やすらぎ寄席〜10月20日〜

 最近、「やすらぎ寄席」という地域寄席に何度か足を運んでいる。
立川談志師匠の直弟子の師匠方がじっくりと聴かせてくれる一門会。長年の立川談志師匠ファンの僕がこれまで足を運んでいなかったのは申し訳ないぐらいの、いい会だ。

 10月20日の会は、談幸師匠の「宿屋の富」、病気から復帰をしたばかりだという、ぜん馬師匠の「鹿政談」、そして雲水師匠の「らくだ」だった。
「宿屋の富」は、談幸師匠らしい程のいいテンポ感で軽妙に語っていて、噺本来の持つ面白さが際立っているような内容だった。全体的に淡々とした語り口なだけに、富くじの当選番号を読み上げて照らし合わせる場面の談幸師匠の工夫が印象的で、今でも思い出して笑いそうになる。自分もそんな境遇に居合わせたら、絶対にそういう行動をとるだろうと思わせる具合の共感のギャグが秀逸だと思う。前回は、たしか「今戸の狐」を演られていたと思うが、談幸師匠の状況説明の語りのさりげなさは、カッコよくて自然と頭に細かい絵が浮かんでくる。年々、談幸師匠の語りが好きになって行くのはそのためだろうか。過度な演出をしすぎない語りのさらりとした感じが、とても心地よい。

 その後の、ぜん馬師匠。7ヶ月ぶりの高座復帰ということで決して体調も万全ではなかったと思うが、長講の「鹿政談」で意表をつかれた。
声こそかすれてはいたものの気迫と流れるような語りっぷりは以前のまま。数カ月ぶりの復帰の高座に「鹿政談」というのも、今後の高座への意欲を感じられて落語ファンとしては嬉しい。体調に十分気をつけて、まだまだ頑張って欲しい。蛇足だが、「鹿政談」の独特な地域性や日本人らしさみたいなものに落語本来の面白さの一つを感じられて、この噺が今でも残っている所以じゃないかと思ったりする。

 そして、主任の雲水師匠が「らくだ」をじっくりと聴かせて締めてくれた。マクラで笑いとともに、さらりと時代背景を説明し、本編では雲水師匠ならではの凄みや人間の可笑しさが堪能出来る内容だった。焦点を当てる人物の背景をどう考えるかで噺がどんどん面白くなっていくという、「らくだ」という噺の奥深さを感じられるもので、重厚感のあるストーリーから一気に開放される落ちもいい。この噺も落語らしい噺の代表格で実によく出来た噺だと思う。

 この会は、立川流の師匠方のネタの豊富さを感じる会だ。お寺の中での落語会という事で、「落語」の本来の姿を感じながら、ゆったりと普段聴けないような噺を聴けるのも快適。また行こう!!

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