第31回 投資サイクル

投資を行うと、サイクルという言葉を良く耳にします。
サイクルとは、状態が続けて変化し、再び最初の状態に戻ることを言います。

人の行動は、適度に止められることはなく、必ず行き過ぎということが発生してしまいます。
なぜなら、どんな人も、余裕を持ちたいと考えるからです。
10時ちょうどの電車に乗りたければ、9時55分には駅に着きたいと考えるでしょう。
予算2万円で服を買いに行こうと思えば、財布には2万5千円程度は入れているでしょう。
投資で100万円の利益を得たいと考えている人は、利益が100万円ちょうどになったところで売らず、100万円を超えたところで売るでしょう。
つまり、この余裕が欲しいと考える人の心が、行き過ぎを生むわけです。

例えば、買い過ぎたと考えれば、次の買い物では買う量を減らすでしょう。
これが毎日の食材等の小さい買い物なら余り問題が無いのですが、数年に1回しか売買しない大きな物だったら、経済に影響を及ぼします。

テレビがブラウン管から液晶などの薄型へと変わった時のことを思い出して下さい。
多くの人たちが挙って薄型テレビを買い求めました。
この結果、薄型テレビの価格は下落し、1インチ1万円と言われ、50インチ50万円だったものが、数量効果であっという間に50インチ20万円程度まで下落しました。

ところが、多くの国民が薄型テレビを手に入れて満足してしまうと、一気に薄型テレビは売れなくなりました。
メーカー側は過剰在庫を抱えることになり、在庫放出の必要性が、50インチテレビが5万円を切る値段まで暴落しました。
すると、さすがに安すぎると考える人たちが出てきて、2台目、3台目のテレビとして5万円の50インチテレビを買ったのです。
その結果、メーカーの過剰在庫は一掃することが出来ました。
過剰在庫が無くなると、50インチテレビの価格は10万円程度まで上昇していきました。

過剰在庫になるほど薄型テレビを作ったことは行き過ぎです。
5万円まで薄型テレビの価格が暴落したのも行き過ぎです。
このような人の行き過ぎた行為が原因で、サイクルが生み出される訳です。

そのサイクルですが、景気循環には4つのサイクルがあると言われています。

キチンサイクル
キチンサイクルとは、企業の過剰在庫の解消を示すサイクルのことで、1~2年程度が周期であるとされているものです。

例えば、スーパーやデパートなどの小売店について考えてみましょう。
好景気期でよく売れるときには、小売店は大量に商品を仕入れて、品切れを起こさないように在庫を確保します。
売り切れによる機会損失という『risk』を回避するためです。

ところが、景気後退期に入り、売れ行きが芳しくなくなると、新たな仕入れを減らすことで過剰となっている在庫を適正に戻そうとします。
小売店が仕入れを減らすと、商品の製造元であるメーカーの出荷量も減り、売上げ自体も減少してしまいます。
メーカーの売上げが減少すると、労働者の賃金の低下を招き、国民の購買意欲が逓減してしまいます。
つまり、経済の勢いが若干衰えるということです。
このサイクルを、キチンサイクルと呼びます。

ジュグラーサイクル
ジュグラーサイクルとは、過剰な設備投資の解消を示すサイクルのことで、およそ10年程度が周期であるとされているものです。
企業の設備投資の循環と重なるので、設備循環とも呼ばれています。
10年は設備の償却期間と考えられており、ジュグラーサイクルで設備は1回転していると考えられています。

クズネッツサイクル
クズネッツサイクルとは、過剰な建設投資の解消を示すサイクルのことで、およそ20年程度が周期であるとされているものです。
建設物の需要が約20年で一周することをクズネッツが発見したことからこのように定義されています。
また、20年というのは生まれたての子供が親になるような年齢になる年月であり、人口の変動も原因であると言われています。
ただ最近は、建物の寿命も伸び、また子供が親になる適齢期も20代から30代へと高齢化していることから、クズネッツサイクルが有効かどうか疑わしい時期になっています。

コンドラチェフサイクル
コンドラチェフサイクルとは、技術革新を示すサイクルのことで、およそ50年程度が周期であるとされているものです。
技術革新に該当するのは、自動車や航空機、医療機器の発明など人々の生活に多大な影響を及ぼすものが挙げられます。
直近では、1989年に商用利用が開始されたインターネットが、この技術革新に相当するでしょう。

このように色々な投資サイクルがあります。
が、生活習慣の変化からクズネッツサイクルの存在には疑義が生じ、期間が長すぎることからコンドラチェフサイクルは余り役に立たないでしょう。
結果として、キチンサイクルとジュグラーサイクルが、現実的に投資に役立つと思います。

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