第38回 「損切り」をするべきか、しないべきか

よく投資家の間では、「損切り」をするべきか、しないべきか、が議論の的になります。
結論から言えば、「投資期間により異なる」なのですが、この問題をこれまで説明してきた「risk management」と「複利効果」を交えて説明したいと思います。

まず、最初に「損切り」の定義です。
買値から下がって、損して売ったものは全て損切りとしてしまえば、議論の余地は無くなります。
かなり乱暴なものになることから、正確に定義したいと思います。

そこでネットで検索して最初に出てきた定義を書きます。
損切りとは、投資家が損失を抱えている状態で保有している株式等を売却して損失を確定させることをいいます。
ロスカット、ストップロスとも呼ばれます。

あらら・・・・、かなり乱暴な書き方がされていますね。
実は、他にも検索結果を見たのですが、全て似たり寄ったりの書き方でした。
つまり「損切り」とは、損して売ること全てということになるみたいです。
それなら、「損切り」は絶対にしなければならないですね。
倒産したり、上場廃止になったりして、限りなく無価値になっていくのに、その時点でも売らないという選択肢はありませんから。

ただ、最初の「損切り」をするべきか、しないべきか、という議論の際の「損切り」の定義は、これではないことは分っていただけると思います。
当然、先の定義の前提なら、議論にならないからです。
そこで今度は逆に、議論の中身からアプローチしてみましょう。

「損切り」肯定派は、株価が下がって「損切り」しないと、金銭的損失という「risk」が拡大し、ゆくゆくは新しい買いが出来ないという機会的損失という「risk」に繋がるから「損切り」はしなければならないということでしょう。
反対に「損切り」反対派は、株価が下がっても、そもそも業績そのものには影響せず関係ないのだから、売るよりも、むしろ買い増す方を考えるべきだということでしょう。
つまり、この2つの言い方から掴み取れるのは、乗っている波の違いだと言うことです。

株価は、経済と同様にサイクルがあります。
一方的に騰がる、一方的に下がるという動きには、絶対になりません。
必ず上下運動を繰り返します。

そのサイクルですが、よくよく見ると、更に小さいサイクルで構成されています。
また、サイクルを広い視点で見ると、大きなサイクルの一つの要素を構成していることに気づきます。
つまり、どのサイクルに乗っているかによって、「損切り」するべきかどうかが異なってくる訳です。

自分の投資法で乗ると決めたサイクルが、天井を打って下落してくれば損切りということになります。
なぜなら、既に自分の投資法ではその銘柄の動きは破綻しているため、どこまで下がるか分からないという「high-risk」というより「danger」の状況になっています。
延々と持ち続けると、損失が拡大するだけでなく、資金拘束を受けて次の投資が出来なくなる。
結果、見てるだけの無意味に時間だけが流れて行ってしまう・・・・。
だから絶対に、「損切り」は必要だとなる訳です。

逆に、自分の乗ると決めたサイクルはまだまだ上昇しているが、目先の株価は下げているだけとなれば、「損切り」なんかする必要は無いということになります。
なぜなら、自分の投資法ではまだまだ上昇が見込めるため、下げれば下げるだけ買い増しチャンスが到来することになるからです。
下手に、一度売って、安値で買い直そうと考えても、そう簡単に出来るものでは無く、失敗する「risk」を考えたら、持ち続けた方が良いとなります。
結果、下げても買い増すだけということになります。

そして、この考え方は、波によって異なるのですから、長期投資に代表される長い波に乗ろうと考えれば考えるほど、「損切り」をするべき事象が発生する「risk」は少なくなります。
また反対に、短期投資に代表される短い波に乗ろうと考えれば考えるほど、「損切り」をするべき事象が発生する「risk」は多くなります。
ですから、「損切り」が必要と言う投資家には短期投資家が多く、「損切り」は不要と言う投資家には長期投資家が多くなるわけです。

特に短期投資家になると、売買を繰り返すことにより複利効果を生み出すのですから、売買できない状態が続くようでは、効果は「0」となってしまいます。
一方、長期投資では、期間が経過すればするほど株価は大きく上昇しているはずです。
買値が100円でも、10年経って1,000円になっていれば、1%の値動きでも10円になり、投資額から考えれば10%も動くと言う状況になっています。
目先に踊らされて、中途半端に切るよりは、持ち続けた方が良いということになります。

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