〜2023年初席のあれこれ〜

 人の賑わう中で寄席を見るのが疲れる歳になって来たので、初席は避けようと思っていたが、やはり、行かなければ行かないで落ち着かない。
年末に運良く、1月2日の国立演芸場のチケットが取れたので行くことに。

 獅子舞、たい平師匠、橘之助さん、文治師匠、馬風師匠、雲助師匠、楽輔師匠、米助師匠、ナイツ、小遊三師匠という超豪華なラインナップ。人気者のたい平師匠をトップバッターに使えちゃうところに初席らしさを感じる。文治師匠の安定の華やかさなど、書きたい点はいくつもあるが、一番印象に残ったのは、やはり大御所の鈴々舎馬風師匠だ。座布団ではなく、椅子に座っての漫談だったが、凄みと迫力のある口調はなに一つ衰えていない。
むしろ、年々研ぎ澄まされた感すらある。時事ネタに毒っけを織り混ぜつつ、テンポ良くお客さんを乗せていく漫談力の高さに終始感動。昔の話をしても、決してお客さんを飽きさせないし、白けさせない、そして絶妙な頃合いで終わるという、いい漫談だった。これまでも、何度も寄席で観てきたが、今回も、この漫談を生で観られた事を自慢にして行こう。

 しばらく間をおいて、客足も落ち着いたろうと、正月二ノ席の池袋演芸場へ。相変わらずの豪華な出演者で、席が2列目しか空いていなかったが、それが良かった。目当てで行った三遊亭歌る多師匠の「松づくし」を、遮るもののない状態でしっかりと観られた。何度か観ているが、こんなに至近距離で観られるのは初めて、相変わらず「見事!」の一言。口上やお客さんいじりも交えつつ、どんどん客席の空気を温めていく様は爽快だった。初席には欠かせない、お正月には観ておくべき風物詩の一つだと思う。
 二ノ席の池袋演芸場で、特に印象に残った方は2人。
まずは、柳家喬太郎師匠。正月興行の短い持ち時間をどう使うかも真打ちの力量の一つだが、喬太郎師匠は、見事な構成力を見せてくれていた。その構成自体が綺麗な新作落語のように出来上がっていた。やはり凄い才能の持ち主だ。

 そして、もう一人は、その日の主任の林家正蔵師匠。バラエティに富んだ人気者の出演者たちをまとめるように、「しじみ売り」でしっかりと締めていた。決して人情噺だけの噺にはせず、随所に笑いの要素を入れて、ほのぼのとした雰囲気の噺にしていた。(上方版の方に近いような気がする?)元々の噺のテイストから、重い感じになりがちなので、笑いの要素が多く入った構成には好感が持てた。とはいえ、こういうじっくりと聴かせる落語が得意な正蔵師匠。すべての登場人物の人物像が際立っていて、その場の画や人物の背景が想像しやすい、実にいい「しじみ売り」だった。落ちのセリフの工夫も良く、こちらも、寄席に行って、生で聞きに行った甲斐のある落語だった。

 昔から正蔵師匠は、観に行くたびに、どこか必ず成長の跡や工夫の跡が見える方で、そういうところが好きでよく観に行っていた。おそらく、常に落語の事を考え、様々な角度で落語を見直しているからなんだろう。今後も、正蔵師匠を追って寄席に観に行ってみよう。また、観に行くたびに期待に応えてくれるはずだ。



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