は、追いつけ、追い越せと他国を目指す立場から、目指される立場へと変わっていたのです。
そんな中で、米国などからの圧力もあり、日本社会はその形態を成長から分配へと大きく舵を切りました。
「24時間戦えますか!?」と言っていた時代から、「ゆとり」時代になったのです。

ところが、このことは、成長しようとしない日本の大人たちにとっては、大きな落とし穴となっていることに気づきませんでした。
なぜなら、社会が成長に積極的な時代であれば、個人も引っ張られる形で成長します。
ところが、社会が成長から分配に転換すると、成長しない個人は、そのまま成長しないで良いことに何ら疑問を持ちませんでした。

今も覚えているのは、アジア危機の時です。
タイのバーツの暴落から端を発するのですが、実際は日本のバブル崩壊により、日本がアジア諸国から円を引き上げたことが原因です。
これに巻き込まれた韓国は、国を挙げてインターネットに投資すると宣言しました。
この瞬間、日本の凋落を確信しました。

なぜなら、私は旧財閥系の情報システム部に所属していて、創世記のインターネットに携わっていたからです。
これからはインターネットの時代が来ると確信していたのですが、日本の国や企業では、まだまだ理解が足りず、積極的というよりも、明確に消極的だったからです。
この流れは、今現在でも続いています。

2000年にIT革命と言われて、IT関連企業の株が買われて、ITバブルが発生しました。
ここで日本企業も、IT関連への投資に積極的になっていれば良かったのですが、現実的にはそうなりませんでした。
なぜなら、日本の雇用制度は、年功序列だからです。

サイクルのところで例に挙げましたが、インターネットはコンドラチェフサイクルに相当するほどの変革です。
つまり、50年に1度の大変革と言えるものです。
電話が当たり前だった年配の人たちにとっては、インターネットは理解の範疇を超えていました。
現在なら、誰もがその有用性を理解できるでしょうが、当時から理解できる人は少数派でした。
だから、年配の経営者や管理職は、保身に走った訳です。
- 自分たちが退職した後に導入すれば良いと・・・・ -

いやいや見送っていない、ちゃんと世間の動向に合わせて導入したと言う人もいるでしょう。
しかし、導入しても、世界の10の動きに対して、同じ10の動きをしたと言い切れるでしょうか!?
7とか、8でもダメなんです。
それは、社会が複利で回っているからです。

毎年世界の成長を10と仮定して、それをちょっと手を抜いて9だけ成長させた。
1くらい無視できる差異だろと思うかもしれません。
ところが、複利でこれが積み上がると、大きな差になって返ってくるのは、既に学んでいただいたかと思います。
日本では、これが30年間も続いたわけです。
1年、   1年は大したことではない差であっても、30年も積み重なれば大差となる訳です。
これを「ゆでガエルの法則」と言ったりするのです。

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